第77話 男と男の約束
メンバーを集めて状況を説明する前にやりたいことがあった。
ヒロムの容態を直接見ることだ。
少し歩くだけでもきつい……傷口が痛む。
それでも俺はヒロムの姿を一目見たかった。
息を切らしながらも案内してもらいベッドで眠っているヒロムの元についた。
よかった……ユウヤの言った通り命に別状はないようだ。
「……マス……ター?」
「!! ヒロム! 目が覚めたか!」
ちょうど、俺がきた瞬間ヒロムは目が覚めた。
その瞳は朧げでいつ再び意識が失うかは分からない。
「あ……マスター……ああ、すいません。せっかく来ていただいたのに。こんなボロボロの姿で」
「何言ってんだ。それは俺もだよ……不意打ちとはいえ、完全にやられちまった」
これは本当のことで、襲われて受けてしまった怪我は完治してない。
その傷が痛くて痛くてたまらない。
いくらポーションや回復魔法をかけてもらってもこの灼けるような痛みは治らない。
ソウスケ曰く、精霊の力と言っていた。
そこらへんのポーションや治癒魔法では癒えることはないらしい。
「……お互い、ぼろぼろだな」
「はい……」
「「でも」」
言葉が重なった。
「「……レギス・チェラムはまだ終わってない」」
また言葉が重なって、くすりと二人で笑う。
「それはーヒロムが踏ん張ってくれたからだな」
「それはーマスターが来てくれたからですね」
最後の最後でお互いに違う答えが出た。
「……それじゃあ、その二つってことで」
「……はい」
……本当はネルトに帰ってきた時ヤバイと思った。
レギス・チェラムのみんなはラクスとヒロム以外倒れていて、俺もソウスケ達もボロボロで……
今も全身の火傷が痛むし、歩くだけでも息が切れていた。
固有スキルも発動する兆しもなかったし戦える体では到底なかった。
だからヤバイと思った。
でも、あの時のヒロムはボロボロのはずだったのに、倒れかけていたのに、あの場にいる誰よりも大きく見えた。
絶対に負けない。諦めないという強い意志を持っていた。
そういう目だった。
そんなヒロムの姿を見た時、胸が熱くなった。
俺も負けられねぇってそう思った。
そう思ったら身体中の痛みはどこかに消えていて、力がみなぎってきたんだ。
「……マスター」
「ん? なんだ?」
「すいません……勝手なのは……わかってます。だけど……僕の悔しさや想い……全部、託していいですか?」
「……ああ、託せ」
多分、レギス・チェラムの奴らも同じなんだ。
だから、今度は俺の番なんだ。
この熱をみんなに伝える番なんだ。
弱々しいがヒロムの手がぐっと俺の手を握った。
手からヒロムの熱が伝わる。
熱い……身体中が熱く、マグマのように身体中の血が沸き立つ。
「……ああ、すいません。折角来ていただいたのに……まぶたが……重たくなってきました。」
限界なのか、また意識が朦朧としてきたようだ。
「約束だ。ボードウィン王国の奴らは俺達でぶっ倒すからさ、あとは俺たちに任せてお前は安心して休んでろ」
だから、一つだけ約束する。
「………わかりました。やくそく……です。」
「ああ、男と男の約束だ。」
ヒロムは再び眠りについた。
そして俺の心に火が付いた。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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