第75話 首
ボードウィン王国
「なるほど……それで? お前らは無様な姿を私に見せてきたのか」
ギール・ナックル・ボードウィンは不快だと言わんばかりの表情をしながら膝まつく服部シュウイチと近藤ナオトを見下しだ。
この場には残りの転換者たちも集まっている。
シュウイチとナオトはキャメロット王国侵略の足がかりとなるネルトの占拠の偵察を依頼していた。
結果、ギールの予定では偵察だけのはずだったが占拠に失敗した挙句敗走し、レギス・チェラムの警戒を強めてしまった。
「確かに、状況次第では取ってしまってもいいと言った。私に何の連絡もなしに転換者である星野キララを使うもの何も言うつもりはない。が……結果、このざまは何だ?」
これはギールの本心であった。
「ええ!? なんで!? なんで!? 失敗したの!? ねぇなんで!?」
奇抜な髪型に奇抜な格好をしている原始人のような男がナオトとシュウイチの周りをわたわたとしながら質問する。
その男は転換者の一人である戸田タケオだ。
いつもはバカにしているタケオに煽られているような言い方をされて二人は少しイラついた。
「タケオ。静かに」
そんなタケオに優しくギールは言うと
「わかった!! お口チャックだねっ!!」
タケオはムッと黙った。
「……キララがきちんと双葉イツキを仕留めていればこんなことには」
こぼすようにシュウイチは言った。
「はぁ!? あんたたちのミスをこっちになすり付けないで欲しいんですけどぉ!?」
ゴミの見るような目で転換者の一人星野キララは言った。
「その通りだ。星野キララはただの足止めとして襲わせた。結果、彼女により双葉イツキはネルトに来るのが遅れたと報告を受けている」
これは星野キララが自身の仕事を果たしていることを意味していた。
「当然!! しかもちゃんとダメージも与えてるし!!」
キララの言葉にナオトとシュウイチは黙って俯く。
「シュウイチ、お前がくだらない遊びをしなければ双葉イツキが到着する前にネルトを占拠していたのではないか?」
痛いところを突かれ、シュウイチは下唇を噛んだ。
そうギールの言う通り、ヒロムに拘らず、結界内の人間を全員昏睡状態にし、ネルトを占拠すればよかったのだ。
占拠さえしておけば双葉イツキが来たとしてもギルドの誰かを人質にしたりとやりようはあったのだ。
「服部シュウイチ、私はお前を買っていたのだがな。重要な場面で油断し、自身の快楽を優先させた……失望したよ。お前はクビだ」
「……は? 待ってく」
ギール王子は父、キッシー王と同じようにシュウイチの首をスパンと斬った。
「なっ……」
その様子をまじかで見てしまったナオトは震え上がった。
「なぁ、王子!! おれは悪くないよな!! シュウイチにやれって言われて仕方なくやっただけなんだ!!」
命乞いするように必死に訴えかけるナオトをギールは冷たい目で見下ろしながら
「いや、お前もクビだよ」
断言しながらナオトの首を斬った。
斬られる瞬間、あ……とだけ呟いてナオトは首を斬り落とされた。
「双葉イツキに瞬殺されるようではこの先使えない。お前より強い転換者は居るんだ。いくらでも変わりがいる。そう使えないゴミは捨てる。それだけだ」
まぁ、もう聞いちゃいないかとギールは血のついた剣を放り投げた。
頭を切り替え、迅速に全勢力をもってネルトを占拠に動き出す。
部下に地図をもって来させ、あらかじめ考えておいた策を詰め作業に入る。
「……予定通り、初めにこの村を占拠し、ネルトを完全に孤立させる」
ギール王子が指さしたのは昨晩、双葉イツキ達が滞在していたヨームゲンだった。
ギールはヨームゲンを占拠し、完全にネルトと王都のコネクトを断つことを決めた。
「よし、計画通り東西南北に結界の核を設置し、ネルトを閉じ込める。ユウジ、仕込みは出来ているな?」
「もちろん」
マントを身に纏った中年がこくりと頷く。
彼も転換者の一人林ユウジだ。
「ねぇねぇ!! どこ行くの!? どこ行くの!?
「うわ、うっさ。おっさんこいつなんとかしてよ」
「おータケオくん。今からおっさん達と遠足に行こうねー」
「やった!! 遠足!! 遠足!!」
「では行こうか。双王が向こうを攻めている今、ここでネルトを取る」
ギールは策を実行させるため、3人の転換者従え、自ら動いた。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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