プロローグ
学院に古くから伝わる七不思議
一つ、勝手に鳴るピアノ
一つ、見るたびに角度が変わる肖像画
一つ、どこからともなく聞こえる声
一つ、映らない鏡
一つ、時計台の人影
一つ、増える階段の段数
最後の一つは―――
これはとある学院に通う平凡な私とちょっと変わった友達が、学院に伝わる七不思議の秘密を解いていく話。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私と友達の出会いはちょっとした偶然だった。
学院の人気者が自分の友達として紹介したこの子に、私が質問状を送ったのが始まり。
ちょっとした好奇心だった。
ただ自分と関わり合いになるとは思えず匿名で送ったのだけど…なぜか見つかってしまった。
以来毎日お話する仲に。
友達と話すのはとても楽しくて、真面目な話からくだらない話、時には与太話なんかもする。
ある時ふとこう言われた。
「あなたは人間の中でも上澄みだよ」
私はよく意味がわからず
「私は平凡な人間だよ?」
と首を傾げると
「謙遜は美徳だけど過ぎると嫌味になるんだよ」
と諭されてしまった。
友達はたまにとても難しいことを言う。
私が曖昧に微笑むと
「あなたは利用しようとしない、搾取もしない」
と寂しげに微笑みを返される。
私は驚いて
「友達だもん!…でも利用はしてるかも…話し相手になってもらってる」
そう言うと
「だからあなたは上澄みなんだよ」
とにっこりと笑った。
その日もいつものように世間話をしていると、こんな話が聞こえてきた。
「ねえ知ってる?最近行方不明になった子の事」
「ああ、どうせ家出でしょ?」
「それが違うんだって!どうやら学院七不思議を調べてたらしくて」
「えっ?七不思議なのに六つしかない七不思議?」
「そう!どうやらその七つ目を知ったらしいって噂よ」
「ええー、それこそおとぎ話のようなものでしょ」
話が聞こえなくなると、私は首を傾げた。
「この学院に七不思議なんてあったの?」
「有名な話だよ。逆になんで知らないの」
ちょっと苦笑気味に言われて照れ隠しに頭を掻く。
「それにしても…行方不明か」
そう呟くと目を伏せて形の良い顎をつまむ。
友達が考え事をしている時の癖。
私は友達の口から言葉が発せられる時まで静かに見守る。
そして開いた口から飛び出したのは
「七不思議解明ツアーと行こうじゃないか」
当然私も同行する事になっている。
その当たり前がなぜだか嬉しかった。