お願い2
「お父さん!
少し落ち着いて。」
「はい‥‥」
美羽の少し厳しい声色にテンションダダ下がりで返事をかえす。
「別に私怒ってないからね。
その‥‥お父さんが興奮してくれるのは嬉しいから‥。
ただ大事な話だし、少し落ち着いて。」
「はい!」
私のテンションの下がった声に美羽がフォローしてくれる。
あ〜優しい娘だ。
「それで、お願いなんだけど‥
家賃は自分たちで払うので、あるマンションの部屋を借りて欲しくて‥。
その‥他の人に取られたくなくて‥」
美羽の話を聞き、すぐに頭の中が仕事モードに切り替わる。
「具体的に場所を教えてくれ。
すぐに動くから。」
言葉を発しながら、具体的な手順を考えだす。
「うん、電話を切ったらメールするね。
‥‥‥借りる理由を聞かないの?」
美羽が心配そうな声で尋ねてくる。
「理由?
別に聞く必要はない。
俺は美羽を信じている。
まぁ、小さい頃から仕事ばかりでかまってあげられなかったから‥。
美羽にお願いされて嬉しいよ。」
美羽に正直な気持ちを伝える。
「‥‥ありがとう。」
美雨の涙声に思わず、うるってきてしまう。
「結果はすぐに知らせるから。
では、またな。」
自らも涙声になるのを誤魔化す為、無理やり電話を切る。
美雨からの初めてのお願いに感動しつつも‥
パンッ!
自ら頬を叩いて気合いを入れる。
「さて、動くか‥」
プライベート用のスマホを机に置くと、仕事用のスマホを操作する。
* * * *
部下たちと呑んでいるとスマホに着信がある。
「誰だよ、こんな時間に‥」
プライベートの時間を大事にしているので邪魔をされて不機嫌になるが、表情された相手に酔いが一気に覚める。
「え?何で社長??」
待たせてはいけないのですぐにでる。
「すまんな、こんな時間に‥」
社長がいきなり謝ってくる。
これは一大事だ!
「いえいえ、全然大丈夫です!」
「ちょっと頼みたいことがあってな‥
今からメールで物件を至急押さえてくれ。
金ならいくらかかってもかまわん。」
ん?
物件??
会社を買収するの間違いでは?
「わ、わかりました!
今すぐにでも動きます!」
「宜しく頼む。」
社長が電話を切る。
「ふぅ〜。」
思わずため息を漏らすのであった。