(1)始まりの旋律
動物たちと会話できる世界。
ここ
「アニ人界。」
と呼ばれるところだ。
今この世界では、あるものが失われてきている。
それを取り戻すために、幼い四女の子が、今立ち上がる時が来た。
その女の子は、ある学校に通い、失われてきているものを取り戻すために、いろいろな動物たちと話し、関係を深めて、失われてきているものを、取り戻そうと頑張っている。………
ここは、動物たちや、人間たちが、会話できる世界。
「アニ人界。」と呼ばれるところだ。
ただ、会話できる人は、限られている。
名前に、木や川などの自然に関する漢字が入っていること。そして血継ぐもの。この二つの条件をみたすものしか会話することはできない。
そして毎年の試験と選考を経て、『果実の詩』の儀式を執り行う者が選ばれる。
だが最近、一部の人々が儀式を廃止しようとし、動物たちの未来が脅かされている。
今は、失われかけている。
この国のセカナ市にいるある女の子に託された。
そこのセカナ市は、一番、クマと仲が良いと言われている市だ。
毎日のように、クマは、必ず、人を見かけたら、礼をし、おなかをたたき、力を見せつけて、
「えさをください。
お願いします。」
と言っている。
この習慣が広まったことで、クマは市の人気者となり、ついにはエサを与えても良いという法律ができるほどの人気になった。
たちまち、クマは市の人気者になり、人々は彼らにエサを与えることを許された。
しかし、待ちきれないクマたちは
『くれくれ!』
と匂いをかぎながら押し寄せ、住民たちを少し困らせていた。
それでも、クマのいる生活は街の誇りとなっていた。
そして、その中で、女の子は、すくすくと育ち、四歳になった。
そこで、ある学校に入ることが決まった。
名前は、
「エグレート学院。」
だ。
この学校は、動物の声が聴ける子どもたちが、四年間通う学校とされている。
基本的に、環境問題や、動物との接し方など理科系を多く学ぶところだ。
この学院の一年が終わるごとに、森に行くための、試験と二日間の訓練を受ける。
それに合格したたった一人だけ森に行ける。
そして、試験が終わった後、一番声を聴くのが、難しいとされている動物の、
「いるか。」
の声が聞こえたら、合格となる。
そしていよいよこの市に朝が訪れて来た。
「コケッ―こっこー。(朝だよ!)。」
「もうカナミだったら、うるさいんだから毎朝。」
「コケ!コケ!(なんだよ!住民たちみんなに朝を知らせる仕事なんだけど!)。」
「ごめん、ごめんカナミ。」
「コケ‼(もう美奈だったらもう!それより、エサくれ、エサくれくれ!)。」
「はいはい分かった、分かった。」
「どうぞ。」
いきおいよく食べる音がし、朝ご飯をテーブルへ運んでいたお母さんは、
あぶなくお皿を落とすところだった。
「じゃあ美奈ごはんだよ!」
「は~い。」
「それでは、いただきま~す。」
女の子が、おいしそうに、目の前にあるパンケーキと、目玉焼きを食べていると、
「そうそう美奈、今日は、入学式だよ。」
「だから学校に行く準備をママが作ったリストを元にしましょう。」
「は~いママ。」
このお話の、主人公は、先ほど出てきた四歳児の女の子
「端森 美奈。」
だ。
必要なものリスト
「一、ふでばこ(筆記用具) 一つ
二、マントか、じゅうたん(空を飛ぶ力と、風に負けない力があるもの)一枚
三、動物なんでも辞典一冊
四、実験と観察の仕方の本 二冊
五、羽の鍵二つ付き無限ノート 三冊
六、動物用お菓子 三袋
七、子犬か、子猫か、小鳥のどれか 一匹
(理由は、動物と仲を深める練習のため。)
八、ペットグッズ(首輪、エサ入れ、かご、リード、ふえ、おもちゃ。)
「よし、できた。」
わんわん!と何か鳴き声が聞こえてきた。
「ワンちゃんは、かごに入っているかな?」
かごにいる犬は、おとなしくなって、丸くなって寝ている。
「よしよしおとなしくしていてね。」
下で、お母さんが、美奈が学校の寮に泊まるため、荷造りをしていた。そして階段の向こう側にいる美奈に向かって
「美奈!わんちゃんには、首輪と、リードをしておいて、トイレに連れて行って!」
と言った。
「は~いママ」
「それでは出発だ!」
そして、車にカート二個と、リュックを詰め込み、車が、勢いよく走り出した。
車の中から見える景色は、紅葉がきれいな山だ。紅葉の木の下で、シートを敷いて、おいしそうなお弁当を食べている人がいる。
それを美奈が眺めていると、
なにやら素早いものが飛んできた。
「ねぇママあれなに?」
「うん?あれはね、飛行機と、妖精だよ。」
「そうなんだ。」
と話していると、ついに学校が見えてきた。
周りは山に囲まれている。
「よし到着した。」
美奈は重たいカートを取り出して、リュックをせおい、車から降りた。
今目の前にある学校は山に囲まれており、敷地内には広大な自然が広がっている。
まわりには、
「ピチチチ…チュンチュン!ピチチチ…チュンチュン!」
と小鳥が鳴いている。
美奈は、
「なんか学校って楽しそう。」
とつぶやいた。
「美奈!最初に、検査室に行くみたい。頑張ってきてね。」
「いってくるね!ママまた一年後ね。」
「うん!いってらっしゃい。」
大きな車が、山の奥に消えていってしまった。
美奈はワクワクしながらも、家族と離れることに少し寂しさを感じていた。
「よし!」
「でも頑張るぞ!」
と張り切って、美奈は、大きく息を吸い込むと、力強く小さな腕をぐるんぐるんと回した。
まるで自分自身を奮い立たせるように、何度も何度も勢いよく。その動きは、寂しさに押しつぶされそうな心に、勇気を呼び起こすリズムだった。
美奈は、学校の庭を探索してみることにした。
目の前には、大きな、広場があり、噴水がある。不思議なことに、噴水の水しぶきの上に、大きな金魚が飛び跳ねていて、メガホンでこっちに向かって、何やら言っている。
「検査室に一年生は、行かなければなりません。いかないと門番が校舎に入らせてくれません。あと、この学校の生徒ですという、目印になる、カードがもらえます。学校はとても楽しいですよ!それでは検査室は、(準備室)という名前です。いってらっしゃい。」
美奈は、
検査室なのに、「準備室。」
と呼ばれる、場所を探した。そして、迷いながらやっと見つけた。するとなにやら、へんなにょろにょろしたものがいた。よくよく見ると、なんとこのにょろにょろした蛇が、この検査場の係員だった。
そして蛇が、会場にいる全員の一年生に話しかけ始めた。
「みなさん本校に、ご入学おめでとうございます。先生たちは、ほとんど動物が、先生です。声が聞こえない、動物の名前があったら、係員に言ってください。」
「そして、入学準備では、個人情報の収集、書類の確認、持ち物の検査、そして寮決めを行います。」
「これを行ったら、自分の寮に行き、寝る準備をして、寝ましょう。」
「では一つ目の個人情報の収集です。」
「あなたの名前は?」
「端森美奈です。」
「ありがとうございます。あなたの、指紋を採取させてください。」
「はいわかりました。」
「指を見せますね。」
「新入生の一年生の美奈様の、個人情報が、分かりました。」
美奈は、
「え!」
「指紋と名前だけで、誕生日、年齢が分かるなんて、びっくり!」
と心の中で、おどろいた。
「次の準備へ進みましょう。」
「よし次の検査は、
「書、類、の、確、認、?」
「なにをするんだろう?」
「まっいっか、行ってみようかな?」
「今から第二準備を始めます。」
「それでは、書類の確認をします。」
「お父さんとお母さんが準備した書類をもとに、みなさんの正式な入学書類を作成しました。」
「これを、読みましょう。」
すると会場がザワザワしだした。
「これを全部読め!ってこと?」
「よめないよ!」
とみんな口々に叫んでいる。
「ご心配はありません。
あなたのペットが、読んでくれます。」
「ごらんのとおり。」
「えっとこの学校に入るのは、確定で、ペットは、犬で、…。」
「ほんとだ!読んでくれている。たすかる!ありがとう。かわいいわんちゃん。」
「どういだしまして、僕実は、オスなんだ。」
「えっそうなの?メスだと思っていたよ!」
「うんよく、ブリーダーさんによく間違われていたんだ。」
「そうなんだ!次から間違えないようにするね。」
「これでは、次の検査室に行ってください。」
「次は、持ち物の検査です。
マント、じゅうたんの検査、ペットの健康診断を行います。
まず、マント、じゅうたんの検査です。」
「それではみなさん目の前の机の上に広げてください。」
「広げ終わったら、ペットをその上にのせて、何か聞こえる?と聞いてください。」
「何か聞こえる?」
「聞こえる!」
「ほんとだ!じゅうたんが、元気
です。と言っているよ。」
「ありがとうわんちゃん。」
「続いてペットの健康診断です。ペットを、目の前にあるかごの中に入れてください。
入れたら、席から離れてください。」
何やらペットが、わんわんと吠え出し、しっぽを振っている。
「うっうわ~なんか元気になってる。」
とみんな叫ぶのであった。
「これは、回復ボックスです。」
「次の検査へ行きましょう。」
「次は重要です。寮を決めます。寮は、エクぺラス、ミスィニャングート、シンフォスターがあります。自分のペットによって、寮が決まります。それは、いすにすわって、ペットを、ひざにのせて、じっとしていてくださいね。」
「ペットが自ら選んだ寮こそが、あなたの運命の寮となります。」
「さっそくはじめてください。」
美奈や、たくさんの人が始めると、
美奈のペットの犬は、なんと
「君は、シンフォスター‼に行くんだ!
どんなところかというと、たくさんの犬と、話ができて、いつも清潔な、部屋があるところなんだよ!あととてつもなく広いドッグランがあるんだ!楽しみにしてて!」
と学校中にきこえるぐらいの大声で叫びながら、大ジャンプをし、一回転をした。
あまりにもでかすぎたので、みんなぼうぜんとして美奈の方を向いている。
ほかのペットはパニック状態で、小鳥は、飼い主の周りを飛びながら、
「ピー!ピー!(なんだ?なんだ?」
と口々に鳴いている。
そして、やっとみんなの寮決めが終わり、
カードが配られた。
「これは、寮内にあるお店で、買い物をするための、お金代わりになります。なので大事に使ってください。」
「それと学校からの注意があります。
寮に戻るときは、先生に言ってから戻ってください。それと、夜一〇時までに絶対に一年生は寝てください。理由は、怖い妖精が、寝てない小さい子を襲ってしまうからです。」
美奈は、心の中でこう思った。
「絶対に、夜八時には寝ようかな?」
「襲われたくないなぁ……。」
と思った。
「それではいよいよ学校の校舎に入ってもらいます。」
蛇の係員がすっと前に進み、何もない壁へと向かって、静かに囁いた。
「閉じされていたドアよ、今開く時だ!」
「合言葉を叫けびます。」
「閉じされているドアにいる精霊よ!輝け、未来の学校へ!」
すると、空気が波打つように揺らぎ、ゆっくりと巨大な校舎と寮が姿を現した――まるで長い眠りから目覚めたかのように。
「では、荷物をもって、立って、二列に並んでください。」
「それでは、ゆっくりと学校の中を眺めながら、楽しんでください。」
美奈が、小さいドアをくぐり抜けると、広大な自然が広がっていた。
山があり、森が、輝いていて、きれいな音楽が鳴っていて、小鳥が嬉しそうに歌っている。
そして目の前には、大きな、銅像があった。
「この銅像は、昔、この学校、森を守った。」
「ヴェイラ・ルモス。」
「という人の銅像です。」
「へぇ~なるほど!」
とみんなは、うなずきながらいった。
「そうそうまだ言っていなかったな。」
「実は最初みなさんが入った校門があったところは、森の精霊によって作られた。偽物のです。」
『なんだって!』
生徒たちは驚きの声を上げ、ざわざわと動揺した。
そして一人の男の子が質問した。
「すみません。」
「噴水は偽物なんですか?偽物だったらあの金魚は、にせものですよね?」
「噴水は、本物です。ご安心ください。」
「すみません理由を言ってください。」
「そうだ!そうだ!」
「言ってください!」
「どうしてくれるんだ!」
と口々に言いだした。
「しっ!」
「静かにしてください。他の人が勉強中ですよ!」
「ごめんなさい。」
「よしそれでは、今から理由を説明します。
理由は、この学校に不正侵入がないようにするためです。」
「そうなんだ!」
「それでは今から校舎の中へ入ります。」
「足元に気を付けてください。」
「それでは、一年生のおな~り‼」
と蛇が大声で叫んだ。
「「ワァ----‼‼」」
と校舎の中が盛り上がった。
そして、美奈が天井を見上げると、
「ピーピー!」
「ピーピー!」
とうるさい声で何かがけんかしている。
それは、先生が飼っている、小鳥たちだそうだ。
いつものことらしい。
けれど、それをみんな眺めて、苦笑いしている。小鳥の中には、けんかしたくなくて、うずまいている小鳥がいる。むりやり仲間に入れ!とけんかしている小鳥に巻き込まれるのであった。
そしていよいよパーティーが始まった。
目の前には、おいしそうなごちそうばっかり並んでいて、チキンや、パン、サラダ、ケーキなどがあった。
みんな夢中で、食べているところで、先生からお知らせがあった。
「みなさん、一年生は、ご入学おめでとうございます。」
「先生からお知らせがあります。お知らせ内容は、なんと一年生一人一人に、百五十万円の超超超高級ケーキが配られることになりました。」
………し~ん………
「やった!一年生には、ケーキが配られるんだって。うれしい!」
「なんだよ。」
「一年生だけかい。」
「先生他の学年にはなんかないのかよ!」
「もちろんあります。」
「やった!なんだろう?」
「内容は、ペットに、回復の魔法の仕方を教えます。」
「しかも死も、傷もなんでもすぐ一瞬で治るのです。」
「すごくいい!」
「うれしい。」
「ありがとうございます。」
と上級生が言った。
「それではパーティーの続きをするぞ!」
「「おぉー‼」」
たくさん食べる音が一気にし、話し声が聞こえた。
話している人の中に、こんな話をしている人がいた。
「ねぇねぇなんかあそこテーブル傾いてない?」
一人の男の子がパンをもぐもぐと食べながらいった。そして隣にすわっていた、男の子が、うなずきながら、
「うん傾いてるね。」
と言い返した。
「鳥に直させる?」
「う~んその方がいいかも!」
「よし!」
「俺の鳥さんいってこい!」
「あそこのテーブルを直して!」
「はいご主人様分かりました。今すぐ直してきます。」
「よし息を吸います。」
「スぅ。」
「よし!机の傾きよ!なおね‼」
と大きな声が聞こえてきた。
食事会場にいたみんなはおどろいて、パンなどを落としてしまった。
「ごめんなさい机がかたむいていたので、なおしていました。」
すると先生から返事が返ってきた。
「このように鳥を操るのは、卒業した人でもできないんですよ。」
「実際にやった人でも、もっと傾いたり、斜めになったり、鳥が言うことを聞かなくて、机がこわれたりするんですよ。」
「今から賞状を渡します。」
「一年フゴカル・フォルート
あなたは、とっさの判断で、机を直しました。
あなたの素晴らしいペットとの協力が心に響きました。
これにより賞状いたします。
そして、校長から贈り物があるそうです。」
それを聞いて、愛棒の小鳥が、嬉しそうに、
「ピー!(うれしいありがとう!)(役に立ててうれしい!)」
とぐるぐる周りをまわりながらいった。
一気に拍手がおこった。
「フゴカル君、君には驚いた。
これにより、私からは、なんでもこなせる小鳥を一
羽プレゼントいたします。」
「よかったね!フゴカル君!」
「ありがとう!」
と周りから歓声の声が聞こえた。
そして楽しいパーティーは、まもなく終わろうとしていた。
「う~食べ過ぎた。」
「おなかいっぱい。」
「楽しかったね!」
という声があちこちから聞こえてくる。
そして、校長先生が叫んだ。
「もう諸君たち寝る時間だ!」
「急いで寝室へ行く準備をします。」
「それではおやすみなさい。」
そして一年生の中から、寮への行き方を教えてもらってないと、不満の声が上がった。
そして、校長先生から、止められた。
「今からいうことは、一年生のみなさんはよく聞いていてください。」
「それでは、向かい合わせになって、立って、手を胸に当てて、今からいう呪文を先生の後に続いて、唱えながら、礼をしてください。」
一斉に準備を始めた。
「風の旋律に抱かれて、森の命が空へ舞い上がる。花の輝きが夜空を彩り、寮への道を開きたまえ‼」
「みなさんも急いで叫んでください。」
「せ~の‼」
「風の旋律に抱かれて、森の命が空へ舞い上がる。花の輝きが夜空を彩り、寮への道を開きたまえ‼」
みんなが叫び終えた後、目の前に鳥が、並んで階段へと変身した。
そして一匹の鳥が、礼をして、
「どうぞわたってください。」
と言っている。
みんなが、それに足を踏み入れると、いつのまにか、寮へとテレポートしていた。
部屋は、四人部屋だった。
部屋の中を見ると、とても広くて、甲子園野球の広四分の一の広さがあった。
一年生は初めてだったので驚いてしまった。
実は、この学校、妖精がいる間だけ魔法が使える仕組みになっている。
だから、この寝室へ行く呪文は、今みたいに校長先生が先に叫ばないと使えない。
なぜなら妖精は、校長先生みたいな人しか操れないからだ。
それと、高度な呪文だからだ。
そして、この高度な呪文は、目上の人から唱えるのがルールとなっている。
理由は、先に目上の人じゃない人が、先に唱えると、妖精が怒ってしまうからだ。
そして美奈たちは、寝る準備をし、トイレに行って、眠った。
こうして、美奈たちの長い一日が終わり、静かな夜が訪れた。
小鳥たちの囁きと妖精の微かな光に包まれながら、眠りへと落ちていった――新たな冒険が始まることを知らずに。
そして生徒が寝ている間は、先生たちは、見回りをしていたのであった。
子どもたちがあんしんして眠れるようにと。
そして、妖精たちは、それぞれのかごへと移動した。
それに続きペットたちは、大きな枕の上で大きなあくびを一つし眠った。
暗い夜の中、いびき、さえずり、鳴き声だけが、響いてくる。
動物たちと、仲が良い女の子が、楽しそうにしていましたか?
自分は、特に、動物と、話ができたらなぁと思ったことがあり、これをきっかけにつくりました。
次回も見てもらえると嬉しいです!