少女士官が狙ったチェックメイト
人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第2支局所属特命遊撃士、手苅丘美鷺准佐。
この厳めしい肩書きこそ、今の私を私たらしめているんだ。
母方の先祖に英国騎士がいるからか、私の実家は日本人の割に騎士道精神を重んじる家風でさ。
だから国際的防衛組織の人類防衛機構に適性を認められた時は、「これで正義の為に帯刀出来る」って喜んだね。
そうして実戦部隊の特命遊撃士に正式任官された私が個人兵装に選んだのも、御先祖様に倣ったサーベルなのさ。
騎士には馬が付き物だが、21世紀の日本で乗るには無理がある。
そこで私は馬の代わりに軍用バイクへ跨り、愛刀を腰に横たえて巡回パトロールに日夜勤しんでいるんだ。
その夜も私は気心の知れた同僚と共に、巡回パトロールとして愛車を飛ばしてたんだ。
軍用バイクの頼もしい乗り心地を楽しみつつ、晩秋の夜風を切って疾走感に酔いしれる。
正に巡回パトロールの醍醐味だが、この楽しい気分に水を差す通信が入っちまったんだ。
通信によると、鳳東町に蟻怪人の群れが出現したらしい。
「私達が滅ぼした悪の組織の残党かな、美鷺ちゃん?とにかく急がないと!」
「多分な。飛ばすぜ、京の字!」
併走しているダチに応じながら、私はバイクを飛ばして現場へ急行したんだ。
そうしてダチと共に前線部隊へ合流した私は、戦闘を開始した。
「おらよ!」
前輪で撥ねた蟻怪人の一匹をバイクの重量で圧し潰し、もう一匹を愛剣で切り捨てる。
掃討戦の最先は上々だよ。
「この枚方京花少佐の太刀捌き、見せてあげる!」
京の字の方も好調だね。
レーザーブレード片手に、敵をバサバサ蹴散らしてんだから。
雑兵用に開発されたのか、蟻怪人の戦闘力は控え目だった。
しかし数の多さは厄介だね。
「奴らは蟻だから、女王蟻を殺れば単なる烏合の衆だよ!」
「そうか、京の字!」
言われてみれば、触覚の長い個体が他の蟻怪人に守られてやがった。
どうやら奴が女王蟻らしい。
「よし、私が奴の首を獲る!援護を頼む!」
私はエンジンを吹かし、蟻怪人の群れへ突っ込んだんだ。
護衛の兵隊蟻はバイクの機銃と部下達の突撃銃で既に全滅。
後は丸腰の女王蟻を仕留めるだけだ。
奴が女王なら、私は現代の騎士。
ならば、次の一手は…
「悪いな、大将。これでチェックメイトだ!」
サーベルで両断した女王蟻の身体を轢き潰し、私は兵隊蟻の生き残りに標的を移したんだ。
女王を失った兵隊蟻め…
この私が現代日本に生きる騎士の誇りを見せてやるよ!