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第65話 誰かに





水合戦が終わり、私たちは泊めてもらう宿屋に向かっていた。


「なぁーごめんてー機嫌なおてくれよー」


「うるせぇ! この裏切り者がぁー!!」



目の前には申し訳なさそうに謝るソウスケさんとそれに対しプンプンに怒っているイツキさんが歩いている。


「バカっぽい」



二人の見ながら隣に居るリンちゃんがため息をつく。



「あ、リリスちゃんとリンちゃんこっちこっち〜」


集合場所である広場からユメちゃんがおーいとこちらに手を振ってくる。

隣にはユメちゃんの助手である一ノ瀬キョウヘイさんがいた。

ユメちゃんはこの村の傷薬や回復薬を作っていたはず。なら、キョウヘイさんが薬草とかを採りに行っていたのかな?

そんな事を考えているとユメちゃん達と無事に合流出来た。



「みんなお疲れ様〜あ、君が例の双葉イツキくんか〜」



あはは〜と興味深そうにまじまじとイツキさんを見つめる。



「れ、例の?」


「なんでもないよ〜私はユメ・オルソラ。よろしくね〜いつも助手君には色々とお世話になってまーす」


「よろしく。えっと、助手君ってキョウヘイのことだよな?」



イツキさんの質問に対してユメちゃんはいえーすと親指を立てて返事をする。

確かキョウヘイさんが大怪我してたところをユメちゃんが助けてそれ以降、キョウヘイさんが色々とユメちゃんのお手伝いをしているうちに助手君って呼び始めたんだっけ?


「な、なんか知的な関係なんすね」


何故か敬語でイツキさんが言った。


「2人ともイツキとソウスケはちゃんと手伝っていたかな?」


「当たり前だろ! 僕たちだって手伝いくらいできるわ!」


「お前……俺の事なんだと思ってるんだよ」



何故か本人達ではなく私たちに聞いてきたキョウヘイさんに物凄く不満げに訴える。



「え、行くなと言われた所に行く、やるなと言われたらやるとんでもない問題児」



「「それはこいつだけだろ」」



あまりの不満に顔を歪めた二人はお互いに指さしあう。

息がぴったりすぎて少し笑ってしまった。


そこからイツキさんとソウスケさんはお前が、いやお前の方がと口論を始めてしまった。

なんだか子供の口喧嘩みたい……



リンちゃんは二人の口論を無視して誰かを探すように周りを見渡していた。



「……ルイは?」


「ルイちゃんまだ来てないね〜」


「おそらく、ユウヤと一緒だろうから迎えに行こうか」



キョウヘイさんの提案にみんな頷く。これは迎えに行く流れかな?

キョウヘイさんについて行くと子供達に囲まれたキョウヘイさんとルイちゃんの姿があった。



「うわ、人気者じゃねぇか」



以前魔物の大群からこの村を守った時から私達勇者パーティとレギス・チェラムの3人は村の子供だから慕われている。

まるで、ヒーローの様に。



「あ! リリスちゃん達だ!」



こちらに気付いたルイちゃんの一言で子供達もこちらに気が付き、一気に押し寄せてきた。

ルイちゃんとユウヤさんも笑いながらこちらに向かって歩き出す。


イツキさん以外、みんな子供達から話しかけられる。


子供達とお話ししている最中、、少し離れたところからこちらを見つめている男の子の姿が見えた。

体のあちこちに包帯を巻いて松葉杖をついている。


こちらに来たそうな顔をしているが、じっと見つめ、やがて落ち込む様に下を向き、帰って行った。



「…………ちょっと、トイレー」



イツキさんはそう言いながらそそくさと去って行った。まるで、去ってしまった男の子を追う様に。



「どうしたんだ? あいつ」


「一人だけ話しかけられなくて拗ねたんじゃないの?」



隣でソウスケさんとリンちゃんの会話を聞くがそうじゃない気がする。さっきのイツキさんの顔は少し真剣な顔をしていたから。


何しに行ったんだろう? 絶対にトイレじゃないよね? 


一度気になってしまったもう駄目だった。どうしてもイツキさんと男の子の事がチラついちゃう。

よし。



「ごめん、ちょっと私もお、おトイレにっ」



咄嗟に良い口実が思い浮かばず、イツキさんと同じ事を言ってこの場を離れる。


ちょっと恥ずかしくて顔が熱い、赤くなってないかな?

小走りであとを追う。



あ、いた。



「おい、そこのガキンチョ……お前はいいのか?」



どうやらイツキさんが去ってしまった男の子を引き止めたみたいだ。

男の子はピタッと足を止めてこちらを向いた。



「!!」



私は咄嗟に男の子にバレないように近くの建物に身を潜めた。


あれ? 別に隠れる必要なかったような? でも今出てきても変な感じになるよね? このまま身を潜めて二人の様子をー



「何してるの? リリス」


わひゃ!? 


びっくりして思わず飛び上がってしまった。驚きのあまり心臓の鼓動と呼吸とかが同時に止まってしまう。


だ、だれ?



「……リンちゃん?」



振り向くと驚いたような顔をしているリンちゃんがいた。


な、なんだ。リンちゃんか……ほっと胸を撫で下ろす。



「ちょっと、こっちまでびっくりしたじゃない……」


「ご、ごめん」


「私もいるよー」



そういいながらひょこっとユメちゃんが顔を出してきた。



「なになに? リリスちゃんなにしてるの〜?」


ユメちゃんはちら〜とイツキさん達の様子を見るとほほうーと言いながら私をみてニヤッとした。


「盗み聞きとはリリスちゃんも悪い子だねぇ〜」


「うっ……」



 確かいにこれは盗み聞きになるのかな? なにも言い返せないよ……



「ちょっと静かにしてよ。なに言ってるのか聞こえないじゃない」


「リンちゃん……」



リンちゃんも気になるんだね……


「……僕は、別にいい」



長い沈黙の後、小さく呟き男の子はまた俯いた。


「別にいいって顔してないけど? なんかあるのか?」


「…………」



イツキさんの言葉が図星だったのか、男の子は何も言わない。何も言わず俯いたままだ。



「あれは、言う気ないんじゃない?」



リンちゃんの言う通りだ。あの子はきっとなにも言わないだろう。本当は聞いて欲しくなかったのかもしれない。



「お前、誰かに話を聞いて欲しかったんじゃないのか? だから杖使ってまで来たんだろう?」


「!!」



男の子だけではなく、私たちもハッとした。そうだ。本当に言いたくないのなら家にずっといればいい。誰にも会わなければ済む話なんだ。


だけど、この子は私たちの所へ来た。

これは私の憶測だけど、あの時、もしかしたら私達の誰かに見つけて欲しかったのかもしれない。

あの子はあの子なりに勇気を出していたのかも。



「吐き出さなくちゃ前に進めない時もある」



前に進む……か。



「……ずっと立ってるのしんどいから」


男の子は近くにあるベンチを指さす。これは暗に話すと言うことだろう。

二人はベンチに座り、しばらく黙って空を見つめていた。








「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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