外人
お見舞い品を買うのに手間取ってしまい、正へのお見舞いに行くのが予定より遅れてしまっていた。
私は急いで正が入院する病院に向かった。
病院の入り口で見知った顔を見つける、橘樹だ。
少し前にお見舞い品を相談した相手。
「今から?」
橘樹が私を見つけて話しかけてきた。
「うん。
橘は、正に会えたみたいだな。」
橘の嬉しそうな顔見れば一目瞭然だ。
その後、面会時間の制限もあるので橘との会話を早目に終わらせると正の病室を目指した。
ただその時、橘から一言伝えられていた。
「病室に茜さんがいるからね。」
予測はしていたが、実際に居ると聞くと嫌な汗をかくのであった。
* * * *
病院に入ると案内にしたがって入院患者のいる病棟を目指した。
病棟の入ると面会時間が残りわずかなのでお見舞いに来た人が帰るところを何度も目撃し、かなり焦っていた。
目的の階に付くと、すぐにナースステーションで声をかける。
少し目つきの悪い女性と目が合うと彼女は私に聞こえるように発言する。
「げっ!外人!」
ハーフの私を見て様々な反応を見てきたが、ここまで露骨に嫌な顔をするのは珍しかった。
「ちょっと、岩井さん!
私、外人はパス!
相手してあげて。」
目つきの悪い女性は私が目の前にいるのにも関わらず、平然とパスなどと言ってくる。もう、こっちから願い下げだ!
目つきの悪い女性から指示されて岩井という女性がやってくる。
こちらの女性は私を見ても嫌な顔を見せず、逆に笑顔で対応してくれた。
ただ、渡された紙に訪問先を書き込むと僅かだが表情が崩れたのだ。
ん?
いま確かに嫌な顔をしたような‥。
気のせいかなぁ。
その後、岩井の案内で正の病室に向かった。
コンコン
岩井が扉をノックすると返事が返ってくる。
「どうぞ。」
女性の声だ。
岩井が扉を開けると、入り口のすぐ近くに朝日奈茜が立っているのであった。
* * * *
「ごめんなさいね。
正、寝ちゃったみたいで‥。」
正が眠っているという事で場所をラウンジに移動していた。
朝日奈茜に謝られてしまう。
「別に謝られる事ではない。
正は病人なんだから、眠るのは当たり前だ。」
私の言葉に朝日奈茜は少し驚いているように見えた。
「正を起こして欲しくないの?」
朝日奈茜が問いかけてくる。
「起こす?
いやいやいや、そんな事は望まない。
そもそも押しかけたのは私の方なので。」
私の言葉に朝日奈茜の表情が明るくなる。
「貴女、見かけによらず優しいのね。」
何故か、朝日奈茜に褒められてしまう。
「別に普通だろう‥」
何だろう‥
多少馬鹿にされているような気分だが、朝日奈茜に褒められて少し嬉しく感じる。
その後、朝日奈茜とラウンジで色々と話して過ごしたのであった。




