9.忘れ物しないようにね
松島を後にした一行は一路仙台駅へ。車は渋滞もなく快調に進んでいく。帰りの新幹線の時刻には充分余裕を残して仙台駅に到着しそうだ。そして、その時がやって来た。小野寺は仙台駅西口のペデストリアンデッキへの登り口そばに車を停めた。
「はーい、お疲れさん」
「小野寺さんもお疲れ様でした。ありがとうね」
「忘れ物しないようにね」
それぞれに荷物を持って車を降りる。
「じゃあね」
「小野寺さんも気を付けてね」
小野寺が車に乗り込み仙台を後にした。それを見届けた一行は仙台駅へ。
「駅で買い物する? まだ時間に余裕はあるけど」
「そうね…。一旦、どこか座れるところはないかしら」
「それなら、あの辺りでお茶飲みしようか」
新幹線の改札フロアにはいくつもの飲食店が並んでいる場所がある。そこを覗いてみたけれど、満席だったりで入れそうなところが見つからなかった。
「ここ、入れるよ」
本田が空いている席がある店を見つけた。
「4人ですけど大丈夫ですか?」
「少々お待ちください」
店員が席を確認しに行く…。そこである疑問が生まれた。ん? 4人? 5人ではないのか? すかさず純子が突っ込む。
「ねえ、本田さん。4人じゃなくて5人だよ」
「あ! そっか。自分を数え忘れてた。じゃあ、ダメだ」
本田はそう言って、一人で納得すると、店員が戻って来るのさえ待たずに店の前から立ち去った。まあ、自分を数え忘れることはよくあることだ…。いや、無いな。これはただのアホだ。
「しょうがないですね。それでは、その辺に荷物を置いて皆さん、買い物に行ってくださいな。私が荷物を見ているので」
「僕はもう買い物はないよ」
「私も」
「じゃあ、もう新幹線乗り場に入っちゃおう。中には広い待合室があるから」
「そうですね」
こうして、一行は新幹線乗り場の待合室へ移動することにした。
改札を抜けると、すぐに土産品売り場が立ち並ぶエリアがある。
「あー、ずんだだ。仙台名物はいろいろ買ったから、あとはずんだだな」
そう言って博子は売り場の中へ。本田もや柳瀬もつられるように入って行く。梶浦と純子は待合室の席に荷物を下ろした。待合室は混み合ってはいるものの5人が座れるスペースは十分にあった。
「ちょっとホームに行ってくる」
梶浦は荷物を置くとホームに上がった。目的は決まっている。
出発時間が近づくまでの間、道中に撮影した写真をグループラインで共有したりしながら時間をやり過ごした。そんな中、純子と博子の会話の中で“おはぎ”という言葉に梶浦が反応した。
「あっ! おはぎ、小野っちゃんの車に忘れてきた」
「えー、本当に?」
次は19:00に投稿されます。それが最終話です。最後まで宜しくお願いします。