21話 お姫様は魔法少女
「恵さん、もう体調は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
数日振りに学校に向かうと、担任の先生が声をかけてくれた。何だか凄く久しぶりに戻って来た気がする。
「もし、体調が悪くなったら早めに教えて下さいね」
「はい、ありがとうございます」
私は自分の机に戻ると授業の準備を始めた。隣の席には誰もいない。本来ならここに玲奈ちゃんがいて休み時間はいつもお喋りをしていた。
誰もいない席は、ぽっかりと穴の空いた私の心の様に空虚で寂しさが漂っていた。
でも、今は悲しんでいる暇はない。玲奈ちゃんの願い──『皆んながありのままの自分を認められる世界』を作るために頑張らないと!
長かった1日が終わり放課後になると、私は帰り支度をして天音さんの元に向かった。どうしても確認しておかないといけない事がある。
「あら、いらっしゃい、久しぶりね恵ちゃん」
天音さんが経営する街から少し離れたカフェテリアに入ると、のんびりとした口調で出迎えてくれた。
「天音さん、実は聞きたい事がありまして……私は1番優秀な魔法少女ですか?」
単刀直入に質問してみると、天音さんはクスクスと笑って首を振った。
「それはまだかな? せめて私以上に活躍してくれないと」
「天音さん以上ですか⁉︎」
「えぇ、そうよ。私だって元魔法少女なんだから、1番優秀と言うからには超えてもらわないとね」
天音さんを超える……そんな事が出来るのかな? でも確実に分かった事がある。今の私は1番優秀じゃない。なら誰かが千夏さんに嘘をついた事になる。
「あの……実は、数日前に同じ魔法少女に襲われまして……」
私は千夏さんと戦った事を詳しく説明した。話していくうちに天音さんの表情が暗くなっていく。
「なるほど、そんな事があったのね。まぁ、おそらく千夏ちゃんに嘘をついたのは勝でしょうね。報告してくれてありがとね」
「いえ、大丈夫です。あの……天音さんと勝さんは知り合いなのですか?」
私は以前から気になっていた事を思い切って聞いてみた。
「まぁ……うん、同期みたいなものかな?」
天音さんは曖昧に返事をすると、私の肩をポンっと叩いて話題を変える。
「さてと、恵ちゃんには引き続き闇と戦ってもらうね。願いを叶えたかったら私が認めるまで頑張ってね」
「あっ、はい。努力します」
私は力強く頷くとカフェテリアを後にした。でも天音さんを超えるなんて出来るのかな?
そもそも何を基準に天音さんを超えた事になるのか分からないし、本人の気分次第でいくらでもまだ足りないと言えるし……
天音さんは本当に願いを叶えるつもりがあるのかな?
* * *
「はぁ……はぁ……はぁ……やっぱり体が鈍ってる……」
学校に通いながら帰りに闇と戦う。そんな日常がまた戻って来た。でも入院していたせいか体が思うように動かない。
今日の敵はなかなかの強敵だ。翼を合わせたら10メートルはありそうな鷹の怪物が、鋭い嘴と爪で襲いかかってくる。
それに攻撃しようとしても相手は空を飛んでるせいでなかなか当たらない。戦いが長引く事でジリジリと体力と精神を削られていく。
その一瞬の隙をつかれ、鋭利な爪が私の腕を切り裂いた。
「きゃあぁ──ッ‼︎」
服が破れて右腕から血が吹き出す。傷口は火傷をしたようにジンジンと痛みがはしる。
鷹は空中で方向転換をして今度は私の左肩を狙う。回避するべきか反撃するべきか、一瞬迷ったその時だった……
「キラリと輝くダイヤの光。その力で闇を照らせ!」
何処からともなく透き通った声が聞こえて来た。
「ライトニングフラッシュ!」
目の前が光に包まれて何も見えなくなる。でもそれは鷹も同じで、空中でバランスを崩すとそのまま地面に衝突した。
さらに追撃をするように大量のコインが鷹に向かって降り注がれる。
「ゴールドフラッシュ!」
コインは銃弾の様に鷹の体を貫く。世界全体が揺らいで私たちは元の場所に戻って来た。
「大丈夫? 立てるかしら?」
声をかけられて振り返ると、1人の女性と目があった。品のある佇まいにロングストレートの金髪。そして黄色をベースにしたゴシックドレスはお姫様みたいで可愛かった。
「あっ、えっと……助けて下さりありがとうございました」
思わず見惚れていたため、返事が遅れてしまった。そんな私を見て女性が口元に手を当てて上品な笑みを浮かべる。
「どういたしまして。私の名前は紗央里。貴方のお名前は?」
「恵です。えっと……紗央里さんも魔法少女なのですか?」
「えぇ、そうよ。よかったら家に寄って行かない? 怪我をしてるみたいだし、手当てをするわよ」
「ありがとうございます。でも、すぐに治るので大丈夫です」
魔法少女は大抵の傷が一晩寝れば完治する。もちろん限度はあるけどこの程度なら問題ない。っと思っていたが……
「──ッ!! 痛った……」
私が思っていた以上に傷が深かった。軽く腕を動かしただけで激痛が走る。
「ほら、無理はよくないわよ。遠慮はいらないからついて来て」
紗央里さんは割れ物を扱う様に私を優しく支えると、家に案内してくれた。
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次回も18時頃に投稿します




