第76話 戦況
ボードウィン王国の刺客を撃退した俺達はレギス・チェラムに戻ってある程度治療を終え状況把握に努めていた。
ラクスや、おっぱいが大きいロリ顔のヒーラーの話を聞いてボードウィン王国が本格的に攻めてきたのだと分かった。
「なるほど、おそらくこのネルトを起点にしてキャメロット王国を侵略するつもりだね」
「ついでに僕たちも手駒として加えて戦力アップってところじゃない?」
キョウヘイの言葉に捕捉するようにソウスケが言った。
「ボードウィン王国か……あそこは人数も多い。圧倒的兵力で潰しにかかってくるだろう。以前の防衛戦の倍以上の数が押し寄せてくるかもしれない」
エレナもボードウィン王国は1・2を争う大国だと言っていた。攻めてくる数は多いだろう。
以前、賢王が攻めてきた以上の数の敵が。
しかし、だからこそここまで進行してくるのも時間がかかるはずだ。
「奴らが攻めてくるまでどれくらいあると思う?」
俺のトリ頭で考えても時間の無駄なのでここは頭脳担当のキョウヘイさんに考えてもらうことにした。
「……ネルトまでの距離を考えると5日ほどはかかるんじゃないかな? ただ……それはあくまで正当法を使ってだけどね」
正当法……か。
キョウヘイと目が合う。
おそらく考えていることは同じだ。
その瞬間、扉が開いた音がした。
「ただいま〜」
そこには遠方のクエストから帰ってきたリーシャの姿があった。
「お、リーシャ、おかえり」
手を振るとこちらに気づき、とても嬉しそうに微笑んで駆け足でこっちにきた。
「お疲れさま、今度はちゃんと討伐依頼された魔物を倒してきたか?」
「え、うーん。多分」
リーシャさん何で目線を逸らすんですかね? しかも自信なさげで言わないでくれますか?
「おい、多分かよ。しっかりしてくださいよ。リーシャさん」
「じゃあさ、今度一緒に行こうよ。そしたら大丈夫だからさ」
「えーめんどくさいなそれ……いた! わかった。わかったから同行するから突っつかないでくれっ!」
地味に痛い突っつき攻撃をされて降参するように彼女の提案を呑んだ。
「いえーい」
リーシャは嬉しそうに勝利のピースをする。何でそんなに勝ち誇ってるんだ?
「いえーいじゃねぇよ」
そんなやりとりを柔らかい表情でソウスケとキョウヘイは見ている。
先ほどの張り詰めていた空気が少し和らいだ気がした。
リーシャは何かを思い出したかのようにあ、と呟いた。
「そういえば……騎士団見たいのがたくさん来てるよ。めっちゃ」
「……当たってほしくない感が当たったか……おそらく、敵の中に転移系統の力を持った者もしくは魔道具を使った可能性があるね。ソウスケ」
「今やってる」
ソウスケはキョウヘイに言われる前に探知魔法をあたりを探っていた。
ソウスケに探知魔法を使ってもらった結果、どうやら東西南北それぞれ大軍が現れ、ネルトが完全に包囲されていることがわかった。
しかもソウスケいわく、数は1万人ずつ。 合計4万人。しかも4つの大軍の中に1つずつ強大な魔力が探知できたらしい。
おそらく、エレナの言っていた転換者だと見て間違いないだろう。
「いや、それだけじゃないな……これは……」
ソウスケが何やら考え込んでいるとユウヤがこちらにやってきた。
「ユウヤ、ヒロムの容態はどうだ?」
レギス・チェラムの治癒魔法を使える者総動員でヒロムの治癒をしていたのだがどうやらうまくいったのだろうか?
「……安定はしてきている。死ぬことはないだろう」
よかったと胸を撫で下ろす。もしかしたら手遅れなんじゃないかと不安だったのだ。
それほどまでにヒロムの状態はボロボロだった。
「イツキ、キョウヘイ、ユウヤちょっといい?」
ソウスケが真剣な顔をしながら扉の方へ指っ刺した。
黙って頷き、ソウスケについて行く。どうやら外に出るようだ。扉を開け、見上げると結界のようなものが空を覆っていた。
「……これは」
「結界だね。この辺りを覆ってる。東西南北にそれぞれ支柱となる魔道具を使って展開してるんじゃないかな?」
さっき似合わない顔して考え込んでいたのはこれだったのか。
「完全に孤立させられたということか……」
ユウヤが空を見上げながら呟く。
これで王都からの援軍は望めないか。まぁ、エレナ達は今最前線で魔王軍達相手に踏ん張ってるからここは俺達だけで片をつけるつもりでいた。
……このタイミングで魔王軍が押し寄せて来ている。……偶然だろうか?
「勇者の村がやばいんじゃない? ネルトの近くにあるし」
「いや、大丈夫だ。手は既に打ってある」
勇者の村には既に実体化させたバエルを向かわせている。
あいつに任せておけば大丈夫だ。
心配するソウスケの肩をポンと叩きながら言うととても意外そうな顔をされた。
「……ひとまず。レギス・チェラムのみんなに説明しないとね。今の時点で大分士気が低いけど」
キョウヘイが懸念を抱くのもわかる。
先ほどの刺客の襲来でネルトは占拠されかけ、続いて結界によって孤立させられ、迫るのは4万人の正騎士団と4人の転換者。
対してこちらは50人ほどとボロボロの俺たちが4人。
いや、ユウヤは神器のおかげで無傷だが……魔力を消費している。
この状況を知ったら心が折れてしまう者もいるだろう。
それどころか
「降りることを申告する者も現れるだろうね」
「まぁ、だろうねぇ」
キョウヘイの言葉にソウスケはため息をついた。その可能性はここにいる4人が考えていた事だった。
誰かが言わなければならない。キョウヘイはいつもそういう事を率先してやる男だ。
「ラクスが激を飛ばしてはくれているが、それでも士気は最悪だ……どうする? マスター」
ユウヤの言葉にソウスケもキョウヘイもこちらを見る。
このままではレギス・チェラムは戦えない。
敗北という事実がそうさせていた。
誰しもが思っている。
だけどそれは違う。
……はぁ。やるしかないか。パシ!! と気合を入れるため両手で頬を叩いた。
「まぁ、この状況を隠したって意味ないし、キョウヘイはみんなに状況の説明を。そっから先は……俺の仕事だ」
「了解」
キョウヘイはいつもの笑顔で頷いた。
俺たち4人は再び、レギス・チェラムへと戻っていった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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