岩井 咲1
岩井咲、24歳。
若葉市民病院の看護師である。
専門学校で国家資格に合格し、今年からこの病院に勤め始めていた。
* * * *
「岩井さん、ちょっとこっちにきてくれる?」
「岩井さん、お願い!」
「岩井さん!」
今日も朝から看護主任の浜田さんから鬼のようにコキ使われていた。
「岩井さん、603号室のバイタルチェックお願い!」
でた!
他の人の担当なのに何故か私に振ってくる無茶振り!
はいはい、行けばいいんでしょ?
「では、603号室に行ってきます。」
浜田に作り笑いを見せつつ、移動を開始する。
あ〜面倒。
私はテンションを下げながら603号室を目指す。
あっ、でもよく考えたらラッキーかも。
603号室に入院した子、結構イケメンだったし年下好きの私にはドストライクだったわ。
浜田のせいでダダ下がったテンションをイケメン効果で払拭させる。
コンコン
ノックして、603号室に入室する。
「!!!!!!」
そこで私が目にしたのはベッドで眠る男の子と、その傍に立つピンクのミニスカナース服の女性だった。
いやいやいや、今どきそんな看護師いないから!
看護師はスカートではなくズボンです。
いつの時代の人ですか!!
クッ
クソスタイル良いなぁ!
羨ましい!!
同性の私ですら、その姿を見るとドキドキさせられる。
さて、困った。
何て声をかける?
①「こんにちは。」
②「え?何でナースがここに!」
③「朝日奈さん、検温しますね。」
①は平凡だし‥
②はセンスないかなぁ‥
③のあえて無視は面白いと思うが‥
悩ましい‥。
よし、決めた!
私は覚悟を決めて声をだす。
「コスプレですか?」
あ〜、やっちゃったー。
思わず嫌味を言ってしまった。
あっ、でも意外にいいかも。
私はミニスカナースの返答を待った。
「正、検温しましょうね〜。」
コ、コイツなかなかやるな!
完全な無視ではなく、私のお株を盗むような返答とは‥。
突然現れたライバルに心が躍るのであった。




