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第82話 魔法使いVS大精霊



「は、はは!! 出た!! 出た!! 出た!! セルシウス!! こいつをころー!?」


氷の結晶となって現れた大精霊セルシウスを見ながらキララは大きく体を揺さぶり高笑いした。

顔にざまあみろと書いてあるみたいだ。


まるで一発逆転出来た様な誇った顔。


しかし、その顔は一瞬で崩れ去った。


「え……? な、何……これ?」


キララの右手はまるで老人のようにシワシワに干からびていた。


まるで生命力が枯渇しているように見える。


そう、これは魔力が不足しているにもかかわらず大精霊を召喚した代償であり、彼女の命が縮まっている証拠だった。


魔力が空になっても魔法は使える。

しかし、魔力の代わりに生命力を失う。


生命力は文字通り命の力。


これがなくなると人は死ぬ。

生命力は魔力の倍以上のマナ濃度があり、魔力は水で薄めたジュースだとすると生命力は原液だ。


たとえ、初級魔法でも生命力を使って放つと天災級の威力になる。


生命力を使うという事は命を削るということ。

死に向かっていくということ。


だから絶対に使ってはいけない。


これは僕達人間の最終兵器なんだと師匠であり勇者パーティのメンバーである賢者リンは言っていた。



「あ……血、力が吸い込まれ……」



キララはみるみるとセルシウスに生命力を吸われ、髪も白くなり痩せ細った老婆になった。



「あ、あ……だ、れかたすー」



まともに立つことすら出来なくなってしまい、そのまま倒れ込み、とうとうその命が尽きてしまった。


呼び主を失ってしまった氷の大精霊セルシウスは暴走したかのように白い光を放ち、力を解放する。


やばい、さっきまでの大精霊は魔力を使って召喚していたから本来の30%くらいの力しかなかったけど……不完全とはいえ、生命力を使って召喚した大精霊は……本来の半分以上の力を持っている!!


結界を……いや結界で防いでしまうと完全に動けなくなる。

防御結界を展開してしまうと攻撃するのはもちろん移動することすら出来なくなってしまう。


それではだめだ。


だから、魔力を纏う。


イメージするのは魔力の鎧。


魔力には3つの運用レベルが存在して、今僕がやったのは2段階目の魔力の纏化だ。


魔力の纏化は身体能力と魔力に対する耐性も爆発的に高くなる。

結界の様に一切の行動が不可能になることはないし、魔力に対してならこちらの方が防御力も高いはず。


だから今の状況はこれが正解……だと思う。


リンなら同じことをしたはずだ。



『状況に適した魔法の使い方をしなさい。とりあえず結界を張って防御は3流のすることよ』



これはリンに何回も言われたセリフだ。


暴走した大精霊の力は天候が極限まで歪められて雪が降る。


最初はちらちらと、しかし次第に雪はその勢いと強さを増し、吹雪と呼べるほどの風を纏った。



「ああああああ!!」


悲鳴がする方へ目を向けると騎士兵達の半身が凍り始めていた。


あるものはすでに倒れ込んでいる。

多分……凍死していしまったんだと思う。



まずいっ!!


このままだとネルト周辺に広がって数時間もしないうちにここ一帯は永久凍土になってしまうだろう。


そうなるともはや全滅どころじゃない。


氷の大精霊セルシウスの姿は髪の長い、気品ある女性の姿をしていた。

しかし、精霊の核が剥き出しになっており、体の半分以上は凍ったままで瞼を閉じで眠っている。


キララが召喚の途中で力尽きてしまったせいなのか?


だとすると倒すのなら今しかない!!

胸の真ん中にある精霊の核を破壊する!!



「ぐっ!? っ!!」



猛烈な吹雪の中、白くけぶく視界の中で一歩、一歩前へと進む。

立っているのも一苦労で油断すると吹き飛びそうになる。


セルシウスに近づく度に冷気が高まり、肌を刺すような痛みが襲う。



「あっ……!! っが!? はっ!!」



ヤベェ……息が出来ねぇ。

今、空気を吸うと肺まで凍ってしまうそうだ。


たった10メートルくらいなのに随分と遠い気がする。



「っ!?」



セルシウスを守るように氷の城壁が反り立った。


……自己防衛本能が働いているのか?


……でも!!



「っ!!っあ!!」



魔力を纏った拳で氷の壁を粉砕した。

普段の僕の拳じゃ絶対できないけど、魔力の纏化をすればこれくらいは余裕だ。



氷の城壁の向こう側には10本の凍てつく刃を従わせたセルシウスだった。

防衛レベルが守るから対象の削除に変わった瞬間だった。



「っち!!」



凍てつく刃が吹雪のに飛んでくる。



一か八か……賭けに出る!!


残っている力全部振り絞り、一気に駆け抜けた。


魔力を纏って身体能力は強化していても動体視力までは強化できない。

だから、あんな数の攻撃を全部交わすのは無理だ。


キョウヘイやユウヤなら避けられたんだけど。



だからなりふり構わず、前に進んだ。


急所に当たった時はその時はその時だ!!



「はぁぁぁぁぁ!!」



走っていく最中、凍てつく刃が腕を掠る。太ももを貫通する。足が砕けそうだ。

全身が痺れ、感覚すら薄くなっている。


だけど、進むことだけは決して止めない。


そして、魔力を手に込める。


何回も何回も使って、僕が一番使い慣れた炎の初級魔法。


ファイヤーボール。




「これでぇぇぇぇ!!」



セルシウスの核に向けて放とうとした瞬間、腹部に嫌な感触がした。



「がっ!?」



ぽっかり穴が空いた様な感じ。

下を向くとセルシウスの手刀が僕の腹部を貫いていた。そして肺が潰れた。


感覚が麻痺しているせいか痛みは感じない。

ただ、代わりに猛烈な睡魔が襲ってきた。


僕の貫かれた腹から氷結の浸食が進んでいく。


なるほど、外からが無理なら中からってことか……


血管を凍らされているような感覚が一瞬で身体中に広がった。



くそ、どうすればー


凍結が広がるにつれ闘う意志はまだ残ってるのに



考える力が失っていく。

身体が凍死していく。

細胞が壊れていく。

意識が薄れていくー


視界は白から黒へ移り行く中声が聞こえた。



『ーすんだよ!! ーで!!全部!!』



全部? 何を?



『こっからひっくり返すんだよ!! オレとお前たちで!! 全部!!』



!!



「がっ!!はっ!?」



思い出した。


あの時のイツキの叫びを。


熱を持った言葉を。


その瞬間、視界が黒から白へと変わった。



そうだ。僕は思ったんだ。


イツキ……お前ってやつは普段バカでおちゃらけて弱くって、すぐ調子に乗って、子供っぽいところがあって。


なのに他人のために頑張れて、一度覚悟を決めたら強くって誰よりも最高にかっこよくて。



すぐ近くにいるのに遥か遠い存在。



僕の一番の悪友。



それがお前だよ。


だから、僕は進むんだよ。

追いかけるんだよ。


お前を!!


隣に立てるようにってな!!



だから


考える力が失っていく?

身体が凍死していく?

細胞が壊れていく?

意識が薄れていく?


だからもう戦えないなんてそんな舐めたこと言ってられねぇよな!!


まだ!! 闘う意志と力は残ってるんだよ!!


だったら!!



全身全霊で勝つしかないだろうが!!



イメージするのは巨大な火……いや! 炎!!


あの時感じた熱く、力強く、全てを燃やし尽くす様な。

僕たちレギス・チェラムの心の炎!!


力を貯めてぶん殴るように僕は愚直に魔力を集中させた。


身体の凍死は進行しているはずなのに身体の奥が熱くて止まらない。



「……ファイヤー!! ボール!!」



炎球を掌に乗せ、腹部を貫かれたまま前に進み、セルシウスの核にぶち込んだ。



「燃えろぉぉぉぉぉぉォォォォォォ!!」



「!!!!!!!!!!!!!!!!」



分かってる!! 分かってるよ!! 僕らが全部ひっくり返すんだろ!?


だったら初めは僕がひっくり返してやるよ!!



炎球はセルシウスの核を燃やし尽くし、セルシウスは氷が割れたように粉砕した。


吹雪がやみ、力尽きたようにそのばで倒れ込む。



「……あ、結界の核は……なんだ」



もう壊れてるじゃん……

壊れた核を見たら力が抜けて空を見上げる。


そんなことを思いながらレギス・チェラムのみんなが遅れてここまで来た。


慌てたようにポーションを取り出している。



レギス・チェラム


空の支配者


お前は僕たちが死んで、一人でこの空を眺めていたのか?


それは……あまりも孤独で。


寂しいな。



だから、今度言ってやるか。


今は僕たちがいるぞってさ。








「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです!


何卒よろしくお願いいたします!

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