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嘘つきとAIと某国の諜報員④

 

「とは言い渋々出発したもののだ……」



 とはいい出発をした秋山達であったが、

 秋山は整備された道路の防音壁の外に腰掛け、空に向かって話している。

 


 腰には先程までとは違いホルスターが装着されており

 その反対側には円柱形の機器が収納されてあるポーチが装着されている



 整備された道路とは違い秋山の座る場所はなんの舗装もされていない土の上であり、両腰のホルスターを土につけている

 又、辺りは草木も生い茂っている。

 

 日も沈み、薄暗くなったその場所で秋山の気分もどんより沈みつつあった。




『仕方ないわよ、ヘルプに出てるうちの班のメンバーの要請なんだから』



 

 秋山の“B.M.I”に女性声が聞こえてくる

 その声は柚木のものであり、秋山の視界からは右側端に通話中の文字と柚木の顔の映像が映っている。

 

 会議室を出た後、数分後に秋山達の班メンバーであるメンバーからヘルプの要請が届いた。

 

 秋山達に与えられた案件は現代界ではあくまで“恐れがある”程度のものであり

 当然優先されるべきものはヘルプに入るようになってしまう





「5班の連中も自分達の案件なら自分らでやれよな……」




 愚痴が口をついて出る

 秋山としては係長の疑いが真実であったなら、何としてでもそちらを優先させたいという気持ちが強い

 組織故のわだかまりもあり自由に動けない事を心底嘆く




『グチグチ言わないで、そろそろ準備して!来るわよ』




 その言葉を聞き、秋山は重たい腰をあげズボンについた土を払う

 

 

 そして、振り返り


 

 防音壁を見上げた瞬間、

 

 5メートル程ある壁を秋山は助走も付けずひとっ飛びし

 間で一度防音壁を蹴り上げ、

 淵に掴まる。

 

 そして、体を大きくしならせ

 まるで体操選手の様に防音壁の上で倒立状態になり

 そのままクルリと宙を回転し、防音壁に立つ

 秋山は上り車線側に居る



 「柚木何色の車だ?」



 夜間という事もあり交通量の少ない道路で走る車を見ながら秋山が尋ねる。


 

 

 『灰色のセダン、全自動運転で時速50kmで走行中』


『今リアルタイムの位置情報を共有するわ』



 柚木がそう言った後、遅れて数秒後には秋山の視界に共有申請が届く

 秋山は(共有を行う)という項目を選択しながらも考えていた



——全自動走行はまだしも、標準装備のGPS機能を切ってないあたりやっぱり素人だな




 秋山は経験から

 対象者にあまり経験がなくAI自体の情報を探るならまだしも“媒鳥”の情報を探るような人物だとは思えなかった。



——係長に印象付けされたせいかこうなってくると本当に疑えて来るな




 そこまで考えた所で柚木から位置情報が共有される

 対象の位置情報は赤いマルで表示され秋山の位置情報とリンクしており、お互いの位置が表示される

 

 対象の位置を示す赤いマルが移動しているのを見て、つい柚木に向かって声を上げてしまう




「おい!これ下り車線じゃんか!!」




 位置情報を見て事前に得ていた情報と違うことに気が付く

 



『そんな馬鹿な、現場の人間は上り側を走行中って言ってたわよ』




 だが位置情報の赤いマルの進む方向は、秋山の立つ上り側の進行方向とは間違いなく逆なのだ




「言ってる場合じゃねぇ!」




 秋山の視界には既に灰色のセダンが映っている

 

 反対車線にだ


 秋山は防音壁の上を、道路の進行方向とは逆に全力疾走し始める。



 

 ガンガンと秋山が足を踏む度に防音壁が激しく音を鳴らす。

 秋山が走りながら視線を後ろへ向けると

 既に灰色のセダンは100m程の距離まで迫っていた。


 

『秋山、一旦戻って別の場所で捕らえましょう』



 柚木の提案を聞きつつも

 返事をせず


 前に視線を戻すと大型トラックがこちらへ向かって走って来るのを確認した。


 すると秋山は



「前方に大型トラック、足場にするから事後処理は5班の連中に振っとけ」



 そう言い、飛ぶ


 飛び上がった秋山は

 片側2車線の追い越し車線を走る大型トラックの荷台天井へ着地


 そして、少し体勢を崩すが直ぐに前方へ転がり

 勢いを殺さぬまま再び走り出す


 灰色のセダンは既に秋山とほぼ並走状態にあり

 両車の距離が最も近づいたと判断した秋山は再び飛び上がる



——いけるか!?



 飛び上がった後そう考えた秋山であったが

 予想通りタイミングが合い

 中央分離帯を越え、走行する対象の車のボンネットへ着地する。



「なんだ!誰だよ!」



 凹んだボンネットに着地した秋山の耳に車内から叫び声が聞こえ中を見る


 すると中には2人の若い男が座っており、大声で秋山に向かって叫び続けた


 

 しかし、車は自動で運転を続け走行する。



——まずは止めないとか……



 そう思い

 秋山は左腰に付いたポーチから円柱形の機器を取り出しクルリと回し左手に持つ


 そこで運転席側に乗った男がウインドウを降ろし自動で走る車から身を乗り出し大声で秋山に叫んでくる



「テメェ一体なんなんだ!!」



 走行中の風を浴びながらも聞こえる程の大声を放つ男に対し



「“媒鳥”だ」



 そう言った瞬間


 秋山は円柱形の機器のスイッチを押す

 

 すると、そこから赤い光が奔り

 1m程の長さに達し

 それを車のボンネットめがけて突き刺した。


 

 するとボンネットからは黒い煙がたちまち舞い上がり

 大きな爆発音を立てて走行を止める

 


 暫く走って停止した車のボンネットから飛び降りた秋山はすぐさま柚木に通信を入れる



「現在地の200m前から片側交通規制、それと柚木お得意のハッキングであの車のドアをロック」


「後……5班の連中に確保の報告も頼む」



 報告し終わった秋山に閉じ込められた対象2名が喚き散らす



「おい!ふざけんな、絶対後悔させてやるからな」



 しかし秋山は意に介さず車のボンネットを蹴飛ばす

 その衝撃は大きく、車内は激しく揺れ2人の男は恐怖で黙り込んでしまう



「馬鹿な君達には一旦ウチでお仕置きだ」


「その時色々と聞かせて貰うからな」



 

 そして、暫くして“媒鳥”の車両が到着した。



 対象を引き渡し

 秋山は取り調べの為本部へ戻る。



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