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第72話 孤立無援




「これでもうネルトからは出れねぇぞ。孤立無援って奴だ」



シュウイチのいう通り、この結界は核爆弾でも傷つけることが出来ないほどの硬化強度を誇る。



「こ、こんな強大な魔力の結界……絶対に破れない。完全に閉じ込められた」



女ヒーラーの目には獲物を逃さないように生み出した鳥籠のように見えた。



「……ここは僕が足止めしますから、早くレギス・チェラムに。皆さんと協力すればこの2人を倒せるかもしれません」


「あ、え、でもっ……」



相手の圧倒的な力を目の当たりにした女ヒーラーはヒロムだけではこの2人を倒せないことを理解していた。

しかし、それはヒロム自身が理解している。だから彼女をレギス・チェラムに逃がすのだ。



「大丈夫です! 僕が命をかけて守ります! 絶対に!」



その瞳は強い意志を感じる。女神官はその瞳に安心感を覚えた。


信じてみようとそう思った。



「―っはい!!」



女ヒーラーは頷き、ヒロムに降ろしてもらい、一切後ろを振り向かず、全力疾走でレギス・チェラムに向かう。

その背中を守るようにヒロムはシュウイチとナオトの前に立ちはだかった。

二刀の短剣を構え、臨戦態勢に移っている。


「ほう」とナオトはヒロムを見ながら言った。



(俺の攻撃に備えて集中してやがる)



「まるでヒーローだなぁ。少し遊んでやるか!」



そう言いながらナオトは前に踏み込みヒロムの顔面にむけ拳を放つ。



「―っ!?」



ヒロムは寸前のところで躱すがそのナオトの拳がまとった風圧がヒロムの頬を斬った。



(なんて威力だ。1発でもまともに受けると終わりだ!)


(ほう、これを避けるか)



二人は相手に対して驚愕していた。



「少しは楽しめそうだな!」



ナオトは楽しそうに拳を振るい続けた。

それに対しヒロムは的確に拳を避けていく。

今のヒロムはナオトに対して一切攻撃を仕掛けていない。その光景を見てなるほどとシュウイチは思った。


おそらく、あの女ヒーラーが仲間を連れてくるまでの時間稼ぎをしているのだろう。



(俺もこの結界を張っている最中は魔法は一切出せない。あの眼鏡もそれを察してやがるな。いい観察力と判断だ。だが)



「意味ねぇんだよなぁ」



シュウイチの放った一言に呼応するように

青い雷光がナオトへと放たれた。



「おっと」



放たれた雷光を避けたナオトはヒロムと一旦距離を取った。



「待たせたな! ヒロム!」


「ラクスさん!」



聞きられた声に反応してヒロムは後ろを向く。

ヒロムの後ろにはラクスを先頭に先ほどヒロムが逃した女ヒーラー含めたレギス・チェラムのメンバーが居た。

王都に呼び出された双葉イツキと北条ユウヤ、一ノ瀬キョウヘイ、神崎ソウスケと遠征で不在のリーシャ・ミカエル以外のメンツが揃っていた。



「この雷光……お前、ラクス・クロニクルか……ははっ! いいねぇ! 楽しくなってきた!」


女ヒーラーはすぐさま、ナオトによって倒された剣士の少年とアーチャーの少年、女武闘家と元へ行き、治癒魔法を使った。


ラクスはナオトによって倒された4人を見て拳を強く握り、ナオトを睨みつけた。



「随分好き勝手してくれたじゃねぇか」


その声はとても低く、怒りという感情が剥き出している。



「ああ? こいつらが弱すぎるのがいけねぇんだぜ? あんたは大丈夫なんだろうなぁ?」


「……試してみるか?」



ラクスとナオトの魔力がぶつかり合う。



「残念だけど、ナオトの相手はあんたじゃないんだ」



シュウイチがそう言った瞬間、集まったレギス・チェラムが次々と昏睡していった。



「!? 何……を?」



強烈な眠気がラクスを襲った。思わず膝をつきながらも遠のいてゆく意識に必死に抗う。

ラクスはその眠気に耐えながらナオトから目を離さない。



「へーあんたまだ昏睡しないんだー」



シュウイチは必死に抗い続けるラクスを見て感心した。



「この結界の中に入った者は俺の意志で強制的に昏睡状態に出来るんだよ。まぁあんたみたいに強靭な精神と

膨大な魔力を持った奴には完全には効かないけど。確実に無効化はできる」


シュウイチは膝をつくラクスを見下ろしながら淡々と説明をする。



「逆にいうと〜俺が許可した者は動けることができる。ナオトとお前みたいにな」



シュウイチとナオト以外、つまりレギス・チェラムでたった一人立っている少年、ヒロムに言った。



「おい! シュウイチ!! 勝手なことしてんじゃねぇよ!」


「お前も俺のやりたいことを邪魔したんだ。これくらいいいだろ?」



シュウイチに対しちっとナオトは舌打ちする。それ以上は何も言わなかった。

これ以上何か言ってシュウイチの機嫌を損ねてしまうとナオト自身も彼によって完全ではないものの昏睡状態になってしまうから。




この結界の主、絶対者は服部シュウイチなのだ。ナオトはそれを痛いほど知っている。



「すでにネルトは占領したも同然だ。だからここからはただのお遊び。俺はさぁ、弱者が強者になぶられている様子を見るのが大好きなんだよ」



シュウイチがヒロムのみ残した理由はただそれだけだった。

要するにするに弱いものいじめが見たいだけなのだ。



「特にお前みたいに雑魚のくせにカッコつけちゃうようなやつがさ!」


ニタァと笑うその顔はとても歪んでいる。

そんなシュウイチを見てため息をつき、目の前の獲物を見つめる。



「っ!! そんなことっ……させるかよぉ!!」


ラクスは吼えながら立ち上がり、拳を握った。

ナオトに向け、怒りと殺気が放たれる。



「マジか! すげぇな!! この結界で立ち上がったやつなんかあんたが初めてだよ!」



シュウイチは愉快そうにラクスに言った。



「なら……俺と遊ぼうぜ。ラクス・クロニクル」



ラクスとは対照的に笑いながらシュウイチも拳を握った。



「……今のラクスじゃこの俺の相手にはならねぇ。この鬱憤をお前で晴らせてもらうぜ? 俺に勝てるかな?」



ヒロムを見下ろしながらナオトは言った。そう言いながらもナオトの表情はわかりきった顔だった。



勝てるわけがない。


魔力、筋力、耐久、スピード全てにおいて強力な力を持つ転換者であるナオトが大きくうわ回っていた。

絶体絶命、今この状況もシュイチの気まぐれので成り立っている。自分に出来ることなんてないのかもしれない。


ただ目の前の野獣に蹂躙されるだけかもしれない。それでもヒロムは拳を握る。



「勝てるとか勝てないとかそんなの関係ない。今、あなたと戦えるのが僕しかいないのなら命を懸けて僕はレギス・チェラムを守ります!」



震える体を抑え、武器を構えて吠えた。



「諦めない意志ってやつかぁ? 美しいよなぁ!」



ナオトはヒロムの咆哮を嘲笑いながら拳を強く握る。

一方は守る為、一方は潰す為に全力で疾走し、拳と剣が轟音と共にぶつかり合った。







「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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