(6)
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先日、雪が降り、美由紀の暮らす町を薄く、あまねく覆い尽くした。日本列島の内陸に位置する町で、あまり他府県のひとはそういうイメージがないところだが、意外と豪雪地帯であり、ドカ雪が降ることがある。
今回の雪は、まだ初冬ということで降り方がやさしいが、季節が進行すれば、交通網がマヒするほど、降る日が出てくるだろう。
「うぅ、寒……」
と、自身を抱いて凍える美由紀は、クラスメイトの一之清鈴といっしょに湖へと来ていた。彼女たちの町のシンボルといえる大きい湖で、春秋の過ごしよい日和の日には、ひとが大勢来るのだが、12月の小雪が降った次の日は、ひと気が乏しく、寥々としていた。
時間は、昼の一時を過ぎていた。
「冒険でもしに来たって感じだね」、と鈴。
「そうだね。家にこもっているのが圧倒的によかった」
二人は揃ってスラックスと中綿コートといった出で立ちで、揃って鼻を真っ赤に腫らしていた。
彼女たちの歩く湖の浜辺は、砂地が雪に覆われ、恐ろしく寒々としていた。湖を渡る水の冷気をまとった風が、波と共に彼女たちへと吹き寄せ、その冷たさは凄まじいものだった。
週末の日曜日で、特に予定のなかったふたりは、美由紀の誘いで、こうして外で行き会わせたのだった。
「今日さ」、と寒がりの美由紀が言う。「鈴の家、行ってもいい?」
「うち? 別にいいけど、お父さんがいるよ。仕事が休みで」
「お父さんがいたって全然構わないよ。初対面じゃあるまいし」
「無茶苦茶しゃべりかけてくるかもよ」
「そうだね。結構話好きだものね。鈴のパパ」
「今時分だと、進路について聞いてくるかもね」
「あぁ、そうなるとちょっと気まずいなぁ。オロオロして」
「ちゃんと自信満々に言える答えを用意することだね」
「鈴だってまだはっきりとは決めてないんでしょ?」
「……まぁね」
――強勢に冷風が吹き寄せる。大きい波が浜辺で砕けて飛沫を散らし、その寒さは、骨身に沁みるほどだった。
美由紀と鈴は、急いで水辺を離れることに暗黙の内に同意し、湖へと背を向けて歩き出した。
「鈴のパパには」と美由紀。「勉強会っていうことにする」
「別に、普通に遊びに来ましたって言っても、お父さん、悪い顔はしないと思うよ」
「ううん。ホントに勉強するつもり」
「わたしの家で?」
「そう」
「捗るかなぁ」
鈴の家への道すがら、二人はスーパーに立ち寄り、間食用にスナック菓子などをそれぞれの小遣いで買った。
そして、鈴の通学路で、また帰りにも彼女が必ず通る公園を通り道として利用し、二人は、あるいは勉強会を催すため、あるいは寒さを逃れるため、あるいは週末の空白を埋めたいがため、一之清家を目指し、歩いた。
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