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25話 勝と天音の過去③

 謎の闇から勝と天音を守った翌日、カナさんは学校を休んだ。その次の日も学校に来なかった。


 もしかしたらどこか怪我をしたのではないか? そんな不安が過って勝は授業に集中出来なかった。


「えぇ〜 今日もカナさんはお休みだそうです。それでは皆さんよろしくお願いします」


 朝礼が終わって教室が賑やかになると、天音(あまね)(まさる)の席までやって来た。


「最近カナちゃん学校に来ないよね? どこか悪いのかな?」


 天音は空いてるカナの席を見て深くため息をつく。


「ねぇ、今日学校が終わったら様子を見に行かない?」


「いいけど天音は今日補修があるだろ?」


 勝の指摘に天音の表情が引きひきつる。


「えっ……まぁ……そうかもしれないけど、友達の事の方が重要でしょ?」


「俺が様子を見に行くから天音は補修を終わらせるんだ。分かったか?」


「は〜い……」


 天音は渋々頷くと自分の席に戻っていった。1時限目の授業が始まり、淡々と時間が過ぎていく。放課後になると勝は鞄を背をってカナの家に向かった




* * *


 途中コンビニに寄りつつ地図を頼りに進むと、立派なマンションに到着した。


(ここがカナさんの自宅か?)


 圧倒されそうになりながらも、意を決して部屋の前まで着くと、勝は軽く深呼吸をしてチャイムを押した。


「は〜い、どなたですか?」


 部屋の中からカナさんの声が聞こえてきた。


「勝です。プリントを届けるついでに様子を見に来たんだけど……」


「わざわざありがとうございます……その、よかったら上がっていきますか?」


 部屋の中からがチャっと鍵が開く音がする。扉を開けるとパジャマ姿のカナさんが出迎えてくれた。


 普段とは違うラフな姿に思わずドキッとする。勝は照れ隠しをするように顔をかいて部屋に上がった。


(そういえば天音以外の女子の部屋に入るのは初めてかもなぁ……)


 カナさんの部屋は随分とシンプルだった。生活に必要なものが最低限あるだけで、人形やポスターなどは一切ない。どこか寂しげな部屋だった。


「これがプリントで……そういえば夕食はまだ食べていないよね?」


「はい……朝から何も……」


 カナさんはそう答えると、ふらっと体勢を崩す。危うく転びそうになった所を勝が咄嗟に腕を掴んで支えた。


「まだ体調が悪いんだろ? とりあえず寝ていて」


「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えて……」


 カナさんはふらつきながらベットに潜り込む。


「そういえばご両親はいないの? もしかしてまだ仕事中とか?」


「いえ、私は1人暮らしなので……」


(マジかよ……)


 勝は心の中で呟くともう一度部屋を見渡した。まだ同じ高校生なのに凄いな……


「とりあえずこれがプリントで、あとコンビニで飲み物とか買ってきたから……」


 勝はここにくる途中で買ったスポーツドリンクとミカンゼリーを取り出して机に置いた。


「お気遣いありがとうございます……」


「開けようか?」


「そうですね、お願いします」


 勝はこぼさない様にドリンクの蓋を開けてカナさんに手渡した。水分補給を終えて一息つくカナさんだったが、まだ体調は優れないのか、顔色が悪い。


「やっぱり魔法少女として戦う日々が負担なんじゃないか?」


「確かに大変ですが……私の唯一の取り柄なんです……」


 カナさんはシーツをギュッと握り締めて自分に言い聞かせる様に呟く。


「唯一の取り柄? そんな事ないよ! 優しいし、思いやりがあるし、可愛いし、カナさんの魅力は数えきれないよ!」


 青白かったカナさんの顔色が見る見ると赤く染まっていく。ふと、自分がとんでもなく恥ずかしい事を言ってると気づいて、慌てて勝は口を閉ざした。


「そういえば朝から何も食べてないんだろ? 何か作るから休んでいて」


 勝は話題を変えると、台所に行ってお粥を作り始めた。


(それにしても……どうしてカナさんは体調を崩してまでも戦うのだろう? 唯一の取り柄? そんなはずないのに……)


 卵を溶いてお湯を沸かし、ご飯が煮える間ぼんやりと考え事をしていると……


「仕方ないよ、彼女がそれを望んでいるのだからね」


 突然、誰かが勝の質問に答えてくれた。驚いて振り返ると、白いウサギがちょこんっと地面に座っていた。


「やぁ、ボクの名前はミト。いつもカナがお世話に……」


「うわっ! なんだ!? ウサギが喋った!?」


 ミトの自己紹介を遮る様に勝の声がキッチンに響く。


「そんなに驚く事はないでしょ? ボクの名前はミト。よろしくね」


「あ、あぁ、よろしく。ミト、さっき彼女がそれを望んでいるって言ったよな? どう言う事なんだ?」


「そのままの意味だよ。彼女は魔法少女になる適性があった。そして彼女は誰かの役に立つ事を望んでいた。だから戦う事に決めたんだ」


「でも、無理をしてまで戦う必要はあるのか? カナさんだって俺たちと同じ高校生なんだから遊んだり勉強したりで忙しいだろ?」


「確かにその通りさ。ボクだってカナには普通の人と同じように幸せになってほしい。でも……」


 ミトはため息をつくと、言いづらそうに続きを語る。


「数百年に一度、凶源の闇がこの世界に訪れるんだ。それに飲み込まれると何もかもがリセットされる」


「リセット? どう言う事だ?」


「これまで人類が築いてきた歴史が綺麗さっぱり無くなるんだ。また原子時代からやり直しだね」


「マジかよ……まさか、カナさんが必死に戦っているのって……」


 嫌な予感が脳裏に過ぎる。その予感は的中した。


「そのまさかだよ。もうすぐ凶源の闇がこの世界に訪れるんだ。だから少しでも闇の勢力を減らすために無理をして戦ってるんだよ」


 凶源の闇……世界がリセットされる……あまりにも壮大過ぎていまいち実感が湧かない。でも……


(カナさんはこれを1人で抱えている。そんなのあんまりだ!)


「なぁ、ミト! 俺たちに出来る事はないのか?」


「そうだね……これまで通りカナを近くで支えてあげてほしい。これは君たちにしか出来ない事だ。頼んだよ」


 ミトはそう言うと、登場した時と同じ様に突然消えてしまった。


(近くで支える? 結局俺たちには戦う力はないのか?)


「勝くん……焦げ臭いよ!」


 カナさんの声にハッと我に返った勝は慌てて鍋の火を止めた。考え事に夢中になるあまり、鍋からお湯が吹き出すまで気づかなかった。


「ごめんカナさん、お待たせ。あのさ……ミトから色々と聞いたんだけどさ……」


 勝は出来立てのお粥をテーブルに置くと、拳を握り締めてカナさんの顔を真っ直ぐ見つめた。


「俺には何の力もないし闇と戦う事も出来ない。でも、必ず側でカナさんを支えるよ!」


 勝の真っ直ぐな思いにカナは思わず胸がキュッンと締め付けられる。


「うん、ありがとね。勝くん」

 

 カナは跳ね上がる心臓を抑えて感謝の言葉を伝えた。


「じゃあそろそろ行くよ」


 勝は荷物をまとめると、カナさんの家を後にした。


(数百年に一度の凶源の闇……カナさんにだけに任せる訳にはいかない。俺が必ず守ってみせる!)

ご覧いただきありがとうございました!

次回も18時頃に投稿します。

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