14話 恵vs勝
「勝負はこれからよ!」
私は背筋をピンっと伸ばして構えると、剣を強く握りしめた。体中から力がみなぎる。今なら誰にも負ける気がしない!
「いいね〜 面白くなってきた!」
勝も鎌を握りしめると、真剣な表情で武器を構えた。
(行くよ、玲奈ちゃん!)
私は一気に距離を詰めると、剣を振り下ろした。勝も横からエグるように鎌を振る。2人の攻撃が衝突して甲高い音と火花が散った。
勝の技はどれも強烈で、攻撃を受け止めるたびに振動が腕に伝わって痺れる。
「だいぶ疲れてきたみたいだね」
「うるさい! まだ平気よ!」
私は大きく一歩を踏み出すと、勝の懐に剣を突き刺そうとした。でも、直前でやめて大きく後ろに飛んだ。
頭に過った嫌な予感……第六感が今すぐ離れろと叫んでいたから……
「へぇ〜 やるね〜 今すこしだけ反撃しようと思ったんだよね〜」
勝の言う通りあのまま攻撃を続けていたら危なかった。額から汗が吹き出す。私のすぐ後ろには死が待っている。ほんの少しでも気を抜いたらやられる。
「捕えろ!」
勝の体から闇のオーラが溢れ出す。不気味な闇は鎖の様に細く伸びて捉えようとする。
私は以前、玲奈ちゃんがやっていた様に剣を逆手に持つと、全力で走り出した。
「ちょこまかと……すばしっこいな!」
勝がさらに闇の鎖を増やす。スピードも動きもさらに複雑になっていくが、ギリギリの所で避け続けた。そして間合いに入り込むと……
「これでお終い!」
大きく足を踏み込んで薙ぎ払う様に剣を振った。
でも、後一歩の所で届かなかった……
「はっ……‼︎ しまった!」
やばいと思った時には既に遅かった。右足がグイッと引っ張られて狙いが外れる。よく見ると地中から飛び出した鎖が足に巻き付いていた。
目の前の攻撃を避ける事に気を取られて、足元の鎖に気づけなかった……
「さてと、そろそろ終わりにしようか」
勝が私を蹴飛ばす。直ぐに立ちあがろうとしたが足に絡まった鎖のせいで逃げられない。
勝が鋭利な鎌を引きずりながら私の元にゆっくりと歩いてくる。やばい、殺される! 嫌だ、まだ死にたくない‼︎ まだ私にはやるべき事があるのに!
鎖をちぎろうと必死に剣を振り下ろしたがびくともしない。
「どうやらここまでの様だね」
勝が鋭利な鎌を構える。ごめんね玲奈ちゃん……私、ダメみたい……
もう体を持ち上げる体力すら残っていない。せめて一発でもいいから勝に一撃を与えたかったのに……
「最後に言い残す事は?」
「………特にないわ。だからその代わりに貴方の目的を教えて。一体何がしたいの?」
「それを聞いてどうするの? まぁ、せっかくだから教えやるよ。俺の目的はこの世界を闇で覆い尽くす事。そのために闇を消し去る魔法少女が邪魔なんだよ」
「世界を闇で覆い尽くす……そんな事したら何もかもなくなって……また1からやり直しになるんだよ!」
「あぁ……そうさ。でも別にいいじゃないか。この世界は失敗なんだから……さてとお喋りはもういいかな?」
私は死を覚悟すると、目を強く瞑った。お父さん、お母さん、親不孝な娘でごめんなさい。実里……ダメなお姉ちゃんでごめんね……そして玲奈ちゃん……願い事を叶えられなくてごめんね……
「これで終わりだ!」
カーン!っと金属同時がぶつかる甲高い音が響く。おかしいな……いつまで経っても痛みが来ない……恐る恐る目を開けて見ると……
「大丈夫? 恵ちゃん」
ブロンドヘアーがよく似合う大人の女性……天音さんが私を守る様に鋭利な鎌を受け止めていた。
「天音……どうやって拘束を解いたんだ?」
「恵ちゃんのおかげよ。貴方が戦いに夢中になったせいで私を縛り付ける闇が弱まったのよ」
天音さんがスッと手を差し伸べる。私はその手を掴むと、無理やり体に力を入れて立ち上がった。
「ちっ、勝負はお預けって事だね」
勝の周りに黒い靄が発生する。その靄は勝を包み込むと、まるで初めから誰も居なかった様に消えてしまった。
* * *
「玲奈……ごめんね、間に合わなくて……」
天音さんは玲奈ちゃんの前で膝をつくと、手を合わせて目を閉じた。
「玲奈ちゃん……」
私も同じように地面に膝をついて手を合わせた。あんなに元気で明るくて優しかったのに……今はその面影がどこにも無い。どうしてこんな事に?
もう2度とあの楽しかった日は戻ってこない。そう思うと胸が締め付けられて苦しい。気がつくと私は天音さんの腕の中で子供みたいに泣き叫んでいた。
「恵ちゃん、よかったら今日は家に泊まって行く?」
「………すみません、大丈夫です……」
私は涙を拭いて首を振った。辛いけどメソメソしている訳にはいかない。玲奈ちゃんの願いを叶えるには私がしっかりしないと!
「ならいいけど……気をつけて帰るのよ」
「はい……ありがとうございます」
私は最後にもう一度だけ玲奈ちゃんの顔を見ると、体の痛みと心の痛みに耐えながら自宅に向かった。
* * *
「ただいま……」
「おかえりお姉ちゃん……って、どうしたのその体!?」
妹の実里は私を見ると、顔色を変えて飛んできた。
「誰にやられたの? 一体誰がお姉ちゃんにこんな酷い事をしたの!」
実里はまるで自分の事の様に怒りを露わにして小さな体を震わせる。
「大丈夫だよ実里……お姉ちゃん少し疲れたから休ませて……」
私は壁に体を預けながら階段を上がり、自分の部屋に向かった。ベットにダイブすると、深く深く体が沈んでいく。今日はもう疲れた……何もしたくない。
軽く目を閉じると、さっきの戦いが頭の中で再生される。もし天音さんが来てくれなかったら私も間違いなく死んでいた。
私が弱いせいで玲奈ちゃんがあんな事に……全部弱い私がダメなんだ……
玲奈ちゃんの夢を叶えるには、誰よりも優秀な魔法少女にならないといけない。そのためにも力がもっと欲しい!
「恵……あまり自分を追い込んだらダメだからね」
ミトがぴょんとベットに飛び乗って私に寄り添う。
「心配してくれてありがとうね。でも、これからは玲奈ちゃんの分まで頑張るから!」
「うん……ボクも出来る限りのサポートはするよ」
ミトは曖昧な返事をすると、バレないようにソッポを向いてため息をついた。
(今の恵は玲奈と同じ道を進もうとしている。このままだといずれ彼女の体にも限界が訪れる……)
「恵……今日はもう休んだ方がいい。疲れているだろ?」
「そうだね……」
私は玲奈ちゃんから託されたスペードのカードを取り出して胸に当てた。でも、意気込む私とは対照的にミトは辛そうな表情をしていた。
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次回も18時頃に投稿します。




