第69話 襲撃
「村長、村の皆さん、お世話になりました」
ユウヤを先頭に俺たちレギス・チェラムは宴を開手くれた上に無償で宿を提供してくれたヨームゲンのみんなに頭を下げた。
「いえいえ、よろしければまた来て下さい。子供たちも喜びますので」
村長は笑ってそう言ってくれた。いいところだったなぁと思う。また来れるといいなと思うほど俺はこの村を気に入っていた。
「イツキー!!」
うわー!! と昨日遊んだ子供達が俺に向かって走ってきた。
なんだなんだ? こいつら、俺がこの村から出て行ってしまうから寂しいのか? なんだよ。最初はクソガキどもと思っていたが、かわいいところあんじゃん。
ははと笑いながら両手を広げ、押し寄せてくる子供達を受け入れようとしていたら
「みんな一斉に放つぞ! ウォータボール!」
何十発ものウォータボールが俺に向けて放たれた!
「ぶっ!?」
油断していた俺は全弾喰らってしまう
「あはは!! クソ雑魚お兄ちゃんまたねー!」
「このクソガキどもがぁ!! 舐めてると潰すぞごらぁ!!」
必ずやこのクソガキどもに分からせてやると心に強い誓いを立て俺は走った。
「こっちにきたぞ!! 迎撃だー!!」
「ああああああ!! ご、ごめんなさい! やめてくださいっ」
勇敢に立ち向かうが、流石に多勢に無勢か昨日の様に子供達にフルボッコにされる。
(うーん、昨日と展開全く同じで草、こうなるって学びなよ)
「あ! リリス姉ちゃんとリン姉ちゃんだー! 向こう行こうぜ!!」
子供達の興味がこちらにきたリリス達にに向いたのでウォータボールが飛んで来なくなった。
た、助かった……
「イツキさん!? どうしたんですか!?」
子供達と談笑していたリリスがこちらに気づき、びしょ濡れを俺を見てびっくりしている。
隣にいるリンに子供たちの相手を任せ、こちらに駆けつけてくれた。
「ふ、少し子供達と戯れあっていたのさ」
ふっと前髪をかき上げ、ニヒルに答えた。
(何カッコつけてんだ? このニートは?)
「乾かすので少し待って下さいね」
そう言いながらリリスはえいと言いながら指を振ってと暖かい風が生み出し、瞬時に服が乾かしてくれた。
まるで、初めて会った時のように
「そういえば、初めて会った時もこんな感じでしたね……」
リリスも同じことを思っていたらしい。それが少し嬉しかった。
「あ、クソ雑魚お兄ちゃんリリスちゃんのおっぱい見てニヤニヤしてるー!」
「おい!! やめろ!! クソガキども!! ち、違うんだ!! リリス誤解だからあからさまに手で胸を隠さないでくれ!」
「双葉イツキ」
ヒィィ!! リンさんが無表情でこっちに来た!! これは閉められるやつだ。に、逃げないとっ。
「待ちなさい」
「ぐえっ」
逃げようとしたところを襟あたりを掴まれる。
「ちょっと来なさい」
そう言われ、リンさんに人気のないところに連れていかれた。
あ、あかん詰んだ……
「ち、違うんです……ニヤついていたのは事実なんですど、リリスのおっぱいを見てニヤついていたわけではないんです……」
「別にその件で連れ出したわけじゃない」
「あ、そうなの?」
よかった……本当によかった……
安心し胸を撫で下ろしているとリンちゃんはリリスは何でこんなやつをとため息をついた。
「……本当はこんなこと言いたくないんだけど、リリスは負の感情とかは表に出さず、自分の中に押し留めてしまうタイプなの」
確かにリンのいう通り、リリスはしんどいとか辛いとか嫌だとかそういった負の感情は周りには出さないタイプの人間だ。そういったところが心配でもある。
「リリスの中であなたは特別な存在なの、だから、私達にも言えないこともあなたにはいうかもしれない。もし、リリスが限界を迎えた時あなたになら何らかのサインを出すかもしれない……その時はリリスを頼んだわよ」
リンの放った言葉はとても重いものだった。
リンは俺の返事を無言で待った。生半可な返事など許されないと、その目が表情がそう語っている。
俺はそれを理解した上でリンに一言だけ言った。
「……そう」
とだけ言ってリリスの元に帰っていった。
「……ごほ! ごほっ! はぁ……無茶言うなよな。全く」
地面に吐いてしまったものを足で掻き消してから、リリス達の元に向かった。
どうやらリリス以外は馬車に乗ってしまっていたようでいるのはリリス一人だった。
「あ、イツキさん。リンちゃんと何を話してたんですか?」
リンちゃんに聞いても答えてくれなくて……と
「……そんな大したことじゃないよ」
リンが言わなかったのなら俺も言わないほうがいいだろう。リリスには悪いが誤魔化すような言い方をする。
「む、イツキさんも言ってくれないんですね……もういいですっ」
リリスはぷくと頬膨らめせ拗ねてしまった。
か、かわいい。
「ごめんごめん。リリスと仲良くして欲しい的なこと言われただけだから」
「あ、そうだったんですね」
流石に拗ねられたまま別れたくなかったのでそれらしいことを言って納得させてもらった。
「みんな馬車に乗ってちゃったけど、いかなくていいのか?」
「あ、そうですね。私もいかなくちゃ」
はっとした表情で後ろの馬車を見つめた。
名残惜しいが、リリスとはお別れかぁ……もう少し一緒に居たかったなぁ。
けどしょうがない、向こうでユウヤ達を待たせているし、俺も馬車へ向かうとしよう。
「それじゃあさよならだな」
そういうとリリスの表情が明らかに曇った。
「リリス?」
「さよならなんて言いわないで……何だか、最後のお別れみたいになるじゃないですか……」
「え……」
予想外のリリスの言葉に声が詰まった。
そんなつもりは全然なかったんだけど、リリスにはそう捉えてしまったらしい。
リリスははっと我に帰った様子で
「あ、えっと、すいません! あはは、私、何言ってるんだろう……」
自分でもどうしてこんなことを言ったのか分からない様子だった。無意識に出た言葉なのだろうか?
そういえば昨日も俺がどこかに行ってしまいそうで怖いとか言ってたっけ?
……まさか、あれを見られてしまったか? いや、ならあの場で何か言っていたはず。
なら、直感的にそう思っているのだろうか?
「……リリス」
「はい?」
だから俺は改めて言った。さよならじゃなくて今言うべき言葉は
「またな」
「!! はい! また!」
曇っていた表情が晴れかやになり、いつものリリス・アリスタがここに居た。
お互いに手を振りながら馬車に向かい歩き出す。
俺は運転手さんの隣に座り、馬車を出す。
振り向くとだんだんと村が小さくなっていく。
完全に見えなくなり俺は前を向いた。
「こほッ!! こほっ!」
再び咳が出る。
「おや、大丈夫ですかい?」
運転手さんが声をかけてくれる。
運転中の為前を見ているが、その声は心配そうにしてくれていた。
「ええ、大丈夫でー」
運転手さんに言おうとした瞬間、無数の火球が馬車に向かって飛んできた。
「っ!!」
避けようとするがそれが叶わず着弾した火炎は大爆発を起こし、目の前が真っ暗になった。
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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