第79話 言葉の熱
キョウヘイを中心にしてどう戦っていくのかをみんなで話し合った。
俺とキョウヘイ、ソウスケ、ユウヤの4人を先頭にレギス・チェラムを4分割にして転換者を倒しに東西南北にある4つの陣に突撃していく形になった。
そして4つある結界の核を破壊する。
東がソウスケ、西がキョウヘイ、南がユウヤ、そして北は
「私がいくよ」
不意に隣にいたリーシャが手を上げながら言った。
「マスターは王都に行って何とかしなきゃでしょ? なんかボスみたいなやつ」
リーシャのいう通りだ。
4万の兵と4人の転換者をどうにかして結界を破ってもキッシー王をどうにかしない限りこの戦いは続く。
もちろん俺たち4人もそのことについては分かっていた。
ただ。キッシー王の前に4人の転換者をどうにかしなければならない。
だから、キッシー王についてはひとまずと言った感じではあった。
だけど、リーシャが北の転換者をどうにかしてくれるのなら……
キョウヘイが少し考えこみ、何か言おうとしていたが俺がそれを止め
「……任せていいのか?」
とリーシャに聞いた。
「大丈夫、マスターと同じでさいきょーだからさ。私も」
リーシャは何でもなさそうに言った。
じっとリーシャの顔を見る。
何だろう。リーシャなら大丈夫……そう思わせるオーラが彼女にはあった。
絶対勝てるというか、絶対なんとかしてくれるしてくれるような……そんな不思議な気持ちにさせる。
「……そっか。じゃあ任せた」
「任された……ふふ」
俺の返事にリーシャは俺しそうに笑う。
「何笑ってるんだよ」
「なんか、通じ合ってるなって思っただけ」
「茶化すなーそれでいいか? キョウヘイ?」
「……リーシャの力はイツキが一番知っているだろうしね。そのイツキがそう決めたのなら、俺は何も言わないよ」
東西南北の結界をユウヤ・キョウヘイ・ソウスケ・リーシャが破壊し、破壊した瞬間、俺が王都に乗り込みキッシーボードウィンを討つ。
大体の方針は決まったのでユウヤ達は先に準備を始めるために席を外した。
俺とキョウヘイはこの場に残り、戦いの方向性を再確認と細かいところを話し合しあった。
それも終わり、オレは最後に一つだけキョウヘイに聞いた。
「……なぁキョウヘイ。お前はこの状況をひっくり返せると思うか?」
こいつはいつも冷静に物事を判断する。
そこには忖度なんて一切存在しない。
出来ることは出来ると言い、出来ないことは出来ないと言う。
それをちゃんと主張できるのがキョウヘイの凄さの1つだと思っている。
だからこそ、聞いておきたかったのだ。
一ノ瀬キョウヘイの率直な意見を。
「ひっくり返せるよ。俺たちがいるからね」
そんな一ノ瀬キョウヘイの忖度のない言葉が返って来た。
「今はこちらの士気が高いし、レギス・チェラムの主力もここにいる。俺たちがちゃんと自分たちの役割を果たせれば勝てる筈だ」
でも正直とキョウヘイは言葉を続ける。
「最初はこれは勝てない戦いだってそう思った。レギス・チェラムのみんなは心が折れて士気も最悪だったからね」
「だけど、それを覆したのは君の言葉だ」
「……お、おう。なんか改めてこう……正面から言われると照れるな」
「……正直、羨ましいよ。全員をあそこまで奮い立たせるなんて俺には絶対にできない事だから」
「君の言葉はとても力強くて、真っ直ぐで……熱を持っている。それに対して自分がしているのは状況を整理して可能か不可能かの分析だけ……そこには勝利の執着とかはない」
「だから、俺の言葉には熱を持たない」
そうキョウヘイは笑顔で言った。
でもその笑顔にはほんの少しだけ、悔しさと羨望の眼差しが含まれていた。
いつもはそんな笑顔はしないのに。
心の中の本音が少し漏れ出してしまったのか。
ちょっと、珍しいな。
「俺はいつも限界や現実を考えて自分で線を作ってしまう。今回だってそうだ。正直、君の檄を聞いたとしても半分は戦いを放棄するって考えていた。勝手にそう自分で線を引いていたんだ」
それでもとキョウヘイは言う。
「君の言葉はギルドの空気を変えて全員が戦うまでに士気を上げた……君は俺が作った線を、限界を現実をいつも飛び越えていく」
「俺にも君みたいな。強さがあれば……熱があれば……ってね」
自嘲しているかのような笑顔を見せる。
もしかしたら、こいつは自分の言葉には何の力もないって思ってるんじゃないだろうか?
だとしたらそれは大きな間違いだ。
だから
「お前……もしさ、自分の言葉には何もないって思ってるなら、それは違うぞ?」
「……え?」
「確かにお前は状況を整理して可能か不可能かの分析するのが得意だよ? どんな絶望的で明るい言葉が必要な時でも無理なら無理ってお前ははっきりと言うやつだ」
一ノ瀬キョウヘイの言葉には忖度は存在しない。
だからこそ
「お前の言葉には重みがあるんだよ」
「!!」
「感情に任されず、冷静に物事を見て合理的に判断できるお前のひっくり返せるって言葉は俺にとっては誰よりも心強い言葉なんだよ」
こんなこと恥ずかしくて言えないがこの際だから言ってしまうか。
「……それに俺がこんな事聞くのもお前だけだし。だから俺はお前のひっくり返せるって言葉を信じてるし、それにお前の言葉を疑ったことは今まで一度もないぜ?」
確かにキョウヘイの言葉には熱があるかと言われるとないかもしれない。
だけどさ、あるんだよ。
ちゃんとあるんだ。
そのことをこいつは知らないけど俺は知っている。
だから俺が言ってやる。
「お前の言葉にはお前の強さが宿ってる」
「!!………………そっか。いや……今までそんな考え方、したことなかったから……少し驚いてる」
「お前って、頭いいくせに、馬鹿な時あるからな〜」
「うーん。馬鹿って言葉君とソウスケにだけは言われたくない言葉だな」
「な、なんだとー!!」
そう言いつつキョウヘイの顔はなんだか嬉しそうだった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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