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ブラコンお兄ちゃん

作者: yukko

4月生まれの兄と3月生まれの弟。

学年は1年上の兄、ほぼ2歳差の兄弟が居ましたとさ。


弟が生まれた時から兄の弟への愛が深かった。

それは、弟が母と共に産院を退院してから始まったとさ。

弟を見たくて兄はベビーベッドを必死になって覗き込もうとする。


「見れない!」


すると、兄はベビーベッドの前に置かれているオムツ入れに乗って見るという方法を思いついたのだ。

乗って見ると、なんと弟が見られた!

それから、毎日、オムツ入れに乗っては見るを何度も繰り返し……

なかなかオムツ入れから降りない。


⦅そのベビーベッド、ちょっと前まで寝てたのよねぇ……お兄ちゃんが!⦆


畳に布団を敷いて弟を寝かせると、直ぐにやって来たお兄ちゃんは弟の隣に寝て……優しく弟の手を繋ぎ嬉しそうにしてる……。

こんな風に毎日、二人並んでお昼寝するのが日常になりましたとさ。



そして、大きくなった兄と弟。

食事前、兄はお手伝いする時に必ず「たーちゃんのお茶碗、僕がする!」と自分のお茶碗よりも先に弟のお茶碗や食器を弟の席に置く。⦅うんうん。お兄ちゃんだもんねぇ。⦆

そして、弟が欲しがった物は自分が食べていなくても、「たーちゃん、これ欲しいの?」と聞き、弟が「うん。唐揚げ好き!」と言えば、直ぐに全て弟にあげてしまう。⦅お兄ちゃん、おかず無くなったよぉ~。どうするのよ。⦆




そして、事件が起きたとさ。

ある日、幼稚園のお友達と遊びに行った弟。

帰って来た時、お兄ちゃんも家に居た。

玄関のインターホンが鳴って、弟の友達がやって来た。


「どうぞ~。」

「おばちゃん、たーちゃん帰ってる?」

「うん。居るよ。」

「たーちゃんに話があるの。」

「そう? 入る?」

「うん。」

「どうぞ。」


リビングで寝そべっていた弟の周りに4人のお友達。

そして……


「なんで、帰ったんだよ。」

「そうだ! 何も言わずに帰ったらいけないんだぞ!」

「なんで帰ったの? 急に!」

「言えよ。なんでか!」


弟は泣き出した。⦅あ~ぁ、泣いちゃったか。帰る理由話さずに帰って来たのは良くないよね。⦆

……と、その時であった。

お兄ちゃんが弟を庇うように泣いている弟の前に立ち、両手を広げて言ったのだ。


「お友達の皆、帰って!」⦅あら? お兄ちゃん。⦆

「…………。」⦅さぁ、お友達はどう出るかな?⦆

「たーちゃん、泣いてるから……帰って!」⦅お兄ちゃん、ちょっと震えてるよ。⦆


一人見たことが無いお友達が、お兄ちゃんを叩こうとした。⦅おっ……叩いてから出ようかな。⦆

すると……


「ダメ! 叩いちゃダメ! お兄ちゃんだから……。」⦅そうよね。あなたお兄ちゃんに遊んで貰ってるものね。⦆


その一言で叩こうとした男の子は止まったのだ。

⦅おお―――っ! 凄い!

 見ていただけで大成功だった。

 子どもたちだけで解決……うん? したのかな?⦆


止めた子が言った。


「たーちゃん、急に帰らないで!

 遊んでいたのに……急に居なくなったら嫌だ!」

「たーちゃん、急に居なくなったら駄目だよ。

 お兄ちゃんと一緒に謝ろうね。」⦅嘘―――っ! お兄ちゃん、尊敬するわ。⦆

「……みんな……ごめんなさい。」

「たーちゃんが急に帰って、ごめんなさい。」

「いいよ。次からは急に帰らないでくれたら!」

「バイバイ~。」

「またね~。」

「お兄ちゃん、また遊んでくれる?」

「うん。また遊ぼ。」

「うん!……またね~。」


幼くても子どもたちだけで解決!したのだとさ。

兄の弟への深い愛……それはブラコンと言っても良いのだ。

この後、お兄ちゃんは泣いている弟を抱きしめて涙を拭いてあげている。


「怖かったぁ~~。けど、謝ったから、また遊んで貰えるね。」

「うん。」




この兄の弟への深い愛は………永遠に………続き…………ませんでしたとさ。

その数年後のこと、食事中に兄に欲しいと言えば貰えていた弟。

その日も……


「お兄ちゃん、僕、とんかつ欲しいな。」⦅おっ、出たな。キラキラ光線!⦆

「ダメ! これをあげれば俺の分無いから!」⦅えっ? あげない?⦆

「ええ―――っ! どうして?」

「だ・か・ら! 俺の分無くなるから、俺もとんかつ好きだから!」

「お兄ちゃん~~~。」

「泣いても駄目だから……諦めて!」⦅あげなかった……ブラコン返上か!⦆


その日以来、兄の弟への深い愛は姿を消した……とさ。

おしまい。

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