4.牛タン訪ねて三千里!?
仙台と言えば牛タン。梶浦が中央口改札を選んだのは改札を出てすぐのところに牛たん通りがあるからだ。ただ、既に昼。どの店も行列が出来ていた。
「こりゃあ無理だな。外に行くか」
ということで外の牛たん屋を探すことにして、小野寺が車を停めた駐車場へ行くことに。
「外はいいけど、牛タン屋がどこにあるのか知らねえぞ」
「ナビで牛タンって入れればいいじゃん」
「そうだな…」
そんな会話をしつつ小野寺の挙動がおかしい。
「もしかして、駐車場の場所が判らなくなった?」
「…」
どうやら図星のようだ。来た場所と出た場所が違うからちょっと迷っているようだ。それも仕方がないかも知れない。仙台駅はデカいのだ。それでも何とか駐車場にたどり着き、車を出した。ナビに“牛タン屋”と入力すると、即座に牛タン屋の場所が表示された。
「なんだ、これ! すげぇな」
見るとナビの画面は牛タン屋を示す印で埋め尽くされていた。
「これじゃあ、どこに行けばいいかわからねぇな…。今日はこの後どこに行くんだっけ?」
「瑞鳳殿とか青葉城とかかな」
「じゃあ、取り敢えず青葉城の方に行こう」
ナビの情報を変更する。
「ん?」
表示されたのは静岡の青葉城だった。普段、静岡に居ることも多い小野寺の車だからこその表示なのだろう。しかし、静岡にも青葉城があるとは誰も知らなかった。気を取り直して仙台の青葉城へ向かう。青葉城には“伊達の牛たん本舗青葉城店”がある。助手席の本田がそこを目標にしたようだ。車は順調に青葉城へ近付いて行く。
「あれっ?」
スマートフォンのGPSで位置情報を確認していた梶浦が気付く。
「行こうとしているのは伊達の牛たん本舗青葉城店じゃないの?」
「そうだよ。何とか本舗の青葉城店だよ」
GPSの位置情報は目的地からどんどん離れていく。いったい、どういう入力をしたのか…。
「ここ、さっき通った道だよ」
純子が言う。他のメンバーも窓の外の景色を確かめる。
「本当だ。ここ、さっき通ったな」
すったもんだしながらも、ナビが表示したという牛タン屋にたどり着いた。
「有った! でも、これって…」
そこは牛タン専門店というよりは居酒屋の様な店だった。
「太助もそこに有ったよ」
柳瀬が言う。ここに来る直前に通って来た道から路地に入ったところに、その看板が見えたと言う。太助といえば仙台でも名店に数えられる店だ。これは柳瀬のファインプレーだ。ナビには申し訳ないけれど、せっかく仙台で牛タンを食べるのなら名店の方がいい。
グルメガイドでよく見かける厚切り牛タンとは違って、そこまでは厚くはないけれど、それでも肉厚で柔らかくて塩味が効いた牛タンに定番の漬物、まさに仙台の牛たんだ。そして、驚いたのはテールスープ。ホロホロに柔らかい肉の塊が入っていてスープ自体もすごく美味しい。
これで、仙台での楽しみの一つ“牛タン”を満喫することが出来た。