夜這い1
「寝てる?」
姉の紅羽が妹に確認する。
「ちょっと待って!」
妹の乙羽が立ち上がるとベッドに眠る父親の身体を揺らして、眠っているのかを確認する。
「うん、グッスリ眠ってる。」
妹は父親が眠っていることを確証する。
「熟睡してるな。」
姉の紅羽が眠る父親の顔をつねったりして遊んでいる。
実は妹の乙羽は姉に隠し事をしていた。
普通、ここまで熟睡するはずがない。
乙羽は父親に一服盛っていたのだった。
* * * *
「さぁ、行くぞ!
夜這いの時間だ!」
紅羽が腕を突き上げて気合いを入れる。
「しーー
お姉ちゃん、声が大きい!!」
乙羽は姉の口を慌ててふさぐ。
「すまん、すまん。
ちょっと興奮してしまって‥
それでは、いざ行かん!」
紅羽が小声で話しかけてくる。
「大丈夫かなぁ‥」
乙羽は不安そうな顔で姉の後を追うのであった。
* * * *
「ストップ!」
紅羽が妹に指示を出す。
妹は疑問に思いながらも姉の指示に従い動きを止めて身を潜める。
コツコツコツ
ちょっと先の方で人の歩く音が聞こえてくる。
もし姉が止めてなかったら、今の人と遭遇していたてまあろう。
姉の勘の鋭さに感心するのであった。
* * * *
「こっち!」
紅羽は途中から妹の手を引いていた。
正直、妹がトロイからだ。
誰にも見つからず、正の元に向かうミッションに挑むためである。
「お姉ちゃん、いつ道を覚えたの?」
気になるから尋ねてみる。
「いつって‥、さっきだよ。」
姉から衝撃的なことを聞かされる。
姉は部屋から出た時、廊下に貼られた案内図を眺めていた。
しかも数秒だ。
え?
あの短い時間で覚えたの??
姉の恐ろしいまでの集中力に驚かされるのであった。