1話 後半 転校生は魔法少女⁉︎
「えっ? 玲奈ちゃん⁉︎ どうしてここにいるの?」
「それはこっちのセリフ。危ないから恵ちゃんは下がっていて」
玲奈ちゃんは鞄から1枚のトランプを取り出すと、天高く掲げた。カードにはスペードのエースが描かれている。
「スペードのカードは騎士の証。その剣で全てを断ち切れ!」
カードから飛び出したスペードのマークが玲奈ちゃんの体を包み込む。そして1人の戦士が立っていた。
オレンジ色のスカートに白シャツを合わせ、タキシード風の黒いジャケットを羽織っている。そして左目にスペードのマークを宿していた。
全体的にマジシャンを連想させる服装だった。たしかトランプのマークにはそれぞれ星座、季節、職業など、様々な意味が込められていたはず。
例えばダイヤはお金を象徴していて、商人がモチーフとなっていたし、スペードの場合は剣の様な形から騎士を現していたかな?
「さてと、覚悟はいい?」
玲奈ちゃんがスペードのカードを優しく撫でると、瞬く間に鋭利な剣に変化した。そして素早い剣捌きでネズミを退治していく。
「チュー! チュッチュ! チュー!」
ネズミは何やら懸命に鳴き叫ぶ。何を言ってるのか分からないけど、多分出て行けって事かな?
「チュッチュ! チュー!」
ネズミの鳴き声が商店街に鳴り響く。すると、さっき倒したはずのネズミが集まって来た。
「えぇ、どういう事⁉︎」
ネズミたちは渦を巻くようにぐるぐると回り不気味な闇が漂う。そして巨大化して私たちを見下ろした。
「恵ちゃん、危ない!」
巨大なネズミが私に向かって看板を投げ飛ばした。すると、玲奈ちゃんが一瞬で駆けつけて来て真っ二つに切り落とした。
「ミト、恵ちゃんを守って!」
私の足元にいた白うさぎがコックリと頷く。ミト……それがこの子の名前なの?
「ねぇ、玲奈ちゃん、1人で大丈夫?」
「もちろん。だって私、強いから!」
玲奈ちゃんは剣を逆手に持ち直すと、目にも止まらぬスピードで一気に距離をつめた。
ネズミが玲奈ちゃんに向かって物を次々と投げ飛ばすが、そのどれもがバラバラに切り落とされていく。
「とどめだ!」
玲奈ちゃんは床に落ちた残骸を足場にして駆け上がると、ネズミの頭から剣を突き刺した。
* * *
「あれ……私たち戻ってきたの?」
気がつくと私たちは元の路地裏に戻って来ていた。
「そっか……そうだよね、元々は君たちの住処だったんだね。ごめんね人間の都合で君たちを隅に追いやって……」
玲奈ちゃんは地面に膝を着いてネズミに話しかけていた。すると、ネズミの体から卓球玉くらいの黒いボールが出てきて玲奈ちゃんの中に吸い込まれていく。
「ねぇ、ミト、あれは何をしているの?」
「あれはね、倒した闇を自分の中に取り込んで浄化しているんだよ」
「闇を取り込んで浄化? 玲奈ちゃん、貴方は一体何者なの?」
玲奈ちゃんはクルリと私の方を振り返ると、自信に満ちた表情で腰に手を当てた。
「私? 私はね……魔法使いなの!」
「まっ、魔法使い⁉︎」
突拍子もない回答に思わず聞き返してしまった。でも確かに突然変身したり巨大なネズミを倒していたから説得力がある。
「えっと……いつもあんな化け物と戦っているの?」
「うん、まぁ、そうだね」
「怖くないの?」
「全然、だって私、強いもん! あのさ……今日の事は黙っていてもらえるかな?」
「うっ、うん、もちろん。約束するよ」
「本当、ありがとう!」
玲奈ちゃんはいつも通りの明るい笑顔を見せる。そんな2人と1匹を物陰から1人の男が様子を伺っていた。
「なるほど……あれが最近やって来た魔法少女か……早めに消しておいた方が良さそうだな」
男は不気味な笑みを浮かべると、闇に消えて行った。




