第80話 空の支配者
キョウヘイとの作戦の話合いも終わり、俺はネルトの城壁の上にいた。
東西南北から一斉にボードウィンの正騎士団が隊列を組み、ネルトを呑み込まんと包囲している。
いつこちらに攻め込んでもおかしくはないピリついた空気。
上を向いて夜空を眺める。
幾星霜の星が輝く綺麗な夜空。
……空を眺めていると生前の頃を思い出す。
「お前、相変わらず空を眺めるの好きだな」
この声はソウスケか?
そう思いながら振り返るとキョウヘイとソウスケとユウヤが居た。
「各自準備は出来てる。あとは君の合図を待つだけだ」
キョウヘイの言葉に頷く。
「……あれ? リーシャは?」
「そういえば見てないな……でも確認したところ北のみんなの準備は出来ていたようだったけど」
リーシャさん……らしいっちゃらしいけど。
まぁ……いいか。なんだかんだでやることはやってくれるだろう。
さて、それじゃ始めるかと思っていたらソウスケも空を眺めていた。
「……ソウスケ?」
普段なら無視しているところだが、その顔があまりにも儚げだったから思わず声をかける。
うーん、ソウスケくんにはそんな顔似合わないのにな〜
「そういえば、ギルドの名前を決める時もこうして空を眺めてたよな」
「レギス・チェラムの名前の由来か?」
ユウヤも空を眺め、思い出したかのように言った。
その口調はどこか懐かしさを感じさせる。
「そうそう。ギルド名を決める時さ……そういえばイツキって空を眺めるの好きだったよなぁ……って」
確か僕が言い出したんじゃなかったっけな〜と首を捻らせて言った。
こいつの記憶力は鳥以下だからな……あんまり信用できない。
「ああ、それでラテン語で空の支配者って意味を込めてレギス・チェラムにしたんだ」
キョウヘイが続けて説明する。
「……あれ? それじゃあチェラム・レギスにならないか?」
「チェラム・レギスよりレギス・チェラムの方がかっこいいだろ?」
そう言いながらソウスケは笑った。
「……確かに」
4人で夜空を見上げた。
あと何回こうやって、肩を並べて他愛のない話をしながら、同じ空を見ていられるのだろう。
俺の残された時間はあまりないのに。
そう思ったら少し心が寂しくなった。
「……さて、昔話はこれくらいにしてそろそろいこうか」
キョウヘイの一言により、各自持ち場に向かう為歩き出した。
そんな3人をちょっと待ってと呼び止める。
「……この戦いが終わったらさ。お前らに話したいことがあるんだ」
俺の体のことを……
「何それ……フラグっぽいんだけど」
縁起でもないと言わんばかりの顔をしながらソウスケは言った。
「……だが、久しぶりに4人でゆっくりしたいものだな」
「……だね。時間を合わせてやってみようか」
ユウヤとキョウヘイの言葉におうと返す。
そして3人は南・西・東の門へと戻っていった。
またという約束が出来るのは幸せなことだ。
そしてこれはここにいた4人ボードウィン王国に負ける気などさらさらないということを表していた。
「……さて、出来るかわからんけどやってみるか」
夜空を見上げ思い出す。
あの魔法を
そして
俺は天を仰ぎ、呟いた。
「ねーいっくん」
「わひゃ!?」
いきなり耳元でつぶやかれ変な声が出てしまった。
ちょっと!! なんだよ!! 耳元は弱いんだよ!!
ていうか人がせっかく決めようとしてたのに……
「リーシャぁ」
「………………」
俺がそう言うとムッとした顔で見つめてくる。
これは……ちょっと機嫌を損ねてしまったような、そんな顔だ。
「……えと、リーシャさん?」
「………………今、二人っきりだけど」
ああ〜そういえば……いやでもあれ地味に恥ずかしいんだけど。
そんな思いを含みながら視線を送ってもリーシャは待ってますと言わんばかりの表情で俺も言葉を無言で待っている。
「…………………………何か用か?」ミカ」
そういうと満足そうに頷き
「ん。北の核?ってやつ壊すの私一人だけでいいよ。だから残りのみんな南と西と東の核の破壊に向かわせるようにしといた」
「……リーシャ一人でか?」
「………………」
「…………ミカ一人でか?」
「うん。まぁもうみんなにお願いして移動し終わった後だけど」
なるほど、だからリーシャは一人遅れてきたのか。
「大丈夫だからさ、わたー」
「……まぁ、ミカがその方がいいって言うのなら俺は構わないよ。それに多分、何か理由もあるんだろうし」
そう言った途端何故かとても驚いた顔をされた。
全くの予想外と言いたげな顔だ。
しばらく黙り込み。
「……そっか。ふふ」
「何笑ってるんだよ。何か変なこと言ったか?」
「ううん。なんかすごく信じてくれてるなーって思って。嬉しかった」
「え? そりゃ……信じるよ。ミカだから」
「ふーん」
「ニヤニヤするなーほら、任せたぞ。ミカ」
拳を突き出してグータッチを促すと嬉しそうに微笑みながら
「任された」
と手をグーにして突き出した。
トンと触れた瞬間ノイズが入った。
目の前に広がるのは青い空を反射する地面と黄金の剣と白銀の剣を待つリーシャ。
黄金の剣は何処かで見たことがあるような気がした。
『ミカ……あの夜言っていた言葉の意味がわかったよ。それでも、ここでリリスを殺すなら……俺たちの邪魔をするのなら……ここで死んでくれ』
『……私達はもう同じなんだよ……分かるでしょ? 私の願い……叶えてよ。出来ないのなら……ここで死んで』
「っ!?」
なんだ……今の映像は……?
「どうしたの? 未来でも見ちゃった?」
「……え」
「……ねぇ、必ず辿り着こうね」
「辿り着くって……?」
「じゃ、いってくるわ」
リーシャは手をひらひらさせながら去って行った。
なんだったんだ?
未来? 辿り着く?
……いや、今はとにかく目の前のことに集中しろ。
俺は今何をするためにここに居る?
「…………ふぅー……よし!!」
空の支配者らしく、再び天を仰ぎ、思い出す。
あの魔法を
そして
呟いた。
「神崩し・流星」
その瞬間、幾つも、幾つも、満天から無数の隕石がまるで流星のように降り注ぐ。
空から放たれた無数の流星群は轟音と共に空を切り裂き圧倒的な速さと質量で騎士団を蹂躙していった。
俺が放ったのは賢王ミストが使用していた天級魔法である神崩し・流星だった。
「攻め込むぞぉぉぉ!!」
流星群が降り注ぐ中、一才の躊躇もなくレギス・チェラムは3方向に分かれて突き進んだ。
雄叫びを上げながら剣士や格闘家など接近戦を得意とする者は魔法使いなど遠距離の攻撃ができる者の援護を受けつつ結界の核に向かって進撃していった。
さぁ、こっからが俺たちのリベンジだ。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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