負けられない女の戦い1
「男子は朝日奈に無事決まったから、次は女子を決める。
誰もいないだろうけど、立候補する人いる?」
全然無事じゃないけど‥。
思わず苦虫を噛み潰したよう顔になる。
「ん?
立候補がこんなにいるのか?」
担任は誰も立候補する者がいないと思っていたらしく、驚いた声をあげる。
俺も一緒に走るパートナーが気になったので、立候補した人物を確認する。
坂田十和、岩田渚、風間慈愛那、永野紅羽、永野乙羽、鉄千のいつもの6人。
ここまでは正直予想出来ていた。ただ親友の橘樹が手を挙げた事にはかなり驚かされた。
それは担任も同じようで‥。
「樹くん。
勘違いや間違いじゃないよね?」
「先生、樹さんとお呼び下さい。
あと間違いでも勘違いでもないです。
ボクは正式に正のパートナーに立候補します。」
樹は何故かコチラに振り返り、俺の目を真剣に見ると、まるで宣言するかのように発言する。
リレーのパートナーだよね?
樹が言うと別の意味に聞こえてくるよ。
樹の発言にクラスが大騒ぎになる。
「ちょっと、静かに。」
担任が騒ぎを鎮火させる。
「樹さん、申し訳ないけど‥」
「先生。
体育祭の資料をよく見てください。
資料の一番下の方を。」
担任の言葉を遮って、樹が資料をよく見るように指示する。
「え?
資料??」
担任は言われるがまま、資料を確認する。
「ジェンダーに配慮‥
いや、職員会議ではそんな話は‥
でも書いてあるってことは‥」
担任は下を向いてぶつぶつ呟きはじめる。
そして結論が出たのか、顔を上げる。
「樹さん。
あなたの立候補を認めます。」
担任の言葉に終始真剣な表情だった樹が笑顔になるのであった。




