5.日本三大名瀑とおはぎと元祖若手会
「さて、このあとどうする? もう一回青葉城行く?」
さっきは素通りした青葉城。仙台に来たのなら正宗公の像を見ずに帰るわけにはいかない。
「今、工事中で正宗公の像は見られないよ」
柳瀬がそう告げると、それが見られないなら行ってもしょうがないということになった。
「じゃあ、もう秋保に行く?」
「そうだな」
「だったら、秋保大滝に行きたい」
「よし! そうしよう」
秋保大滝は出発前から純子が行きたいと言っていた場所だ。そのこともあって市内観光は取りやめて、一路秋保に向かうことになった。
山間の道を秋保に向かってひた走る。東京では散ってしまった桜が仙台では今まさに満開を迎えている。秋保温泉のホテル街を抜けて更に名取川を遡り大滝に到着。ここに来てぽつりと雨が落ちてくる。
当初の予定では初日のこの日は松島へ行く予定だった。ところが天気予報で雨だったので予定を入れ替えて初日に仙台観光をして秋保に入ることにしていた。その仙台観光もあっさりスルーして大滝までやって来た。
華厳の滝・那智の滝に並ぶ日本の三名瀑の一つ。先ずは秋保大滝不動尊に参拝。そこから階段を降りて滝見台へ。その途中から流れ落ちる滝の音が聞こえてくる。雨もいつの間にか上がっている。
「すごいな!」
それはまさに絶景。さすが日本の三名瀑と言われるだけのことはある。見ていると滝つぼに人影が。
「滝つぼに行けるのかな?」
「ほら、こっちに滝つぼに降りる道があるよ」
「降りるってことは帰りは登るんだよな」
「えっ? 行くんですか?」
「せっかくだから、行ってみようよ」
誰ともなく歩き出す。ところが少し進んだところで登りになった。それを見た途端、行く気が失せてしまった。
「やっぱりやめよう。こんなところ、行ってられない」
滝つぼへ降りることをあっさりと諦めてしまった一行は、お休み処“不動庵”でしばし休憩することにした。久しぶりに会った者同士の近況などが話題になると思いきや、小野寺と本田が近況とは何ら関係のない蛇だの熊だの猪だの田舎あるある話で盛り上がる。それでも、飽きることのない時間と空気に包まれた。
大滝を後にした一行はこの日の宿“秋保温泉ニュー水戸屋”を目指す。
「もう、チェックインできるね」
「その前に“さいち”で買い出しだね」
“さいち”とは地元のスーパーマーケットで“秋保おはぎ”で有名な店だ。テレビで何度も取り上げられている。そのおはぎと部屋飲みの時のつまみを買っていくことになっている。
「どうだろう? この時間だとおはぎは売り切れているかな?」
「あー、そうかも知れないね」
店に着くと、真っ先におはぎの棚へ向かう。数段あるおはぎの棚はがら空きになっていて、わずかに残ったおはぎを柳瀬は購入した。
「明日の朝、また寄る時間はあるかしら?」
博子に尋ねられたので梶浦は出発時間を確認した。朝、来られるかどうかはここが何時に開店するかにもよる。翌日は松島での遊覧船の乗船時間が決まっている。開店時間は9時だった。
「9時開店だから大丈夫だよ」
「良かった」
買い出しを終えた一行はここから目と鼻の先のホテルへ向かった。
ホテルに着くとホテルの従業員が出迎えてくれた。そこで予約名の確認。
「○○○○東京若手会です」
そう答えると、ホテルに従業員は宿泊者名簿を確認しているもののなかなか見つけられないでいる。一緒に名簿を覗き込んだ柳瀬が名簿の中にあったある団体名を見つけた。
「これです」
旅行会社が団体名を間違えたらしい。そこには会社の名前さえ省かれていた。
「あ! 元祖若手…会様ですね」
若手という言葉の後に微妙な間を開けた従業員に小野寺が言う。
「あー、どう見ても若手には見えないもんね」
「元祖だから昔はみんな若かったからね」
梶浦もフォローするが、まったくフォローにはなっていない。それを聞いて従業員は笑顔で対応してくれたのだけれど、その笑顔が引き攣っていたのを小野寺は見逃さなかった。
「では。ご案内いたします」
明日は午前10時に更新します。