星まつりのねがいごと
今日の お山の 学校では
子供たちは どこか うかれています
それは はじめて 星まつりに さんかできるからです
それというのも 星まつりの 夜に
ながれる星に ねがいごとをすると
そのねがいごとは かならずかなうと いわれているからです
「ぼくね お星さまが ながれるのを 見つけたらね
早く 大きくなるように おねがいするんだー」
「わたしはね お料理が できるようにと おねがいするのよ」
「わたしなんてね お母さんのように なんでも上手に
できるようになるって おねがいするの」
クマの子が 自分の ねがいごとをいえば
ウサギの子と キツネの子も 続けて
自分の ねがいごとを 口にしました
他の子たちも つられたように
自分のねがいごとを 言いだしました
「ぼくは 早く 走れるように!」
「わたしは おせんたくが 上手に できるように」
「おいらは 力が 強くなるように」
オオカミの子 タヌキの子 リスの子が
続けて いいました
「わたしはねえ」
「ぼくのも きいて!」
他の子たちも われさきにと
口を 開きます
みんなが 楽しそうに ねがいごとを 口にするなかで
一人だけ もじもじと している子が いました
それに 気がついた クマの子が いいました
「きみの ねがいごとは?」
「えーと」
問いかけられた ブタの子は
もじもじとして 答えようとしません
「ねえ ねがいごとはないの?」
キツネの子も ねがいごとを ききたくて
ブタの子に 問いかけました
「あ、あるけど」
もじもじとして いわないブタの子に
みんなが つめよります
「ねえ わたしたちは いったのに あなたは おしえてくれないの」
「そういうわけ ……じゃないけど」
ブタの子は うつむいて もじもじと しています
「はあ~ もういいよ
そんなに いいたくないのなら いわなくていいさ」
オオカミの子が 強い ちょうしで いいました
他の子たちも 気分を がいしたのか
フンと ブタの子から 目を そらしました。
ブタの子は 下を見てから
けついをしたように 顔を あげました
「えーと その ね おかあさんの ……びょうきが
……なおりますように ……って
おねがい しようと おもうんだけど……」
小さな声で いった ブタの子を
みんなは ハッとした顔で みました
そうなのです
ブタのお母さんは すうじつまえから びょうきで ねこんでいると
おとなたちの かいわから きいていたのです
みんなは チラチラと みかわしあってから オオカミの子が
いちばんに 口を ひらきました
「そ それならさ ぼくも ブタくんの お母さんが
よくなるようにと おねがいしようかな」
「わたしも」
「ぼくも」
他の子たちも オオカミの子と
同じきもちだと 口々に いいました
「みんな、ありがとう」
ブタの子は うれしくて
にっこりと みんなへと わらいかけました
みんなは ほおを赤くして
にっこりと わらいあいました
とびらのかげで 聞いていた 先生も
にっこりと わらいました
さて その日の 夕方です
星まつりが おこなわれる 山の上の広場に
みんなが あつまってきました
広場の まん中には
かがり火がもやされ まわりの木々には
みんなが もちよったランタンが つりさげられました
大人たちは もちよった料理を
テーブルにならべて ワイワイとはなしています
「よい夜ですなー」
「ええ ほんとうに 雲ひとつ みえませんね」
子どもたちも あつまって ワクワクしながら
星が ながれるのを まっています
「おい。みんな、わかっているよな」
「もちろんだよ」
オオカミの子が みんなへ かくにんをしました
みんなは いっせいにうなずいて へんじをしました
「あの でも みんな…… 自分の
ねがいごとを いっていいんだよ」
ブタの子が オズオズと いいました
「なに いってんだよ
星まつりは 来年もあるけど
ブタくんのお母さんは いま びょうきなんだろう
それなら 今年の ねがいごとは きまりだろ!」
「そうよ それに お母さんが ねこんでいるのって いやだもの」
オオカミの子が かみつくような いきおいでいえば
キツネの子も かなしそうに いいました
ほかの子も うんうんと うなづいています
「あ ありがとう」
「だから おれいなんか いらないってーの!」
ブタの子が おれいをいうと
オオカミの子は らんぼうな いいかたをしました
そのようすを はなれたところから見ていた
オオカミのお母さんは 立ちあがって
子どもたちの ところへ 行こうとしました。
「まってください」
止めたのは 山の学校の 先生です
先生は 大人たちに
学校で あったことを はなしました
「まあ、そんなことが」
大人たちは かおをみあわせると
そっと ブタのお父さんの ほうをみました
ブタのお父さんは 子どもたちの
やさしいきもちに なみだぐんでいます
そうしているうちに、夜空の星たちが
キラキラと かがやきだしました
星まつりの はじまりです
スーッ
と 星が 空を よこぎっていきます
いくつもの星が 空を ながれていきました。
夜半を すぎるころ 子どもたちは
お父さん お母さんの せにのって
家へと かえってゆきました。
さて 子どもたちは ねがいごとを
いうことが できたのでしょうか?
すうじつご ブタのお母さんは 良くなり
ブタくんも 元気に 学校に かよっています
さて、ここで問題です。
先生はどんな動物でしょうか?
ヒントは昔からの童話に出てくる動物です。
それから、この作品に出てきた動物名は、他の童話でよく聞く動物名を使いました。
鳥の名前が出ていないけど、もちろん学校に通っていますよ。