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第70話 国王





ボードウィン王国の国王キッシー・ナックル・ボードウィンは国の重役を一斉に集め、会議を開いていた。



「さて……お前らの報告によると戦いの準備と言うものが整ったそうだなぁ?」



王冠をかぶり、黄金に輝く首飾りと宝石がついている腕輪、指輪を身につけ膨らんだ腹をしたキッシー王が玉座に座り、酒を飲みながら言った。

右手には豪華な装飾のついた剣を持っている。

キッシーの赤い瞳はその場にいる者全員を見下していた。



「は、はい。騎士団の練度及び肉体を改造した強化兵の確保及び5人の転換者も揃いました。これでキャメロット王国に侵攻する足掛かりの準備は完了いたしました」



大臣がキッシー王にひざまづきながら改めて報告する。



「……俺様は1年でやれと言ったが、どのくらいかかった?」


「はっ360日でございます」



キッシーは王になった瞬間からキャメロット王国の侵略を企てていた。


一年前、侵攻を命じた際、大臣及び様々な重役から資材が足りないだの、戦力がないだの訴えたが、キッシー王はウジムシのように沸いているボードウィン王国の領地の人間を片っ端から核爆魔法を刻印し特攻させればいいだろうと言った。


それを聞いた大臣たちは顔を青くし、必死にキッシー王を説得させ、準備期間を設けさせた。

キッシー王は2年でやれと命じた。できなければ首が飛びぶと。


大臣達は通常4年ほどかかってしまうことを半分の2年でやれと命じられ、必死に準備をし、見事しほぼ1年で成し遂げたのだ。



「そうかそうか……ほぼ1年か、ギリギリとはいえ俺様が命じた期間で終わらせたか……」



グビグビと酒を一気飲みするキッシー王は正直と言葉を続ける。



「お前達の手腕とこの国の自力を考えると1年でできると思っていた。まさに俺様の期待通りの結果だったな」



ははと笑い出し、剣を玉座にかけたキッシー王に大臣たちもほっと胸を撫で下ろす。

先ほどまで切り詰めていた空気が一気に和らいだ。



「おい、お前ら順番にこっちに来い。まずはそうだなぁ……お前からな」


キッシーは手をひょいひょいとさせ、大臣ら重役全員を自身のもとに呼び寄せた。

指を刺され指名された大臣を先頭に列ができる。

並ぶ全員が何か褒美をもらえるのだろうかと胸を躍らせた。そんなウキウキな気分で待っている大臣にキッシーは笑顔で言った。



「お前、大臣クビだ」


「―え?」


瞬間、大臣の首がスパンとキッシー王によって斬り飛ばされた。


「このクズどもが!! 仕事がおせぇんだよ!! 半年で終わらせろ!!俺の期待通りの仕事をするような奴らはいらねんだよ!! 俺様が欲するのは俺様期待以上の仕事をする奴らだ!!」



出口である扉を魔法でロックし、キッシーは悲鳴をあげ逃げ惑う重役達を笑いながら斬っていった。

数十分後トントンと会議室の扉が叩かれた。



「誰だ」


「ギールです」


「入れ」



キッシーの許可を得て扉を開けたのは猫のように鋭い瞳をした童顔で小柄の青年だった。

その青年の名はギール・ナックル・ボードウィン。


キッシー・ナックル・ボードウィンの息子である。



「……また重役全員の首を斬ったのですか?」



真っ赤に染まった部屋を見てまたかと言った感じでギールは言った。



「ああ、俺の役に立たないゴミだったから処理してやった。代わりはいくらでもいるからな」


「すでに揃えております。私が父上ならそうしていたので」


流石我が息子、考えていることは同じだったかとギールの返答を聞き愉快そうに笑う。



「……で? なんの用だ?」


「ネルトに転換者を二名送り込みました」



手始めにネルトを占領し、そこから王都まで侵攻していくと言うのが双方の考えであった。

ネルトを狙う理由は二つある。


一つ目はネルトはキャメロット王国の領土の中で最もボードウィン王国の領土に近い街だと言うこと。


2つ目はネルトには世界に5つしかない5大ギルドレギス・チェラムがあるからだ。


ネルトを占領し、レギス・チェラムを取り込み勢力を拡大していく。

レギス・チェラムは人数こそ少ないがあの勇者パーティを同等の戦力と言われている副ギルドマスター北条ユウヤ、神崎ソウスケ、一ノ瀬キョウヘイをはじめ曲者揃いと聞く。


いくら強者達であろうとここ帝都だけではなく、ボードウィン王国の領地中から集めた4万の兵と5人の転換者、そし父と自分が居れば確実に陥せるだろうとギール・ナックルは確信していた。


こちらの圧倒的な兵力で制圧できる上期待できる戦力アップは大きいと言うまさにボードウィン王国には打って付けだったのだ。


勇者パーティとキャメロット家、他の5大ギルドは戦力を魔王軍との最前線に固めている為、瞬く間に王都まで侵攻できるだろう。

魔王軍とこちらに板挟みになれながらする潰されていくキャメロット家を想像すると笑いが止まらなかった。



「あーそうだ。あのイリエの一人娘……名前はエレナだったかな? あの小娘を処女奪ってよぉ……俺様専の性奴隷にして身体中を開発したいぜぇ……ひひひ」



よだれを垂らしながら下衆な笑みを浮かべ妄想をするキッシーにギールは心の中で


(我が父ながら悪趣味だ……)


とため息をついた。


「転換者の誰が向かったんだ?」


「服部シュウイチと近藤ナオトです。まずはネルトがどのような場所か偵察に行かせました。そしてあわよくばそのままとってこいと。それと女は全員手を出さず、父上の元に献上させるよう指示してあります」



キッシーは期待以上のギールの言葉を聞いて再び笑った。








「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


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