24話 勝と天音の過去編②
「ご馳走様でした〜」
結局、勝が奢る事になった。天音は満足げな表情で店を出て行くが、カナは少しだけ俯いていた。
「あの、勝さん、本当に奢ってもらってよかったのですか?」
「あぁ、まぁ、別に大丈夫ですよ。これくらい」
(天音と違っカナさんはちゃんとお金の事も心配してくれる。良い子だなぁ……)
「ねぇ、勝、今どうせカナちゃんは良い子だなぁ〜 って思ったでしょ?」
天音はまるで勝の胸の内を見透かすように思っていた事を言い当てる。
「よく分かってるじゃないか、お前はもう少し遠慮したらどうだ?」
それからも勝と天音は口論を続ける。そんな2人を見てカナはクスクスと笑っていた。
「2人は本当に仲がいいんですね」
「でしょ!」「そんな事ない!」
パッと笑顔で答えた天音とため息混じりに答えた勝の声が綺麗に重なる。
「ふふっ、やっぱり仲がいいね。あっ私の家、向こうだから……今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう。また明日、カナちゃん!」
「さようなら、カナさん」
勝と天音は2人きりになると、朝とは違ってゆっくりと肩を並べて家に向かった。会話は特にないが気まずい感じは全くしない。それが勝には心地良かった。
2人の足音が日の暮れた街にこだまする。そんな静けさを打ち破る様に天音が「ねぇ、何あれ!」っと声を上げた。
つられて見てみると、同じ制服の女子生徒が肩を落として歩いていた。その頭上には謎の黒い玉? らしき物が宙に浮かんでいる。
天音がそっと近づいて黒い球に触れると、まるでブラックホールの様に吸い込まれていった。
「おい、天音!」
勝もつられるように手を伸ばすと、小さな黒い玉の中に体が吸い込まれていった。
* * *
「ここは……教室? どういう事だ?」
勝は状況を確認するために辺りを見渡した。黒板があって机も並んでいる。間違いなくここは教室だ。隣に目線を動かすと、天音が横たわっていた。
「おい、天音、しっかりしろ!」
「う〜ん……あれ? もう朝なの?」
危機的な状況にも関わらず相変わらずマイペースな天音は目を擦りながら体を起こす。
「あれ? 教室? どういう事?」
「さぁ、分からない。なぁ、あの子ってさっきの落ち込んでいた女子生徒だよな?」
教室の1番窓際の席にさっきの女子生徒が椅子に座っている。何やら落ち込んでいる様子だった。
近づいて様子を確認すると、机の上に数学の小テストが置いてあった。点数はなんと98点。ほぼ満点だった。
「凄い! 私この前の小テスト赤点ギリギリだったんだよね〜」
天音は羨ましそうにしていたが、本人は納得がいってない様子だ。
「どうして? なんでなの! 完璧じゃなきゃ嫌だ!」
女子生徒は小テストを破り捨てると、ギロリと鋭い目線で勝たちの方を振り返る。
「誰? 貴方たちは? 見ないでよ!」
女子生徒は机からコンパスや定規を取り出して乱暴に投げ飛ばしてくる。
「天音、危ない!」
勝は咄嗟に天音の前に立つと、守る様に両手を広げた。三角定規が頬に掠って血が滴り落ちる。ふと目線を後ろの壁に移すと、定規が深く刺さっていた。
「勝!!!」
「大丈夫だ。これくらい問題ない」
勝は天音を庇う様に一歩前に出て女子生徒の様子を伺う。
「おい、危ないから落ち着いてくれ。一体何があったんだ?」
勝が問いかけると、女子生徒は忌々しそうに唇を噛み締める。
「嫌だ、完璧じゃないと嫌なの!」
女子高生の叫び声と共にコンパスや定規がふわりと浮かぶ。そして一斉に勝にめがけて飛んで来た
(これは当たったら痛いじゃ済まないな……)
「勝! 危ないから逃げて!」
「そんな事したら天音が危ないだろ?」
勝は覚悟を決めると、両手を広げた。まさかこいつのために死ぬ事になるとは……本当に腐れ縁だったなぁ……
せめて痛みに備えて体に力を入れたが、なかなか痛みがやってこない。恐る恐る目を開けると……
「ごめん2人とも、遅くなって」
謎の少女が勝と天音を守る様に立っていた。白いスカートに白シャツを合わせ、タケシード風の黒いジャケットを羽織っている。そして頭には小さな帽子を乗せていた。
なんとなくマジシャンを連想させる衣装だった。少女はクルリと2人の方を振り返る。その顔を見た瞬間、天音と勝は声を揃えて叫び声を上げた。
「カナちゃん!?」「カナさん!?」
驚く2人を他所に、カナはポケットから3枚のトランプのカードを取り出した。
「ダイヤ、スペード、クラブ、力を貸して!」
カードはカナの命令によってそれぞれコイン、剣、棍棒に形を変える。
「あの少女を抑えて!」
それぞれの武器はまるで意思があるように空間を自由に動き回って少女に攻撃を加える。
「勝くん、怪我を見せてもらえるかな?」
「えっ、あっ……はい」
ポカーンとしたままの勝が上の空で答えると、カナはハートのトランプを取り出して勝の手に握らせた。
「愛の力は世界を救う。ハートの心で傷を癒せ!」
不思議な合言葉に合わせてカードが光り出す。その光は勝を包み込んで傷を癒していく。無事に完治する頃には女子生徒は拘束されていた。
「これで止め!」
カナが指を鳴らすと、宙を舞っていた剣とコインと棍棒が一斉に女子生徒に振り下ろされる。気がつくと勝たちは元の通学路に戻って来ていた。
「全てが完璧な人なんていないよ。だからそんなに自分を責めないで」
カナは女子生徒に向かって何かを話していた。話が終わると黒い玉がゆっくりとカナの胸の中に溶けていく。
「ねぇ、カナちゃん、貴方はもしかして……」
天音が恐る恐る尋ねようとすると、カナは照れくさそうに微笑んだ。
「実は私……魔法少女なの」
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次回も18時頃に投稿します。




