負けられない女の戦い2
樹の立候補が可能になっただけなのに、教室にはリレーのパートナーに決まってしまったかのような空気が流れはじめる。
もちろん、そんな事を易々と許すはずもなく‥。
「ちょっと、何にパートナーに決まったような顔してるの?
ただ、立候補しただけでしょ?」
十和が大きめの声を出して樹を牽制する。
「えー、ここはボクになる流れじゃない?
坂田さんは無粋だね。」
樹は穏やかな口調で十和を睨みつけ、十和もお返しとばかりにそれに答える。
二人がバチバチと火花を散らしていると、今度は別の人物を口を開く。
「先生!
立候補している中で一番足が速いのは私だよ。
もう私でいいじゃん!」
慈愛那は余裕の笑みを浮かべながら立ち上がると自己主張を始める。
「確かに、一番速い人でよくない?」
「他の競技も決めないといけないし、速い人でいいよ。」
クラスの中に賛同する者がちらほら出てくるのを見て、慈愛那は勝ちを確信し拳を握りしめる。
だが、この戦いはそんなに簡単ではなかった。
「先生!!
勝つことがそんなに大事ですか?」
「お姉ちゃん!?」
永野紅羽が突然口を開いたので、妹の乙羽がビックリしてしまう。
「先生はクラス対抗リレーの目的を知ってますか?
そう!答えは走り切る事です。」
紅羽はゆっくりと立ち上がると、先生の回答を待たずして語り始める。
「足が速ければ良いわけではない。
たとえ足が遅くても、出場する事に意味があるのです。
先生はオリンピックの精神を思い出して下さい!」
「お姉ちゃん、オリンピックは関係ないと思うよ。」
乙羽の言葉は姉には届いていない。
「勝ち負けなんて関係ない。
走る事に意味があるのです!」
「いや、対抗戦だから関係あるよね?」と皆んなが思ったのであった。




