3.いざ、仙台へ!
日程と行き先が決まってからの梶浦の動きは早かった。仙台の行程と予算書を作る。それをグループラインに流す。それから、宿泊先を秋保温泉に絞って宿を吟味し、それもグループラインに流す。予算も宿も気に入ってもらえると予約の手続きに入る。知り合いの旅行会社にプランを提示して宿と新幹線の切符の予約を依頼した。新幹線の切符は一か月前からの予約になるものの、宿の方はすぐに確保できた。これで、あとは切符が取れたら準備完了だ。
そんなときに旅行会社から連絡が入った。
「全国旅行支援が4月以降も継続されることになりましたよ。宮城県はまだ確定していないんですけど、継続されると思います。3月末での予算次第なので確定するのは4月5日ころになると思います。確定すれば今回の旅行に対応できますよ」
彼の言う通り出発の二日前に宮城県の旅行支援が確定し、割引料金で旅行に行けることになった。
4月7日。東京駅。中央通路の“駅弁屋・祭”の前に梶浦が居た。待ち合わせ時間よりかなり早い。早く来たのは新幹線の車内で飲み食いするものを仕入れるためだ。車内で飲み食いすると言っても道中1時間半程度。そんなには飲めないし、食べられない。取り敢えず、焼き鳥とシュウマイだけ購入して博子と柳瀬が来るのを待った。本田と純子は大宮から合流する。
三人が揃ったら新幹線のホームに移動。間もなく仙台行はやぶさ15号が入って来た。
「さて、行きましょう」
売店で各々缶ビールを買って乗車。はやぶさが動き出す。ビールの缶を掲げる。缶のプルトップを開ける。
「出発進行!」
仙台に向けて、先ずは三人で祝杯をあげる。
大宮で本田と純子が合流してきた。本来全員東京駅集合のつもりだったため、この二人は新幹線の乗車気を持っていなかった。だから入場券を買って乗車してきた。東京駅で改札を通っていない切符が仙台駅に着いた時、自動改札機を通過するはずもなく、車内で乗務員に確認したところ、有人改札で大宮までの乗車券と一緒に提示すればいいとのことで一安心。
「では、改めて乾杯!」
その頃小野寺も仙台に向かって車を走らせていた。秋田から仙台への道中は奥羽山脈を横切って来ることになる。いくつものトンネルをくぐっては抜けて。
「うひゃ~! まだ雪が残ってる」
冬の秋田は雪深い。それでも今年は春がやって来たのが早かったせいか雪解けも早かった。だから、どんなに東北の山の中だとはいえ、まだ雪が残っていることに驚いた。
大宮から仙台まではノンストップ。そして、間もなく仙台に着くという頃に小野寺からラインが入った。
『今、仙台駅の新幹線改札口に着きました。南改札と中央改札のどちらから出てきますか?』
『中央改札から出ます』
『了解です。改札口前に仁王立ちしてます』
それから間もなく、はやぶさは仙台駅に到着した。言った通り改札口の外には小野寺が腕組みをして待っていた。
「新幹線の到着時間が過ぎても、なかなか来ないから心配になっちゃったよ」
「あー、僕がホームの喫煙所で一服していたから」
メンバー中ただ一人タバコを吸う梶浦が到着後、タバコを吸う間、他のメンバーも待たされていた。時刻はそろそろ正午を指す。
「先ずは昼メシだね」