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その三、どこからともなく聞こえる声

私達が七不思議のうちの二つの謎を解明してから数日が経つ。

誰も七不思議が減った事に気がついていないのが可笑しかった。

「そういえばいなくなった子って誰なんだろうね?」

「さあ?もしかしたらそんな子は最初からいないのかもしれないよ」

「ええー、なのに噂になるの?」

「噂とはそんな物だよ」

そんな物なのか。

「さて、今日はどこからともなく聞こえる声を調べようか」

歩き出す背中を慌てて追いかけた。


到着したのは体育館。

ドーム型のとても広い空間。

「ここなら声が響くから、きっとそれだよね」

そう言って中央に歩き始める。

それにしても、いつもなら運動部がいるはずなのにどうして誰もいないんだろう。

違和感を感じてふと立ち止まる。

まさか…


「体育館貸し切りにしたの?」

私がそう聞くと、友達は一瞬真顔になりすぐに吹き出した。

「かっ…貸し切り?体育館を?個人が?」

腹を抱えて笑われて、顔から火が出そうになる。

「もう!そんなに笑わなくても良いじゃない!」

私は拗ねるようにそのまま歩き出した。


「………。」

何か聞こえたような気がした。

友達が謝っているのだろうと思って振り返ろうとする。

「そのまま向こうの壁まで行ってごらん」

これは友達の声だ。

友達がそう言うなら何か意味があるのだろう。

私は振り返らずに真っ直ぐ歩いた。

ちょうど壁まで着いたとき、後ろから生暖かく生臭い風が来た。

ちょっと気持ち悪いと思っていたらすぐ後ろから声がした。


「何か聞こえたかい?」

「何も聞こえなかった。なんか変な風が吹いて気持ち悪いね、ここ」

「どうして壁を向いて喋ってるんだい?」

「振り返っていいって言われてないから」

私がそう言うと

「もういいよ」

頭にぽんと手を置かれる。


「結局聞こえる声ってなんだったの?」

「ああ、それは…ちょっとそこにいて」

そのまま反対方向に歩いて行く友達。

なぜだか少し寂しい気がした。

「…聞こえる?」

それは反対側に立つ友達の声。

私が驚いていると

「これは『ささやきの回廊』っていう現象なんだ。壁伝いに声が届くんだよ」


「なーんだ」そう言いつつ、さっき何かが聞こえたような気がするのは体育館の中央だったような。

まあ、変な風も吹いていたし、きっと気のせいだろう。


後日友達になんであの日は人がいなかったんだろうって言ったら「あの日は練習試合で運動部がいない事を知っていたからね。ささやきの回廊は静かな時でないと作用しないから」そう言ってニヤリと笑った。

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