寝たふり
薬の影響なのか何度も眠気が襲ってくるので、寝たり起きたりを何度も繰り返していた。
気持ち良く眠っていると、何やらベッドの周りが騒がしいことに気がつく。
看護師さんが起こしているのかと思って目を開けると‥‥お姉ちゃんと看護師さんと樹が何やら口論を行なっていた。
え?
修羅場?
きっとロクでもない内容だろうと思い開けた目をすぐに閉じる。
うまく誤魔化せたかと思ったが、お姉ちゃんには通じていなかったらしい。
「正‥
おはよう。」
俺が起きたと確信して、挨拶をしてくる。この流れは寝たふりが通じない流れのようだ。
ここは覚悟を決めて、起きることにする。
「お、おはよう‥。」
多少ぎこちなかったが、きちんと挨拶をする。
「正、大丈夫!」
お姉ちゃんとの会話中に樹が話を遮ってしまう。
ギロッ
お姉ちゃんの目が睨みつける。
「だ、大丈夫だから‥。」
樹はお姉ちゃんに睨まれているが後ろからなので、その事に気がついていない。
逆に俺はそれを直視しているので恐怖でしかなった。
「でも、ボクのせい『大丈夫!すぐに退院出来るから!』」
樹がお姉ちゃんの目の前で自分のせいで俺の病気が悪化したと言い出しそうになって、慌ててそれを誤魔化す。
ヤバい、ヤバい、ヤバい。
樹が家に来たことを悟られるのはマズイ。
ここは何としても誤魔化す必要がある。
「お姉ちゃん、ちょっと喉が渇いたかも。
何か飲み物を『はい、お水です。』」
今までずっと黙っていた看護師さんが絶妙なタイミングで水を差し出してくる。
おい!邪魔すんなよ!
思わず看護師さんを凝視する。
ポッ
俺に凝視された看護師さんが顔を赤くする。
いや、見つめたわけじゃないからね!!
照れる看護師さんに呆れるのであった。




