第96話 飲み会
「お財布持った? それ、一番大事だよ?」
「……あり……ます!!」
ジャージのポケットからもぞもぞとお金が入った財布を取り出してレイアに見せる。
「うん。ばっちりだね⭐︎」
レイアも満足そうに頷く。
俺はレイアに口酸っぱく言われながら外出の用意をしていた。
それは今からユウヤ、ソウスケ、キョウヘイと飯を一緒に食べに行くからだ。
これまで4人のうち、2人でギルド内で一緒に飯を食べたりとかは割と合ったけど4人揃ってっていうのは久しぶりな気がする。
ユウヤもキョウヘイもソウスケもあちこちを転々としているからなかなか揃うことはない。
「酔い潰れたら迎えに行ってあげてもいいけど……周りの人に迷惑かけちゃだめだよ?」
「はーい……まぁユウヤとキョウヘイもいるしそこは大丈夫だろ」
そう言いながら心配そうに手を振るレイアに見送られながらギルドを出た。
今回はギルドじゃなくネルトにある酒場で飯を食べることになっていた。
まぁ……ギルドでは話せないことが沢山あるし、こうやってどこかで集合するっていうのも久しぶりにやってみたかったのだ。
集合場所である噴水広場で無事全員集合する。
ネルトの有名らしい酒場に着き、扉を開けるとわっと耳に響くほどの賑やかさがあった。
ギルドの酒場に劣らないその繁盛さはこの店が人気だということを証明していた。
キョウヘイが取ってくれた予約席に座る。
「さて、どれにしようか……」
メニュー表を見ると色々な飲み物がある。
うーん。
どれがいいのかな……
「むむ……」
「イツキ、こういう時はね。とりあえずシュワサワーでいいんだよ」
メニュー表を見て悩んでいる俺にソウスケが言った。
なるほど、伊達に毎回全裸になるまで飲み続けてはいないな。
「そういうもんか……ユウヤは?」
「俺もまかせるさ」
「すいません。シュワサワー4つで」
そういうとキョウヘイは流れるように酒場のお姉さんにシュワサワーを頼んでいた。
ついでに何品か適当に料理を注文していた。
おお、なんという連携プレイ。
するとすぐに手慣れた様子でシュワサワーが卓の上に置かれた。
各自シュワサワーを持ち上げ、コツンと音を立てながら
「「「「乾杯!!」」」」
4人同時に一気にシュワサワーを飲み干した。
その後、料理を食べながら中学生……みんなでバカやってた頃の話で盛り上がった。
馬鹿みたいに笑って、吐きそうなくらい楽しい。
「最近!! リンから呼び出しの頻度が多いんだよ〜!!」
料理も食べて、シュワサワーも何杯か飲んで3人の顔が赤くなって来た頃、ソウスケが愚痴るように叫んだ。
おお、これは酔ってるな。
まぁ、俺自身顔が熱くなっているのがわかる。
多分、俺も酔っている。
「リンちゃんて、ヨームゲンの村で会ったソウスケの師匠だよな?」
確か、桜色の髪したちょっと強気そうな女の子だったような?
めちゃくちゃ可愛い子だったような気がするんだけど。
「いいじゃん。リンちゃん可愛いし。普通に羨ましいんだけど」
「朝までシュワサワーを飲みながら愚痴に付き合わさせる僕の身になってくれ!」
ドン!! とコップを叩きつけながら大声を出す。
でもいいじゃん……美少女と朝帰りなんて……いいなぁ。
「ちなみにどんな愚痴なんだよ……?」
「最近、リリスちゃんに気になる人が出来たって話だよ。あいつリリスちゃんのこと大好きで過保護気味だから語り出すともう止まらねぇー」
「はぁ!? おい!! なんだよそれ!! あ!? リリスに気になる人ぉ!? 誰だよそれ!! ウォォォォォォン!!」
「お、おぉ……まぁ……誰かは……まぁ……うん」
「お前その反応知ってるな!! 教えろぉ!! 今すぐ教えろぉ!!」
「……あーまぁ、リン曰く、情けない所もあるしすごく子供っぽいところもあるしすぐ調子に乗るようなやつらしい……でもリリスちゃんはそんなところも愛嬌だっていうんだってさ」
「は? なんだそいつ……ダメ男じゃねぇか!! リリスは優しいから愛嬌だって言ってくれてるだけだぞ!? ダメダメ!! そんなクソ野郎僕は認めませんからね!! 僕がリリスの目を覚まさなきゃ!!」
俺はそう断固たる決意をした。
「こいつ……リンと同じこと言ってやがるよ……」
ソウスケが呆然としながらそう言った。
「すいません!! ここの一番きついシュワサワー持って来てください!!」
なんなんだよぉ……ちくしょう……こんな思いするなら……草か木に生まれたかった……!!
「……くそ!! そのクソ野郎を見つけ出して全裸で逆さずりにして4人全員で鞭打ちの刑にしてやるぞっ!! これはマスター命令だ!!」
「みたくないね……イツキのそんな姿は」
「甘いなキョウヘイ、俺は時には鬼のように無常になれる男だぞ?」
「いや、鞭打ちされるのはお前……まぁ、いいや。僕もお代わりしよう」
シュワサワーのお代わりをするソウスケをよそに
「なるほど……とりあえずこれが終わったら、お前を全裸で逆さ吊りにしたらいいのか?」
ユウヤがそんな事を言ってきた。
「いやいや、何言ってるんだよ。逆さ吊りするのは俺じゃなくてリリスが気になっているクソ野郎だから」
「ああ、わかっている……つまり、お前を逆さ吊りにするのだろう?」
「……?」
「……?」
「いや、お互いに何言ってるんだ? こいつみたいな顔するなよ」
俺とユウヤのやりとりを見てソウスケが突っ込む。
なるほど、どうやらユウヤはだいぶ酔っているらしい。
「そういえば助手くんはどうなんだよ?」
「俺かい?」
キョウヘイに聞いた。
「そうそう、ユメちゃんとどういった関係で?」
ぶっちゃけ、ヨームゲンで出会った頃から気になっていた。
助手くんってなんだか、その……大人な関係だったりするんだろうか?
あの子もだいぶ可愛くて服装もへそちらしてたりと随分着崩していた……本人のスタイルも言いこともあって目のやり場に困る子だった。
「はは……そうだね……興味が3分くらいしか持たないから目を離すとすぐどっか行くし、マイペースだし失踪しては俺が探しに行き、怪しい薬の実験台にされ……はは」
キョウヘイはごっそりしたようにコップの中にあるシュワサワーを見つめる。
その笑顔は、枯れているように見える。
なんか思っていた感じと違って振り回されているんだな。
……なんか、その振り回されてる感じがキョウヘイらしい。
「そういえば、イツキってルイちゃんとは話してたっけ?」
ソウスケの言葉を聞いてルイちゃんを思い出す。
ルイちゃん、ルイちゃん……ああ、白リボンの子か……
「……そういえばまだ話たことなかったかも」
確か、リンちゃんの妹だって聞いたけど……
なんで話してないんだろう?
ヨームゲンの村でもあまり見かけなかったような?
いや、視界に入ってなかったのか?
「ルイちゃんはユウヤにずっとくっついてるからな……」
「へーそうなのか?」
ソウスケの言葉を聞いてユウヤに聞いてみる。
「自分ではそうは思わないが……確かにルイとはずっと一緒にいる気がする……イツキとならすぐ打ち解けられるんじゃないか?」
「じゃあ、今度見かけたら話しかけてみるか……」
「はーい!! 一番強いシュワサワーです!! こちら度数96%になっておりますー」
「よっしゃ!! 飲んだるでー!!」
「おい馬鹿!! やめろ!! そのまま飲んだらやばいって!!」
気分良く飲もうとしている俺を必死に止めるソウスケをユウヤとキョウヘイは笑いながら見ていた。
そうやって4人で馬鹿みたいに騒いだ。
たまにはこんな夜も……いいよな?
「ふぅー夜風が気持ちいいな〜」
酒場を出て、4人でネルトを散歩する。
あかりはついているが、人の気配は全くない。
3人が並んで歩いているのをついていくような形で歩く。
時々、こいつらと出逢ってなかったら?
なんてことを考える時がある。
正直、出逢っていなければ、出逢っていないで俺は他の友達を探して、見つけていたのだろう。
この世界もさっき言った他の友達を連れて来るのだろう。
そしてこうやって、夜遅くまで話をして同じように共に歩いているんだろう。
正解は何処にもないのだけれど、たった一つはっきりとわかっていることがある。
ユウヤとキョウヘイとソウスケ……こいつらと出逢っていなければ俺の笑った回数はきっと今の半分以下だ。
……だから。
「……なぁ、俺の体のことなんだけどー」
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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