2.ビューンって行けるところ
日程と行き先の目安が決まったところで集まれる人間だけででも打ち合わせをすることになった。
『打合せには真崎亭をどうぞ』
博子が自宅を打合せ場所に提供してくれると言うので、それに甘えることにした。梶浦はそれに合わせて日光・鬼怒川のプランを打合せのたたき台として用意した。それを事前にグループラインにアップした。打合せは1月末の土曜日に行われることになった。この頃まだ佐渡に居る本田と秋田の小野寺は打合せには参加できないので在京者だけで打ち合わせをすることになった。打合せと言っても日程と行く先が決まっているため、わざわざ打合せすることもないのだけれど、みんなが集まる大義名分になる。
迎えた1月28日。真崎亭での打ち合わせ。結局、打ち合わせに参加できたのは場所を提供した博子と梶浦だけだった。博子は手料理を用意して梶浦を迎えた。
「お久し振り」
そう言って、先ずはビールが注がれたグラスを合わせて乾杯。それから、梶浦が用意したプランを広げて打合せを始めた。
「べたなんだけどね。日光・鬼怒川といったら、結局、こういう感じになるよね」
「そうね…。でも、贅沢を言わせてもらうと、夕食がバイキングなのはどうかな…。せっかくの旅行なんだから部屋食がいいな」
「それはそうだね。まだホテルは予約したわけではないので、ちょっと探してみるよ」
『今どきはどこもバイキングなんだろうけどね』
打ち合わせをしながらグループラインで経過報告をしているので、小野寺が途中で割り込んできた。
『私も暇だったので日光観光について調べてみました。中禅寺湖畔にある英国とイタリアの別荘記念公園は女子旅に人気があるみたいですよ。中にはおしゃれなカフェもあって、湖畔を見ながらお茶をするなんて真崎さんのイメージにぴったりだと思いませんか?』
純子も色々と提案をしてくれる。事前にプランを流しておいた賜物だ。梶浦は旅行会社から調達してきたパンフレットを見ながらホテルの情報を調べ始めた。個室での食事ができるとうたっているホテルも無いではないが…。すると、突然呟いた。
「いっそ、仙台とかどう?」
「仙台か…。それ、いいね! 仙台なら小野寺さんもいいよね」
「日光・鬼怒川当たりなんてどこもみんな行ったことはあるだろうし。とは言っても仙台なら無いかと言えばそうでもないかも知れないけれど、小野っちゃんとの合流を考えると仙台辺りがいいんじゃないかな?」
「いいよ! 仙台。仙台にしよう」
「みんな日光・鬼怒川の頭でいたから、いきなり仙台に決まったって言ったら驚くだろうね」
梶浦は早速グループラインで報告。
『取り敢えず、行き先が決まりました…。仙台です』
途端にメンバーから反応があった。
『仙台楽しみです』と本田。純子からは『みんなで新幹線に乗るなんて贅沢ですね』柳瀬も『仙台は30年振りです』
さらに博子が提案する。
「どうせなら土・日じゃなくて金・土にしない?」
「それはいいかも! 金曜宿泊ならホテル代も安くなるしね」
「梶浦さん、仕事休める?」
「僕はどうにでもなるから。他のメンバーにも確認してみよう」
それも早速グループラインで報告。金・土プランに他のメンバーの了解もとれた。こうして、博子の年女を祝う温泉旅行は4月7日の金曜日~8日の土曜日で仙台に行くことが決まった。
『まさかの仙台! 大歓迎です』
実はこの日東京に居たのだけれど、知人の見舞に行っていて打ち合わせに参加できなかった小野寺からも少し遅れてコメントが入った。
「今日、打ち合わせやってよかったね」
「ホント! まさかこんなことになるとは思わなかったものね」
真崎亭の二人は改めて乾杯する。