表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/159

堂坂 柚木1

 堂坂どうさか 柚木ゆずき、31歳。

 若葉市民病院の女医である。


 夫とは2年前に死別したシングルマザーである。


*    *    *    *


「そろそろ帰ろうっと。」


 私はデータ入力の終わったパソコンを閉じると立ち上がって帰宅する準備に入る。


 いつもなら娘を気にして慌てて帰る時間だが、今日は母親が娘を預かってくれていた。


「ん〜〜。」


 腕を伸ばすと声が漏れる。


「さて、どうしよう。」


 娘は母親の家にお泊まりするので明日までは自由な時間があるのだ。


『そろそろ本気で再婚を考えたらどう?』


 母親から再婚を勧められていた。

 娘の事を考えると再婚した方が良いのかもしれない。


「簡単に言ってくれる‥」


 別に再婚が心底嫌というわけではない。ただ単純に出会いがないのだ。


「はぁ〜」


 思わずため息が漏れる。

 出会いがない以外にも問題があるのだ。

 死別した夫の事を引きずっていた。

 夫も医師をしていて病院で知り合っていた。お互い実家から結婚しろと急かされていた事もあり、ほぼ恋愛をせずに結婚したのだ。

 その後、また実家からの突き上げで子供を急かされて‥。

 よくよく考えると夫の姓行為は数回しかない。しかも愛し合う感じではなく、まるで治療の一つのような感じであった。

 娘が生まれたからずっと姓行為はなかったし‥。

 夫から愛してると言われたことは一度もなかった。


 そんな事を考えていると再婚する気がどんどん弱くなるのであった。


「何処かに私を愛してくれる人が現れないかなぁ‥。」


 この場に誰もいないので我ながら大胆な事を口にしていた。


「再婚かぁ‥。」


 とりあえず医師は絶対にパス。

 夫の実家は一族医師だったが愛想も悪く、夫が死んでも誰一人涙を見せなかったのだ。それもあって医師のイメージは悪かった。

 私の好みだと‥

 603号室の男の子かな。

 ルックスも良いし、気遣いも出来て好感がもてた。

 夫とは違って私の目を見て話してくれる。

 じっと見つめられると医師の立場を忘れて恥ずかしく感じてしまったのだ。


 診察の時に見た、あの身体‥。

 高校生であの筋肉。

 夫とは違う‥


「あーーー!」


 私は頭を掻きむしる。

 どうしても夫と比べてしまう。

 まるで夫が亡霊のように付きまとう。


「誰か、忘れさせてくれないかなぁ‥。」


 願望を口にしてしまい虚しくなるのであった。


*    *    *    *


「よし!呑んで帰ろう。」


 死んだ夫の事ばかり考えてしまい、気分が沈んだのでお酒でも呑んで忘れようと思った。


 支度も済んだので帰ろうとすると、ふと603号室の彼が頭に浮かでしまう。


「ちょっと、のぞいて行くか‥」


 その判断が私の運命をかえるとは思いもしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ