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優しさを見つける物語

その優しさを私に向けてほしかった、と諦めていたのですが...事態は私にご都合主義でした

作者: 橘みかん

手に取っていただきありがとうございます♪

「エレノア。」


「アレン。」


休み時間ごとにエレノアの席にやってくるアレン。

私は無表情に会釈して、ロッカーに教科書を取りに行く。

席に帰ると、この時間のために持ってきた本を開く。


エレノアは私が最も嫌悪する少女。


私の席の前の少女。


どうして?


どうして、アレンは、よりにもよってエレノアを選んだの?


他の人であったなら私は心から祝福できただろう。


なのに、なのに!

よりにもよって、エレノアを選んだアレンを、私は恨みたい。






私はリリアンナ。

一応ながーく続く伯爵家の長女。

厳しい教育を受けてきた、自称生粋のエリートである。


エレノアは、田舎の伯爵令嬢。

頭もよく、口調は柔らかく、お淑やかで、髪型にも化粧にも気を使う、令嬢かくあれ、という令嬢だ。


私とは大違い。


清潔感だけを意識して束ねた髪。

議論となれば歯に衣着せず、お淑やかさのかけらのない。

化粧なんて、学園のない日ーービジネス上の付き合いがある時でないとしない。

分厚い瓶底眼鏡。最近やっとコンタクトにした。


本当に私とは大違い。


でも。

私は、きっと、このまま過ごす。


エレノアと私は、同じ物を好む。

例えばアレン。

例えば宝飾品。

例えば文房具。


同じような私たち。同じように過ごす私たち。


優秀な令嬢であるという矜持が、我々の嗜好を同じくする。





アレンに激しい恋をしているかといえばそうではない。

朗らか、公平。気遣いができる。気さく。

同年代の中で一つ大人であり、優しい彼と、友人であれるだけで私は嬉しかった。


世話焼きで、器用。


その優しさを独り占めしてみたいなあ、と思ったことはあるけれど、本気で考えたことはなかった。


アレンが、アレンの好きな人を見つけて、その優しさを注ぎ込むのも、当然だと思っていた。


だから!

だから私は、アレンが好きな人に告白すると効いた時、さっさと自分も彼氏を作ろうと思った。

きっとアレンは、自分が彼女にかまうときに、私のことを気にしてしまうだろうから。

優しすぎるんだ、アレンは。


実際彼氏はすぐにできて、一年ほど付き合った。

性格の不一致で別れて、何の因果か、私は今、エレノアとアレンのイチャイチャを見せつけられている。


エレノアが「ふふふ。」と笑う時。

私は無表情で本を読んでいる。

羨ましそうな顔をしていたらどうしよう、そう思いながら、無表情を作る。


私は女友達と爆笑するけど、エレノアはいつでもはにかんで笑うだけ。


そりゃエレノアに軍杯が上がるでしょ。


知ってる。

知ってるけど、私は学園内でもそうなりたくない。


だから。

エレノアが好きなアレンが、私を好きなならないことは当然で。

万が一エレノアとアレンが別れても。

私とアレンが付き合うことはない。


ねえどうして。


エレノアなんかより綺麗な女の子はいっぱいいる。

エレノアなんかより賢い子はいっぱいいる。

エレノアなんかより爵位が高い子はいっぱいいる。


ねえどうして。


知ってるよ。

エレノアだからよかった、んでしょ。


エレノアじゃないとダメなんでしょ。


知ってるよ。

知ってるもん。



2人の仲を引き裂くなんてことはしたくない。

いくらでも方法は思い浮かぶし、多分私は現在進行形で2人の仲を引き裂く悪役だろうけど、でも。


ガタリ。


私は席を立った。


すかさず近づいてきた従者に耳打ちする。


「アレンとの縁談は断るようにお父様に伝えて。リリアンナは同情には縋りません、と。陛下の側室になります。」


アレンの父は侯爵で、私の人脈と能力を買ってくれていた。好色な陛下に目をつけられて、側室の打診を受けた時、うちにアレンとの縁談を持ちかけてくれた。


現在この国に側室は10人。愛人の数は30人以上と言われる。お手つきの数なんて、誰も把握していないんじゃなかろうか。


若い私を側室にするのは不憫だと、私を擁護する声もある。


私はそれを利用して、さらに人脈を広げた。


だから。


そんな私は。


哀れなんかじゃない。







「アレン・エドルガー卿。」


私はふわりと微笑んだ。

取り引きしていた商人も、貴族も、手のひらで転がす、微笑み。

芯を感じさせる淑女の微笑み。

エレノアなんか同じ土俵に立たせない。


フルネームで呼ばれたことに私の真剣さを感じ取ったのか、アレンはすぐに振り向いた。


「すまない、エレノア。」


ついてこようとするエレノアを手で制し、アレンが立ち上がる。


「ごめんなさいね。少し彼をお借りするわ。」


「リリアンナ様...アレンに何をなさるおつもりですか...!」


私を悪者にしたいの?


でも無駄よ。


私はもう、「陛下のモノ」だから。


無視して去ろうとする私に、エレノアはさらに言い募る。


「アレン様を傷つけたら、たとえリリアンナ様でも許しませんよ...!」


馬鹿じゃないの。


私は、今から、アレンを、傷つけるの。


優しい彼に、一生癒えない傷を、刻みつけるために、呼び出したの。


エレノア。あなたと私は似ているけど違う。

私は、嫌味っぽくて、素直でも明るくもない。


私は、人の気持ちを踏み躙ることも、できる。


だから私はアレンには相応しくない。


友情と恋の間にアレンは存在する。


だから。

私はアレンに恋をしたことにして、アレンに告白してアレンに一生消えない苦い後悔を刻みつける。


私は自分で決めたこの恋を終わらして、子供で、自分らしく振る舞っていた時間を終わらせる。








「呼び出してごめんなさい、アレン。」


「久しぶりに声をかけてきたな、リリアンナ。」


「だってあなた、エレノア様にかかりきりじゃない。」


話の滑り出しは順調。


「私の席の前でエレノア様といちゃつくのだから、もう。」


アレンはすごく身長が高い。

私は廊下を歩きながらアレンを見上げる。


「ねえアレン。」


「どうした。」


こうやって彼と並んで歩くのは久しぶりだ。

1年前までは普通だったのに。


「私、あなたとの縁談を断ったわ。」


アレンは一瞬、歩みを止めた。私が振り返ると、すぐに追いつく。


「フルシチャス家から婚約の打診でもあったのか?」


私はフルシチャスの息子...私の元彼を思い出した。


「いいえ。彼とは別れてるわ。......覚悟を決めたの。」


「まさか...。」


今度こそアレンは歩みを止めた。


「ええ。陛下の側室になろうと思うの。」


「おい、」


「案外楽しいと思うわ。陛下はお金持ちだし、側室となれば私は私の頭脳を国政に発揮できる。今までやってきた環境活動や教室も、もっとやりやすくなるわ。」


あーあ。

エレノアなら言わないだろうな、こんな言葉。


いっつもこんなことをすらすら言ってしまう自分は、本当に、ダメだ。

好きな人に好かれようとする努力もしていない人間だ。


でも。


それでも。


「アレンに伝えておきたいことがあったの。」


アレンを見上げる。


「私はあなたのことが好きだったの。今までありがとう。...そして、私が死んでも、私のことを忘れないでね。」


時が止まった、と思った。


アレンが何も言わなくて、息苦しい。


「おまえ、さ。」


アレンがため息をついた。


「そう言うことはもっと早く言えよ。」


「どう、して?」


空気が張り詰めている。


「いいじゃない、どうせ私は陛下のモノになるんだから!」


「リリアンナっ!!」


溢れる涙なんて知らない。


私はリリアンナ・フォン・ブリューゲル。ブリューゲル伯爵家の長女。


したたかで傲慢で美しい才女。


そんな私に、今からなる。

私を殺して。














側室の輿入れは、葬式のような雰囲気だ。

キラキラしい馬車が私を乗せて、空虚な城に私を運ぶ。


私を出迎えた王は、太ってはいないが、引き締まってもいない。中肉中背の男だ。年齢は61。


「お迎えいただき光栄に存じます、陛下。」


私はドレスをつまんでお辞儀した。


「そなたがリリアンナか。待っていたぞ。」


王は早くも鼻の下を伸ばす。

そして私の体を撫で回す...気持ち悪い。吐きそう。


でも。


私は王の側室。

法律が決めている。

私の体が王のモノだと。


だから。


私は心だけは自由に。

仮初の初恋を想おうと、していた。


アレン...。

アレンは侯爵の息子で、彼自身も伯爵位を持っている。

この場にいるのは、不自然なことではなかった。

むしろ自然なことだった。


でもどうなのよ。

普通、自分に告白してきて、自分が振った女が、不幸になる結婚をしようとしている。

そんなの見に来る?

ちょっとは気まずいとか思わないわけ?

ほんっと何なのよ、あいつ。


正直見損なった。


それでいい。

だって私たちは別々の、人生を歩むのだから。


側室は日陰の身だもの。

ふん。


私は花が咲き誇るような笑みを作る。


「リリアンナは幸せですわ。陛下に求められて。」


上機嫌な王に言葉を重ねる。


「どうか陛下、リリアンナのことを可愛がってくださいまし。リリアンナは陛下のために存在するのですから。」


思ってもいないことを言うたびにすり減る心に、見ないふりをして、私は王に抱きついた。





物語であればヒーローがいて、可哀想なヒロインのために謀反を起こしたりしてくれるけど、もちろん現実世界にヒーローなんていない。

謀反を起こすなんてリスクを誰も背負いたくないし、神にも等しい王に背くなんて誰もできない。

革命なんてまやかし。

みんな息を潜めて、恐怖の終わりを待つだけ。


私はかわいそうじゃない。

哀れでもない。

そんな人間になりたくない。



「リリアンナ様。陛下がお越しです。」


侍女がそう告げて去っていく。


陛下が入ってきて、扉が閉まる。


今日は見張りも伯爵家の人間なので、邪魔は入らない。

お父様も、私が何をするか薄々気づいていたのだろう。

口が硬い屈強な兵士をつけてくれた。


「陛下!お待ちしておりましたわ!」


私は王に駆け寄る。


「陛下、侍女が用意してくれたのです。いかがですか?」


私はホットワインを陛下に渡す。


「これは実家が産地のスパイスですわ。この味を飲むと、わたくしは安らかな気持ちになるのです。」


そう言って、私のものと王のものに振りかける。


「うふふ。私と陛下の未来に。」


機嫌の良い王にワインを飲ませる。

もちろん私も飲み干した。


「少しピリリときますでしょう?これがそのスパイスなのです。」


一緒に地獄に落ちましょう、陛下。

さようなら、アレン。




「いけません、エドルガー卿!陛下は今お休みです!」


「急を要するのだ!どけ!」


「いけません!どきません!」


「殺すぞ!」


アレンの怒鳴り声が聞こえる。


意識は朦朧としているけど、ドタドタと騒がしくて、アレンが怒鳴っているのがわかる。


扉が蹴破られて、複数人が入ってくる。

...来ないで。

...ブリューゲル伯爵家の長女が王を殺したと、暴かないで。


ねえ、お願いよ。


このまま安らかに逝かせてちょうだい。


「ダメだ。陛下は助からない。それよりもリリアンナだ。」


目が霞む。



オエッ。



無遠慮な手が私の口内に入る。


貴族なら誰でも知っている、毒を飲んだ時の応急処置だ。


でもほんとに。

お願いだから。

綺麗に逝かせてほしいのよ。


生き返ったところで、私の身分は王家の側室。

次の王に引き継がれるだけ。


私の体は王のモノ。










私は小さな部屋に軟禁状態だった。


小窓からは花畑が見えて、家具も良いものが揃えてある。

王殺しの容疑者にしては良い扱いなのは、私が王家の側室だから。もうちょっと理由がありそうだけどね。


王妃は王太后になるし、愛妾はお役目ごめん。側室だけが囚われたまま。

なぜなら側室は、貴族令嬢であり、有能な者が多いからだ。


「リリアンナ様。アレン様がお越しです。」


無表情の侍女が告げる。


私は寝台から起き上がった。

正直まだ椅子に座れる状態ではないのだが、まあ、容疑者である。寝台のままなんて許してもらえない。


程なくしてアレンが入ってくる。


「リリアンナ。体はどうだ...?」


「まあまあ。最近は起きてる時間も増えたわ。」


アレンはこの事件をきっかけに学園を辞めて、執務と事件の捜査にあたっているらしい。


「悪かったわね、アレン。あんなに通いたがっていた学園を辞めさせてしまって。それにこの部屋も。本当はもっとひどい部屋に押し込められる予定だったのではなくて?」


「学園については構わない。元々いつ辞めるか悩んでいた。あそこで学ぶことはないからな。」


アレンは紅茶を口に含む。


「どうやらスパイス入りではなさそうだ。お前とと心中するのは大歓迎だがな。」


「あら?私は陛下と一緒に死にかけたのよ?」


アレンは私を軽蔑するかしら。

嘘つきで見苦しい女だと思うだろうか。


「知ってる。お前たち2人に毒を持ったのはエレノアだ。」


「エ、エレノアですって...?!」


嘘をつけ。

私が、私の手で、王に毒をもって、殺した。


何を言っているのだ??


「エレノアが殺したと言うことにしたんだ。お前ならわかるだろう?エレノアの家は田舎。犯人にしやすいじゃないか。」


「な、何を言っているの!?」


思わず机に手を叩きつけて立ち上がる。

紅茶が揺れて溢れそうになった。


いけない。


私...リリアンナ伯爵令嬢としたことが...。


早く座り直して、新しいお茶を、


くらり。


いきなり立ったからだろうか、めまいで体が傾ぐ。


「おっと危ない。」


アレンの長身が私を抱えた。


「無理をさせたか。本来まだ座れる状態じゃないんだな。」


アレンは私の返事を待たずに私を寝台に運んだ。


そして自身の椅子を引っ張ってきて腰を下ろし、私の髪に触れる。


「やめて...。私は王家のモノなのよ...。」


弱々しい抗議は黙殺され、アレンは口を開く。


「お前は勝手に誤解したかもしれないけど、俺はエレノアと付き合っていたわけじゃないよ。」


「ちょ、っと。それは流石に、エレノア様に不誠実、」


「黙って聞いて。」


アレンの鋭い瞳に気圧されて頷く。


「エレノアはさ、お前を殺そうとしてたわけ。だから、学園内では一応1番強い俺が、エレノアについて、エレノアの邪魔をしてたの。そしたら余罪が出るわ出るわで、もう退場してもらおうとしたわけ。」


「じゃ、じゃあ...アレンが動いていなければ、私は死んでいた??」


「だろうね。ったく。クラスメイト殺そうなんて、頭が狂ってるよ。」



私も...私も。

エレノアを殺せば、アレンが私を見てくれるのか、考えたことがあった。


そして。

きっと私を見てくれはしないと思って、ただ、ぼんやりと、想像するだけだった。


私がアレンを思う気持ちは友情で、憧れで、少しの小さな恋愛感情だった。


だから私は、今アレンを見ても、友情以上は感じない。


だから私は、アレンを好きだと思い込んで、恋をするという憧れに、ケリをつけた。


この二つの相反する感情が私の中で混ざり合うけど、結局私は王家の持ち物だから、感情なんて必要なくて、ただ、自分や自分の家族が処罰されなかったことを喜び、無難に生きていくのだ。


本当にアレンは優しい。

ただのクラスメイトに、優しい。


その優しさを勘違いできればいいのに。

勘違いして、舞い上がって、一喜一憂できればいいのに。


顔に出ないように気をつけながら、私は言葉を紡ぐ。


「アレン。私は命拾いしたみたいね。ありがとう。」


「いいや。当然のことをしたまでだ。とりあえずお前の嫌疑は晴れたから、もとの部屋に戻っていいぞ。」


そう。それを伝えにきてくれたのね。


ったく。

自分に告白してきた女に、そんなこと、冷静な顔でよく言うわね。少しくらい気まずそうな顔したらどうよ。


元の部屋に戻れって言うのは、次の王に抱かれろ、ってことよ。


優しくて、素敵で、無神経なのに、憎めない。


あーあ。

こんなやつ、好きにならなければよかったのに。








「リリアンナ様!新王陛下が、今日の夜伽にリリアンナ様をご指名になりましたよ!」


侍女が嬉しそうに報告するが、私はいまだに寝台の住人だ。とても夜伽なんて無理である。


「お断りしてちょうだい。」


「いいえ。もうお越しになっています。」


「何ですって!?」


叫び声を上げた私は悪くない。


「陛下が女性と夜を共にするのは今夜が初めてです!とても光栄なことですよ!」


侍女はそう言って扉を開ける。


「リリアンナ様。陛下がお越しです。」


私が王を殺した時と同じセリフ。同じ動作。


頭を下げている私の元へ王がやってきて、扉が閉まる。

2人きり。


「初に御目通りいたします、陛下。陛下の側室、リリアンナでございます。」


私は右足を後ろに引いて、礼を取ろうとした。


「まだしんどいだろう。」


あら、声がアレンに似てる。


うん。この人ならきっと好きになれる。

許せる。


「いいえ、陛下。どうかお気遣いなく。」


そういえば誰が王になったのだろう。

第一王子は存在を秘されて貴族の家に預けられていて、第二王子は死んでいる。

多分第一王子が王位を継いでいるはずだが、なんせ、側室には全く情報が入らないのでわからない。


「ったく。」


呟き方がアレンと一緒で笑いそうになる。

私は、私を捧げる人を、アレンと思い込みたいようだ。


王が私を抱きあげ、私を寝台に下す。


え?


え...。


ちょっと待て。冷静になれ。

不測の事態には慣れているはずだ。うん。


可能性その一、王がアレンとそっくりさん。

世の中似た顔の人が3人いるらしい。

ありえないことじゃない。


可能性その二、アレンは実は王子だった!

ああ、これが一番妥当だわ。


うん。

やられた。


「やけに殊勝じゃん、お前。お気遣いなく、だって。」


あっはっは。


「しかもさー、俺に告白して逃げやがって。」


え、そこほじくります?

いやぁ黒歴史でして。


「適当に俺のこと思い出にして去ってくし。好きなら婚約したらいいのに。ったくリリアンナは、悪い子だ。」


悪い子。

それが、色気を孕んでいて。

爽やかなアレンからは全く想像もつかないような妖艶さで。

私はノックアウトされた。


「勝手にエロ親父の側室なんかになって。自分まで死のうとするなんて、許さない。」


「...っ!」


アレンが私にのしかかる。


「俺は、優しい人間じゃないよ。優しき振る舞う俺を見て、リリアンナが俺に好意を持つから、そう振る舞っただけ。俺が優しくしたいのも、大切にしたいのも、お前だけ。お前を守るためなら、俺は、誰にでも優しくしたし、殺せたよ。」


不審死の相次いだ学園。

私たちにとって暗殺は身近だ。

だから今更。何も思わない。


「側室は暇を出して、お前を王妃にするよ。」


ねえ、教えて。


あなたは私のことが好きなの?


お願い。


お願い。


私の実家の使い勝手がいいから、なんて言わないでね。


エレノアの代わりだと言うのもやめてね。


あなたのその優しさで、真実を隠して、私が好きだから私を愛するって言ってね。


隠し通してね。


「また、だ。どうせ疑ってるんだろ。」


だって...わからない。

私たちは貴族だから。

優しい人だと思ってたアレンだって、したたかで非情な面を持っていたと知ったから。


私を使い捨てたっておかしくないから。


「愛してる。ずっと気になってた。気位高いのに優しくて、実は繊細で。貴族としての義務と自分の生き方に挟まれて、苦しみながら道を模索していたことも知ってる。」


「恨んで...ないの?あなたの父親を殺したのは、」


「お前がやらなきゃ俺が殺してた。何であのタイミングで俺が入ってきたと思う?」


「まさか...。」


「エロ親父を殺すためだよ。あの時は緊張した。王を殺した俺を見て、リリアンナに怯えられたらどうしようかと。」


この国で暗殺は、社交手段だ。

少なくとも、私たちのような、上級貴族の間では。


「もうすべてから守ってやる。だから俺に愛されていてくれ。」





おぎゃあ、おぎゃあ!


「生まれました、陛下!可愛らしい女の子ですよ!」


侍女の声に私は朦朧としていた意識を戻した。


「女の子、だと...?」


アレンの声に体がこわばる。


一昨年長男を産んだがやはり、王家としてはもう1人2人王子が欲しいのだろう。


「ア、レン、」


ごめんなさいね、と言う声はアレンによってかき消された。


「何と可愛い!可愛すぎる!リリアンナに似て瞳は紺で、髪はマロンブラウンか。成長したらリリアンナのような美人になるんだろうなあ。生誕祭を開こう、そうだ、名前だ、名前は......。」


残念だけど私はそれほど美人じゃないから。

多分彼女もそんなに美人にはならない。

平凡顔だから化粧映えはするだろうけど。


ぶつぶつと名前を考えるアレンを見つめていると、不意にアレンと目が合った。


「お疲れ様、リリアンナ。新しい命をありがとう。」


私の額に口付ける。


「愛してるよ。」











【とある田舎の伯爵家の当主の手記】


私の娘は手を出してはいけないものに手を出してしまった。いけない、あの少女は、いけない。

あの少女に手を出そうとした者は全員、非業な死を遂げる。あの少女に告白しようもなら一族郎党路頭に迷う。

あの少女がいけないのではない。

あの少女のバックが、アンタッチャブルなのだ。

ああ。娘はもう2度と帰ってこない。

ああ。恨みますぞ、陛下。

私はこれでも娘を愛していたのです。

けれども...これも貴族の定め。

人を殺そうとすれば自分が殺されることもある。

ああ。愚かな我が娘はそれを理解しなかった。

かわいいかわいい私の娘。

父もすぐそっちへいく。

悲しまなくていいぞ。寂しくないからな、エレノア。

安らかに眠れ、





血みどろの犠牲の上で、日々は進む。

生き残りたいなら、人を陥れよ。

それか自分を殺せ。


あなたはそれでも、上流階級に憧れますかーー?

お読みいただきありがとうございます♪

橘みかんと申します。

さて、今回、アレン、エレノア、リリアンナには明確なモデルがおります!なんと、なんと!私の身近なイチャラブカップル!彼らは別にここまで物騒じゃないんですよ??

ちょっとナーロッパ風にして、ちょっと誇張したらこうなりました(一体どうしてそうなった...!?)

お楽しみいただけましたでしょうか?

ちなみに、近い将来、エレノア救済ストーリーを予定しております。伯爵様、よかったね...手記はフェイクで済みそうだよ...

最後にもう一度。ここまでお付き合いいただきありがとうございます。面白いと思っていただけたらぜひ、評価をお願いいたします。

また、いつも誤字報告ありがとうございます。本当に本当に助かっています。

疑問、改善点、思ったことなどぜひ感想いただけたら嬉しいです。

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