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第83話 速攻




「ありゃーやっぱデタラメな強さだねぇ〜」


神崩し・流星を発動させ、隕石群を降らせている双葉イツキを見ながら転換者の一人である林ユウジは言った。


林ユウジはネルトの内部に侵入し、家の天井の上で双葉イツキを見上げている。


ユウジはネルトでナオトとシュウイチを回収した際に双葉イツキの力を目の当たりした唯一の転換者。

ゆえに誰よりも双葉イツキの危険性を理解していた。



「……悪いけど始末させてもらおうかー」



魔力と意識が神崩し・流星に集中している今なら殺せる。

否、今が唯一のチャンス。


そうユウジは確信していた。



(おそらく、彼の首を取りさせすればこの戦いは勝ったも同然だ。北条ユウヤでもない、神崎ソウスケでもない、一ノ瀬キョウヘイでもない、レギス・チェラムの核は双葉イツキだ)



ボウガンを構え、双葉イツキに向け照準を合わせる。


(これで終わり)


「ってわけにはいかないか」



そう呟いた瞬間、猛烈な蹴りがユウジに向かって放たれた。


ユウジは転移でその蹴りを間一髪避け、その人物との距離を取った。



「今日は随分と星が綺麗だ。こういう日はのんびりとしたいよね〜? そうは思わないかい?」



白のポンチョを見に纏い、栗色の髪、中性的な顔立ち、そして張り付いたようなおだやかな笑顔をした糸目の少年がそこに立っていた。



「……一ノ瀬キョウヘイ」



ユウジはその人物を警戒するように目を細めた。



(……レギス・チェラムを5大ギルドまでにした3人のうちの一人か……)



厄介な男に出会ってしまったものだとユウジは心の中でため息をつく。



「……結界の核を破壊しにいかなくて良いのかな?」


「問題ありません。みんなに任せることにしましたから」



一ノ瀬キョウヘイは林ユウジから目を離さない。

互いに沈黙し、間合いを図る。



「やれやれ……しがないおっさんの考えなんてお見通しだったわけか〜参ったね〜」


「そっちには結界の核を守っている転換者が3人もいますからね。一人くらいは守るのではなく、こうして頭を取りにくる者もいるのではないかと警戒していただけですよ」


なんてことのないようにキョウヘイは言った。



(全く……やりずらいねぇ〜こりゃ)



キョウヘイはユウジとの距離を詰める為、足に力を入れ、駆け出した。

ユウジはそれに反応するかのようにすぐさまボウガンをキョウヘイに向け、矢を放つ。

しかし、それでもキョウヘイの進撃は止まらない。


キョウヘイは矢の方向を瞬時に予測し最低限の動きで避けようとした。

しかし、まるで瞬間移動したかのようにユウジがキョウヘイの目の前に現れ、右手でキョウヘイに触れようとしていた。


「っ!?」



キョウヘイは目の前にいきなり現れたユウジに驚きながらも何かをしようとしている彼の右手を払った。



「おっと。これを本能するのか」



ユウジは瞬時に次の一手である蹴りを放つ。



「ぐっ!!」



鈍器で叩かれたような鈍い音と何がが砕ける音と共にキョウヘイは民家へ吹き飛んだ。


あまりの衝撃に民家が破壊され崩壊する。

砂煙を破ってキョウヘイは矢のようにユウジの元へと跳んだ。



(右手はだらんとしている。うん……いってるね)



ユウジの脚はオリハルコンの防具をつけていた。

右手からの攻撃はないだろうと考えているとキョウヘイは射程内ギリギリで右手を動かし、拳を握り、放った。

キョウヘイの腕はすでにオートヒールによる自動治癒で治っていたのだ。



「おっと!?」



ユウジは咄嗟にキョウヘイの拳をガードする。



(っ!? ガードしてるのにも関わらずこの威力か?)



あまりの拳の威力にユウジの体は後ろに吹き飛ぶが一瞬で姿を消し先ほどいた家の天井に立っていた。



「ふむ……確実に折った感触がしたんだが……治癒魔法で瞬時に直したのかな?」


「そういうあなたは魔力でマーキングした地点に転移する能力ですよね?」



互いの反応を観察するように見る。

まるで相手の表情、心を見通すかのように。



(予想通り、彼の能力は転移能力……魔力が付いた弓矢を放ち空間跳躍による転移している。あの弓矢は言わば座標だ)



一ノ瀬キョウヘイは思考する。



(うん。思っていた通り、あの大軍を一瞬でネルトに移動させたのはあの人だな……おそらくあれだけの人数を転移させるには手間がかかったはずだ。それこそ大掛かりな仕込みが……)



キョウヘイにとって大人数の転移させる方法なんて今はどうでもいいことだった。

キョウヘイにとって最も重要なことは



(自分だけではなく、他人も転移させることができるということ)



彼にとって最も警戒すべきは自分がどこかへ転移されてしまうことだった。



(おそらく、一人だけなら簡単な方法で転移させることができるはず。そういえばさっき……俺の体を右手で……)



「右手で触れたりとか?」



ユウジはそう言いながら矢をキョウヘイに向け放った。



(この矢には魔力が込められている!! つまり転移移動が来る!)



ユウジは転移し一気に距離を詰め、キョウヘイの体に触れようとした。



「っ!?」



それを間一髪避けるがユウジはキョウヘイの背後を突くように矢を放ち、キョウヘイの背後に転移する。

即座に背後からユウジの右手をキョウヘイは避けていく。


キョウヘイが拳を放とうにもすでにユウジの姿はなくさらに背後を取られる。



(矢の発射速度が上がってきている……)



キョウヘイの考え通りユウジの速射と転移はどんどん加速していく。

それにより、キョウヘイには正確なユウジの攻撃の予測をより素早くこなさなければならなくなる。

触れようとするユウジの手を弾き、受け流し、瞬時に相手の次のシフト地点を予測する。


林ユウジは一回でもキョウヘイに右手で触れれば勝ち。

一ノ瀬キョウヘイは一回でも判断を誤れば終わり。


二人は真逆の戦況にいた。


そして林ユウジは6発目の矢を放った。



「っ!!」



キョウヘイはすぐさま矢の刺さる方へと視界を移す。



そこには林ユウジは居なかった。


その事実にキョウヘイの目が見張った。



「単純だけど、引っかかっちゃうよね」



魔力を込めた矢を放ったからといって必ずしも転移するわけではない。

転移する速度を上げていったのはこの一発を放つ為、ユウジは右手をキョウヘイに向け放った。



(これで詰みだね)



そう思った瞬間、キョウヘイが右拳をユウジに放ちながら振り返っている。



(っ!? 反応が早すぎる!! まさか、俺の手が読まれていた? さっきはわざと引っかかったのか? このカウンターを放つために)



キョウヘイの目が見張ったのは驚きからではない。

ここが勝負時と判断したためだ。



(これで決める!!)



一ノ瀬キョウヘイと林ユウジ


先に届くのはどちらの拳か。



それは林ユウジ自身が一番分かっていた。



(……あちらさんの方が……早い!)



カウンターの方が早いのは当たり前だ。

ならなぜ林ユウジは防御せず、右手を振るったのか。


それはキョウヘイの思考を制限するため。

林ユウジは他人、または物を転移させるには右手を触れる必要がある。


この思考をキョウヘイの中に植え付けるため。



「おっさんこういう器用なことも出来ちゃうのよ」



6本の弓矢の魔力が線のように繋がり、六角形を作った。

そして力の循環である円環が現れキョウヘイを包む魔法陣となる。



「!!」


(これはーまさか!!)



それはキョウヘイをボードウィン王国付近にまで転移させる魔法だった。


右拳がユウジに届く前にキョウヘイは姿を消した。



「ふぅーなんとかなったか〜」



誰も居なくなった街の中ユウジは一人で安堵の息を吐いた。


林ユウジは複数の策を同時並行で進めていた。


右手と転移魔法陣。



「……ま、無駄に年は食ってないってね」


林ユウジは城壁の上にいる双葉イツキを見上げ言った。



「さて、この戦いを終わらせようか」









「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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