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全裸

 1人でシャワーを浴びていると、お姉ちゃんが背中を洗いに来てしまう。

 振り返って確認したわけではないが、確実に全裸だと思われる。

 それだけでも面倒なのにさらに岩井さんの声まで聞こえてきてしまう。


 これって、ヤバくない?

 姉弟で全裸でシャワー浴びるって‥。

 変な誤解をされる危険性がある気がする。


 ここは冷静に対処しなければ‥。


 俺は言い訳を試みる。


「あっ、これはその‥

 姉の服が濡れてしまうので、服を脱いだわけで‥

 決してイヤラしい事が目的ではないというか‥」


 我ながら苦しい言い訳だ。


 いや、岩井さんなら真摯に対応すれば分かってくれるはず。


 俺は岩井さんと目と目を合わせて話そうと振り返る。


「アンタも全裸かい!」


 何故か全裸な岩井さんに叫ばずにはいられなかった。


「はぁ?

 全裸で何が悪いのですか?

 これが看護師の仕事ですよ。」


 岩井さんがキリッとした表情でキッチリ答える。胸もアソコも隠そうとせず、堂々としながら。


「いや、看護師さんだからって脱がないですよね?

 絶対おかしいです!」


 どう考えてもおかしい。


「それは、貴方の常識ですよね?

 そもそも素人の貴方が看護師の仕事を全て把握してますか?

 看護師だって仕事で全裸になります!」


 岩井さんが迷いのない表情で応えてくる。


「いや、全ては把握していませんが‥

 でも全裸にならなくても‥

 ビニール製の何かを着るとか‥」


 あれ?

 俺の方がおかしいのか?


「ビニールの何ですか?

 この病院は貧乏だから、それを買う予算がないんです。

 もう一度言いますよ。

 この病院はお金がないんです!」


 え?そうなの?

 こんなに綺麗で患者さんも多くて??


「それでしたら、男性の看護師の方に‥」


 俺は諦めない。


「貴方、それ本気で言ってます?

 男の全裸が見たいですか?

 全裸ですよ?

 貴方の背中を洗うときに、アレが貴方の身体に触れるのですよ?

 え?

 まさか!?

 そっち??」


 最後には岩井さんが何か驚いたものを見たような表情になってしまう。


「いやいやいや、俺はノーマルですよ!」


 疑われてしまったので全力で否定する。


 が、一瞬何故か樹の顔が頭をよぎってしまう。


「え?

 今、何か想像しませんでした?」


 岩井さんは妙に鋭かった。


「別に‥」


 誤魔化すのが下手だった。


「あっ、何か思い当たる事があると‥」


 岩井さんに完全に疑われてしまっていた。


「ストップ。」


 俺と岩井さんのやりとりをずっと静かに聞いていたお姉ちゃんが口を開く。


 良かった。

 これで岩井さんをシャワールームから追い出せる。

 さぁ、お姉ちゃん!

 いつもの強気発言で岩井さんを追いだすのだ!


 しかし、期待のお姉ちゃんから放たれる言葉は期待通りではなかった。


「正、今の話を詳しく聴かせなさい!」


 追及者が1人増えてしまう。

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