最終話
──速報です。今朝、発生した台風は突然消滅しました。原因は未だ謎ですが避難警報は取り消されました。繰り返します……
天音はテレビを消すと淹れたてのコーヒーを皆んなに配った。ここは自分で経営するカフェテリア。2人の少女のおかげで世界は救われた。
「紗央里ちゃん、千夏ちゃん今まで本当にお疲れ様。2人のおかけだよ世界が救われたのは」
紗央里と千夏は曖昧に頷くと顔を見合わせた。
「どうしたの2人とも?」
「えっと……何だか実感がないというか……本当に私たちだけで世界を救った気がしないというか……」
「アタシも紗央里さんと同じです。誰かもう1人アタシたちと同じ歳の子がいた気がするんですが……」
2人の疑問はまさに天音も感じていた事だった。スペードのカードは確かに玲奈に託したはず。でも玲奈は勝の手によって命を落とした。じゃあ残されたカードは一体誰が引き継いだの?
「ねぇ、ミト、何か知ってる?」
ミトはフワッと登場するとカウンター席に着地した。でも垂れ耳をパタパタと振りながら小さな首を横に振る。
「そう……じゃあ仕方ない。今日は特別に好きなものを頼んでいいいわよ!」
「「えっ本当ですか!?」」
千夏と紗央里は声を揃えて喜ぶと、目をキラキラと輝かせる。そんな光景をミトが少し離れた位置から見守っていた。
「恵……」
ミトは窓際に飛び乗ると、外を眺めながらポツリと彼女の名前を呟いた。
* * *
「本当に大丈夫?」
「うん、もう平気だよ。行ってきます」
恵の妹の実里は、ランドセルを背負い直して外に一歩を踏み出した。
今までは周りの目が怖くて学校に行けなかった。どんなふうに思われているのか不安で足が震えて、登校しようとするといつもお腹が痛くなっていた。
でも、今日は全くお腹が痛くない。不安や恐怖もなくて、どうして今まで怯えていたのか不思議に思えてくる。
「ねぇ、今日の1時間目なに?」
「えっと……確か算数だったよ」
ふと、同じくらいの歳の子の会話が聞こえてくる。以前なら1人でいると周りから浮いているみたいで嫌だった。だから無理やり友達を作ろうとしていた。
でも今は『そんな自分でも別にいいや』っと認めてあげられる様になった。ダメな所も含めて以前よりも自分の事が好きになれた気がする。
どうして突然こんなふうに割り切れる様になったのか自分でもよく分からない。ただ1つ分かっているのは『ありのままの自分を認めればいい』っと誰かが教えてくれた事だ。
一体誰が教えてくれたかは覚えていないけど……
「あれ? おかしいな……学校ってこっちだよね?」
今度は1人で登校している女の子の声が聞こえてきた。迷子なのかな? オドオドと同じ道を行ったり来たりしている。ふと、ランドセルの隙間から何かが落ちて実里の足元に飛んで来た。
「あの、何か落としましたよ」
実里は地面に落ちたカードを拾ってあげた。
(ハートの7……これってトランプだよね?)
「あっ、本当だ、教えてくれてありがとう!」
女の子はハートの7を宝物のように大切に撫でて埃を払う。
「私の名前は優奈。よろしくね」
「えっと実里です」
突然、自己紹介をされたので実里も慌てて自分の名前を名乗った。久しぶりに同い年くらいの子と会話をするから緊張する……
「それ……大切なものなの?」
「うん! 私ね体が弱くてずっと入院していたの。それでね手術をする時に誰かがくれたの。7は幸運の証なんだって!」
優奈は得意気に説明を始めたが、不意に言葉が詰まって俯く。
「名前も思い出せないけど、何だか実里ちゃんと雰囲気似ている気がするの。だからこれはあげるね」
「えっ、いいの? 大切な物でしょ?」
「うん、いいよ。無事に手術が終わったら返そうと思っていたの。だからその代わりというか……一緒に学校に行こ。久しぶりだからちょっと不安で……」
「いいよ。一緒に行こ!」
「ありがとう!」
実里はカードを受け取ると、優奈がやっていた様に優しく撫でてみた。すると、忘れてしまった記憶が走馬灯の様に蘇ってきた。
──実里、新しいマジックを覚えたの!
(えっ、この声って……)
──大丈夫だよ。いつでも力になるからね。
なんだか温かくて安心する。そうだ、私には……
──行ってらっしゃい、実里。
優しい声が私の名前を呼ぶ。その瞬間、溢れ出た涙が頬を濡らす。
「えっ、どっどうしたの⁉︎」
優奈が心配そうに実里の顔を覗く。
「大丈夫……ただ、すごく懐かしくて……」
実里は涙を拭くと、自宅の方を振り返った。
(行ってきます。お姉ちゃん……)
─完─
「マジック&ファンタジー天才マジシャンは魔法少女に弟子入りする⁉︎」はこれで完結です。最後まで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。




