負けられない戦い4
実の姉が弟の知らないところで暗躍した為、リレーには運動部が出られない状況になってしまう。
「あっ、出られないのは運動部だけだから安心しろ。」
担任がどうでも良い情報を口にしている。
クソッ、運動部が出られないだと!
こうなってくると、いよいよ選ばれてしまう可能性が現実味を帯びてくる。
否、まだこのクラスには山田がいる。
アイツは俺と同じぐらい走るのが早い。
ここは心を鬼にして山田を推薦するしか‥。
俺はゆっくりと手を上げようとする。
「山田くんって、足早くなかった?」
ナイスなタイミングで田中さんが山田の名前を口にする。
ナイスだ、田中さん!!
「山田?
山田は弓道部だろ。
だから運動部は駄目だと言った。
ちなみに水泳部の山﨑も剣道部の工藤も柔道部の石橋も駄目だから。」
え?まじ??
禁止なのは陸上部だけじゃないの??
弓道部はいいじゃん!!
俺は苛立った為、思わず担任を睨みつけてしまう。
これが悪手だった。
担任は何故か俺の目を見ると、ウインクしてくる。
何故にウインク??
嫌な予感がする。
「他に足の速い奴はいないのか?」
担任は喋りながら何故か俺の背後に立つ。そのせいで生徒たちの視線が俺にあつまる。
視線を避ける為、下を向く。
教室の中に沈黙が流れる。
このまま刻が経てばいいと思っていた。
「あ、朝日奈くんが良いと思います。」
「俺も正が良いと思う。」
「おっ、正がいたじゃん!」
「正は帰宅部だし、問題ないね。」
クッ、完全に大勢が決してしまう。
いや、まだだ。
俺は最後の反撃に出る。
「き、帰宅部は運動部です。」
俺の言葉に騒いでいた生徒が一瞬で静かになる。
「リレーの男子は朝日奈に決定な。
朝日奈、宜しく。」
「はい。」
俺は元気なく返事するのであった。




