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覚悟

乙羽side


「妹よ、お前に覚悟はあるか?」


 いつものようにお姉ちゃんが変な事を言いだした。


「覚悟って?」


「貞操を捨てる覚悟だよ‥。」


 お姉ちゃんが病院の待合室でとんでもないと事を口走る。

 周りの人に聞こえてないか不安になって確認するが、誰にも聞かれてなかったようだ。


「ちょっと、どういう事?(小声)」


 冗談にしてはタチが悪いので、語尾が強くなる。


「ターゲットが弱ってる。

 これはチャンスなんだよ。

 鴨がネギしょって、弱って寝ているんだ。

 襲わない手はないだろ?」


 お姉ちゃんが頭のおかしな事を真顔で語っている。


「え?

 まさか!?

 夜這いするつもり?(小声)」


「正解!」


 そのドヤ顔の姉にイラッとくる。


「それって犯罪じゃぁ‥(小声)」


 馬鹿な行いはいつもしているが犯罪行為を行うなら止めなければならなかった。


「え?犯罪?

 違うよ。

 好きな人に夜這いするのは合法だ。

 だから問題ない。」


 馬鹿な姉でも犯罪と言われると慌てるようだ。


「好きな人ではなく、好きなもの同士の間違いじゃない?(小声)」


 さらに間違いを指摘する。


「違う違う。

 好きなもの同士なら夜這いにならない。

 それはただのイチャイチャだ。

 あ〜もう、お前は私の指示に従えばいいのだ!」


 とうとう怒りだす姉。

 こうなったら手のつけようがない。


「わかった。

 でも、行為をするのはお姉ちゃんだけよ。(小声)」


 私の言葉にお姉ちゃんが驚いた表情を見せる。


「え?

 無理。

 まずは妹がするの。

 で、痛くなかったら私がする。」


 妹で様子見しようとする姉にイラつく。


「何で私が先なの?

 お姉ちゃんの後がいいよ。(小声)」


 最悪、怖がって逃げだす姉の姿が想像出来てしまっていた。


「やだ。

 そもそも妹が先って本に書いてあった。」


 でた!

 苦し紛れに嘘をつく。


「ねぇ、それはどんな本かな?

 薄い本じゃないかな?

 学校にある本かな?

 私が騙されると思ってるのかな?

 ねぇ、答えて?

 早く?

 はら?」


 小声にするのを忘れる程、私は怒っていた。


「そうじゃない!

 私たちは双子だ。

 喜びも悲しみも共有すべきだ。

 今回の夜這いは楽しいことじゃないか!

 その楽しいを先に大切な妹に譲りたい。

 いつも苦労をかける妹へのせめてもの償いだ‥」


 お姉ちゃんが涙をながす。


 あ〜お姉ちゃんは優しい。

 私は何でこんな優しいお姉ちゃんを疑ったのだ。

 ヨシ、お姉ちゃんの期待に応えないと!



乙羽side


 私の話を聞いて目に涙を浮かべる妹。


 チョロいな‥。


 作戦が上手くいって嬉しくもあるが、こうも簡単に騙されると妹を見て不安になるのであった。



岩井咲side


 待合室で大声で騒ぐ高校生を見つけたから注意しようと近づくと、とんでもない事を聞いてしまう。


 え?

 今、夜這いって言った??

 ちょっとマジで辞めてほしい。

 ただでさえ野良ナースのことで頭がいっぱいなのに‥。


 私は事が起こる前に止めようと決意する。

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