Via Dolorosa
『よお、浮かない顔だな。落ちこぼれさん』
「うるさい。僕は落ちこぼれなんかじゃない」
『ああ、そうだなぁ。俺が一番分かってる。お前は才能があるのに努力から逃げてるただの弱虫さ』
「……」
『それで?今度はなんだ?かわいこちゃんに嫌われたか?違うな?ああ、なるほど。自分は辛いのに周りが幸せになっていくって?くっだらない焦燥感だなぁ!』
「くだらないだと?」
『ああ、くだらないさ。まずお前はずっと逃げてきた。全国模試で1番を取るような男がこうして膝を抱えている。で?なんだ?漫画家?小説家?思い描いては笑われて、諦めて積み上げた夢の山だ!ハハッ!』
「うるさい……」
『なのにお前はずっとどこかで諦めていない。諦めていないのに努力もしない。だから周りに抜かされる。当たり前だ。お前は周りよりちっぽけで役に立たない。それだけだ』
「……そうかもな」
『で、だ。その周りのやつらの幸せは、お前が膝を抱えるほどの憧れなのか?俺にはもっと高いところが見える。お前はただ目の前にある手の届きそうな幸せを羨ましがって何がしたいんだ?』
「……」
『もっともっと高い場所でお前を待ってるやつがいるんじゃねぇのか?甘えんなよ。逃げんなよ。そんな手の届くような幸せを羨んで、自分を慰めて、それで満足か?違うだろうが。なあ!今まで逃げてきた分のツケだ。犠牲に出来るもん全部犠牲にしなきゃお前は幸せになんてなれやしねぇんだよ!』
顔を上げれば、涙を流しながら今にも僕に殴りかかってきそうな勢いで怒鳴る俺がいる。
俺は僕と目が合って、ハッとして、声のトーンを落とす。
『少なくとも、こんなところで膝抱えて止まってる時間はねぇ。後悔だの不安だの、そんなセンチメンタルは死んでから墓場でやればいい』
「……そうだな」
『勝てば官軍』「負けるにしてもド派手に」
『いつだって全力投球で』「人生は常にFULL BETの丁半博打」
馬鹿にされたってかまわない。それは譲れない僕らしさだから。