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第85話 命の価値




「ギール様!! 前線が壊滅状態です!!」


「もうあと数分すれば……ここに!!」


「もう持ちません!!」



結界の核の周りに陣を敷いていたギール・ボードウィン・ナックルは騎士団の次々とくる報告を表情ひとつ変えずにただ黙って聞いていた。


ギールはここに来るのは誰かは分かっていた。



(この膨大な魔力、そしてここからでも見える……業火の炎……間違いない)



その確信通りその男はギールの前に現れた。



「……北条ユウヤ」



ギールの赤く鋭い眼光が冷静にユウヤを捉えていた。



「……なるほど、一人でここまで来るとは。期待以上だ」



ギールは理解していた。

北条ユウヤは約1万人あまりの騎士兵達をたった一人で蹴散らしここまで来たのだと。


故にパチパチと称賛に拍手をするギールをユウヤはじっと見つめる。


構えはせず、ただ大剣を片手で持っている。

ギールに対して警戒こそしているが、敵意は持っていない。

そして静かに口を開いた。



「……なぜ、こんなことをする? 今俺たち人間は魔王軍との互いの生存をかけた戦いをしている。勇者パーティの4人もキャメロット家、多くの人々が今この時も全員命をかけて戦っている」



これはユウヤが星川キララに襲撃された時から思っていたことだった。

本来であれば自分たちは互いに協力し、魔王軍と共に戦う仲間な筈だ。

今はこんなことをしてる場合ではない筈だと。


ふむと少し考えるギールをよそに



「う、うおおお!!」


「死ねぇぇぇ!!」



残っていた騎士達が一斉にユウヤに斬りかかった。



「黙れ」



ギールがそういった瞬間、騎士兵の腹部に赤い刻印が浮かび上がる。

それを見た騎士兵は驚きと恐怖で握っていた剣を放し、瞳孔をふらしながらギールの方を見た。

まるで、死に怯えた小鹿のようだった。



「う、うわああ!! ど、どうしてですか!? ギールさー」


騎士兵は取り乱しながらギールの元へ走り出す。

まるで赦しをこう罪人のように。


しかし、騎士兵の叫びも届かず、彼らは心臓にまで響き渡るような轟音をたてながら爆裂した。



「……どうして殺した?」


「単純な話だ。私たちの会話の邪魔をした」


丸焦げになった騎士兵の死体を冷めた目で見ながらギールは吐き捨てた。

ギールにとって自身と父……キッシー以外の価値は軽いのだ。


平気で使い捨てるほどに軽い。まるで消耗品かのように。



「私の役に立たないゴミは切り捨てるだけ、価値がなかった。こいつらの命も存在も。それだけのことだ」



だがとギールは付け加える。



「その力、レギス・チェラムを5大ギルドまでに大きくさせたカリスマ性。北条ユウヤ、お前は価値のある人間だ。その命には価値があるのだよ」



「……違う。価値のない命などありはしない」



北条ユウヤにとって長い命も短い命も善人も悪人も、全てが価値のある人間であり、命なのだ。


故にユウヤはギールの言葉と騎士兵に対する仕打ちに怒りを抱いた。


ここで初めて、ユウヤはギールに対して敵意を抱く。

しかし、ギールにとってはそんなことは関係ない。

価値がある者は欲しい。それだけのこと。

要するにギールは欲しがりな性格なのだ。



「私達ボードウィン家は全人類を統べる王となる。いや、それが在るべき形なのだ。この戦いもその布石だ」



これは最初にユウヤが聞いたなぜこのようなことをするのかと言う問いの答えだ。

ギールは心の底からそう思っている。

全てを統べるのは自分たちで、今この状態が異常なのだと。



「私の下に降れ。何、悪いようにはしない。」



そうギールは手を差し伸べた。



「すまないがそれは出来ない」


「……なぜ?」



本当にそう思っている顔だった。

なぜ、自分の差し伸べた手が払われたのか。ギールには理解できなかった。



「俺の全てはとうの昔に双葉イツキに預けている」


「そうか」


そう一言だけ答えた。

表情に変化はなく、声色も落胆しているようには聞こえない。



「まぁ、最初からお前の答えなんて関係ないが」



ギールの言葉通りユウヤが首を振ろうと関係ない。

欲しいものは必ず手に入れる。ただそれだけ。

今回もそしてこれからも。


ギールの言葉を聞いてユウヤは武器を構え、臨戦態勢に入る。


しかし、その直後ユウヤの感情は揺さぶられた。



ユウヤの前に現れたのはヨームゲン村にいた彼に憧れを抱く少年カトル・カペルだった。


カトルは身体中を震えさせ剣を握っている。



「お前の相手はこの少年だ」



ただ、冷徹にギールは言った。



「説明しておくと、ヨームゲンからキャメロットにこの事態が伝わると厄介なので、抑えさせてもらっている。私は使えるものは全て使う主義でね。駒として用意したのだが……なるほど、期待以上のようだ」



ギールはそう言いながら笑った瞬間、カトルの腹部に刻まれた刻印がユウヤに見せつけるように浮かび上がった。


ユウヤは確信した。

カトルの命はギールによって握られていると。


「この刻印はお前を刺せば解くように設定してある。しかし、1分以内に刺さなければ発動する。おっと、その傷を癒す神器は使うなよ? それを使っても刻印を発動させる」



ユウヤの赤い原石が埋め込まれているネックレスを指差しながら言った。


北条ユウヤは2つの神器を保持している。


ひとつは今持っている祈りの大剣。

もう一つは首からかけた赤い原石が埋め込まれている波紋状の形をしているネックレスである不死鳥の原石。

北条ユウヤの神器は受けた傷を不死鳥の炎をもって癒やし呪い・病から守護され、魔力を神器に放出すると発動できる。




「ああ、そうそう。確かお前は言っていたな。価値のない命はないと。では聞こう」


ギールは再びユウヤに問う。


「自分の命と他人の命、どちらの方に価値がある?」





「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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