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第66話 強さ




「……名前は?」


「カトル」


「カトルもレギス・チェラムが好きなのか?」


「当たり前だよ!!」



カトル君はすごく大きな声で、力強く答えた。



「……この村が1年くらい前に魔物の大群に襲われたのは知ってる?」


イツキさんはカトル君の言葉に黙って頷く。


「1年前って私達と助手君で一掃させた奴だよね?」


ユメちゃんの言葉にリンちゃんと一緒に頷く。



「その時、勇者パーティーの人たちと、当時有名じゃなかったレギス・チェラムの3人が助けに来てくれてその時、ユウヤさんが僕を助けてくれたんだ」


カトル君はさっきまでとは一変し、楽しく懐かしむような表情で話す。



「その時、ユウヤさんに言ったんだ。強くなってレギス・チェラムに入んだって、それでユウヤさんの背中を守ってみせるって」



ああ、そう言えば、ユウヤさんにそんな事を言ってた男の子がいた様な気がする。



「だいぶ前だから、ユウヤさんは覚えてないかもだけど、僕は本気なんだ。空いた時間に剣の稽古とか色々頑張ってきた」


だけど……とカトル君は落ち込むように下を向く。



「数日前、妹とお母さんと畑を耕していたらキバイノシシが襲ってきて」



キバイノシシはこの辺りに生息している猪のモンスターだ。強さで言うとスライムやゴブリンより少し強いくらいかな?



「畑荒らしに来たんでしょ。村の人が大して強くないから自分達だけで追い出せるって言ったわ」


リンちゃんは2人を見つめたまま言った。



「僕はお母さんと妹にコイツは自分が倒す。危ないから逃げてって言ったんだ。だけど戦ってみると緊張して、上手く体が動かなくて……全然歯が立たなくて……」

 


それで、こんなに大怪我をしてるんだ……


「痛くて、痛くて、泣きながら体を押さえたり、噛み付いたり、必死で足止めしか出来なかった。結局、倒したのはお母さんが呼びに行った村の人だったッ!」



悔しそうに拳を握りながら言った。その声は震えている。

自信を失って、心がぐちゃぐちゃになる。


私はカトル君の気持ちが痛いほどわかった。だって、少し前の私もそうだったから。

リンちゃんもユメちゃんも思うところがあるのか、少し俯いている。



「ユウヤさんにあんな事行っておいて、何もできなかった。僕は……弱い。こんな情けない姿、見せたくないっ」



カトル君は搾るように吐き出した。そしてぶわと涙が溢れ泣きはじめた。


……私はカトル君にかける言葉が見つからなかった。なんて言えばいい? 

そんなことないよって否定してあげる? でもそれはカトル君を余計に傷付けてしまうだろう。


少なくとも私には何と言うべきか分からなかった。

リンちゃんとユメちゃんも私と同じようで何も言えずに考え込んでいる。


私とリンちゃんとユメちゃんはイツキさんの言葉を待った。



「なるほど、お前が強い奴だって事はよくわかった」



イツキさんはベンチから立ち上がりながら笑った。

カトル君も、私たちもイツキさんの言葉に驚いていた。その言葉は一番言う出来ではないと思っていたから。



「……話ちゃんと聞いてた? 僕は! みんなが普通に倒せるような雑魚モンスターに手も足も出なかったんだ!! 僕はっ、僕なんかがレギス・チェラムに入れるわけないじゃないか!! こんな、弱い。僕がっ」



カトル君の悲痛の叫びが胸に響く。それはイツキさんと自分に対しての怒りと悔しさと悲しみが篭っていた。



「あのばかっ」


リンちゃんが少し怒りの籠もった声で動き出す。

ユメちゃんと私もリンちゃんに続いてカトル君の元に駆けつけようとしていた。



「カトル、強さってなんだと思う?」



イツキさんの言葉がそれを止めた。



「……そんなの強い魔物を倒せるようなすごい力を持ってるってことに決まってるじゃないか」


勇者みたいにと呟いた。

その言葉にリンちゃんとユメちゃんは私を見る。



「それは違う」



カトル君の言葉をイツキさんは否定した。


たった一言だったけど、とても、とても強い言葉だった。



「え……」



カトル君は戸惑いながらイツキさんの顔を見た。



「剣術とか、強い魔法が使えるとか、体術とか、そんなものは鍛錬を積んだらいくらでも身につくんだよ」



…………




「本当に強い奴って言うのは例え、相手が自分より強くても勇気を振り絞って大切なモノの為に命を懸けられる奴だ」



お前みたいになとイツキさんは言った。



「あ……う……だけど」



思いもしなかったイツキさんの言葉にカトル君は声を詰まらせた。色々な感情があの子の中で渦巻いている。



「お前が憧れている北条ユウヤはぼろぼろになりながら命懸けで家族を守った奴を馬鹿にするような男なのか?」


「そんなことない!!」



カトル君はイツキさんと同じように強く、そしてすぐ否定した。

その直後カトル君はハッとした。



「なら、それが答えじゃねぇか」

イツキさんは笑った。まるでカトル君がそういうのをわかっていたみたいに。



「……うん」



カトル君はコクリと頷く。その表情に先ほどまでの暗さは無くなっていた。



「僕……ユウヤさんに挨拶してくる」



前を向いたその瞳は強い光を宿していた。そして前に前に進み始めた。



「おう。言ってこい」


「話聞いてくれてありがとう! 僕、頑張るよ!」


「おーう。頑張りすぎるんじゃないぞー」



手を振りながら走って行ったカトル君を見た私達もみんなの場所に戻るため、歩き始める。



「相手が自分より強くても勇気を振り絞って大切なモノの為に命を懸けられるか〜イツキくんなかなかいいこと言うね〜」


「そうね。納得させられた」



なぜか二人とも私の顔を見る。



「ま、ただのばかじゃないことは認めるわ」



リンちゃんはぶっきらぼうに言言いながらもイツキさんの事を少しだけ認めたみたいだ。

なんでだろう。そのことがたまらなく嬉しかった。

大切なモノの為に命を懸けられる……かー



『俺が命に代えても守ってやる』



ふと、黒鬼との戦いの時、私に言ってくれた言葉を思い出した。


「リリスちゃん? 顔赤いけどどうしたの?」


「えっ!? そ、そそそうかな?」








「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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