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第64話 愛嬌



「おーリリスちゃん久しぶりーイツキもお疲れー」



引き攣った顔をしているリンちゃん隣にはレギス・チェラムのソウスケさんが手をひらひら〜とさせている。


「あ、ソウスケと……」


イツキさんはだ、誰? と言いたげな表情をする。

リンちゃんはイツキさんだと察したのだろう。いつもより若干目つきが鋭くなっている。

なんとも言えない空気が生まれてしまった。


ど、どどうしよう? どうしよう? このままじゃあ私が勇者だってことがバレちゃう。

あわわわ……


混乱してリンちゃんとイツキさんを忙しなく交互に見つめているとソウスケさんがあ、なるほどと納得した表情をした。



「そういえば、イツキはまだ会った事なかったんだっけ? こいつはリン、ゆうしいてぇ!!」


「リン・オルテシア。リリスと冒険者をしている魔法使いよ」


ソウスケさんが悲鳴をあげている間にリンちゃんは自己紹介をした。


よく見るとそうすけさんの足を力強くリンちゃんが踏んでいる。私の慌てているの姿を見て気を遣ってくれたのだろう。


あ、ありがとうっリンちゃん!



「な、何すんだよ!」


「あ、ごめん。故意ではないのよほんと」


「いや、踏む直前ふん! とか言ってただろ! 100%故意だっただろ!」


プンスカ怒るソウスケさんとはいはいとなだめるリンちゃん。そこには邪険な空気はなく、逆に一種のじゃれあいのような和気藹々とした空気が流れていた。



「……あの二人仲がいいのか?」



イツキさんは二人の様子を見て耳元ボソっと聞いてくる。



「そうですね。リンちゃんはソウスケさんの魔法の弟子なんです。会うたびに喧嘩してますけど。仲はいいと思いますよ?」



喧嘩するほど仲がいいというものなんだろうか? 

言い合った後もそのまま邪険になる事もなくすぐ仲良さそうにしてるし。

リンちゃんも日頃色々理由をつけてソウスケさんに会いに行ってるし。嫌っていはいないと思う。いや、むしろ……



「リリス? 何か変なこと考えてない?」


「ひっ!? な、何も考えてないよ!?」


鋭いリンちゃんの指摘に体を跳ね上がってしまうがこれ以上の追求はされなかった。

よ、よかった。こういう時のリンちゃんって少し怖いんだよね。



「双葉イツキ……だっけ? リリスから話は聞いてるわ。あと隣にいるへっぽこ弟子にも」


リンちゃんは腕を組みながら親指で隣のソウスケさんを指した。



「おい、誰がへっぽこだよっ」


「うるさい。悔しかったらさっさと初級魔法以外を覚えなさい」


「…………」


あ、そこは黙っちゃうんですね。


「あ、えっと。よ、よろしく」


「ええ、あなたとは話したいと思ってたのよ……色々と」


オドオドしながら挨拶するイツキさんに対しリンちゃんは笑顔で言った。

な、なんだろう。色々とがすごく含みがあるように聞こえる。



「私達も手伝うわ」


「達って僕もっすか?」


「当たり前」



リンちゃんはげんなりしたソウスケさん子供達のもとへ行き、てきぱきと物干し竿にシーツをかけていった。

リンちゃんのおかげであっという間に全ての洗濯物を干し終えた。

すると男の子が時間があるから少し遊びたいと言い出した。


イツキさんとソウスケさんはノリノリでその話に乗り、水合戦をして遊んでいた。

水合戦というのは水の初級魔法であるウォータボールをぶつけ合う遊びだ。雪合戦の水球版って言ったらいいのかな?


私とリンちゃんは少し離れた場所で木の椅子に座りその光景を眺めていた。

イツキさんとそうすけさん対子供達という形で行われており、戦況は



「おい! イツキ! お前のウォータボールくそ雑魚じゃないばー!!」


「は? そんなこと言われてもしらねぇよ!! さっき覚えたんだからぶっ!!」


イツキさん達が圧倒的に押されていた。

子供達のウォータボールは弓矢のような速度で飛んでいくのに対しイツキさんのウォータボールはゆっくりと追尾するものだった。あまりにもゆっくりだから子供達も楽々避けることができる。


「赤い服を着てるにいちゃんはカモだ!! あっちを狙えー!!」


「ヒャッハ!!」


子供達の目標は一気にイツキさんになり6人で一斉にイツキさんに向けウォータボールを放った。



「あ、あ、あ、あ!! や、やめてくだぶぼっ!!」


イツキさんは子供達から放たれる何発ものウォーターボールになす術もなくひぃぃ!!と悲鳴をあげながら逃げ去った。



「追撃だー!!」



そんなイツキさんの姿を見て嬉しそうに子供達はウォータボールを打ちながら追いかけた。



「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!」



涙目になりながら子供達から逃げ回るイツキさんを見つめているとリンちゃんがジトーとした目で私を見ながらため息をついた。



「ねぇ……あいつのどこがいいの?」



へぁ!?


「え、え、いきなりどうしたの!?」


「……悪いことは言わないわ。あの男はやめておきなさい」


「リンちゃん!?」



どうしていきなりダメ男を連れてきた娘を説得する母親みたいなこと言うの!?

なんだろう。リンちゃんに色々誤解されてる? 



「え、だって好きなんでしょ?」


爆弾発言が飛んできた。


「別に好きじゃないよ!? いや、好きだけどっ! そういう意味の好きではなく、ライク的な意味で好きって意味で!?」



好き好き言いすぎて頭がこんがらがってきた。

混乱している頭でもこれだけは言いたいことがあった。



「……確かに人見知りで情けない所もあるしすごく子供っぽいところもあるけれど」



だけど、私は、私だけは知っている。だから私はリンちゃんに言う。彼女の顔を、目をしっかりと見て。



「自分じゃなくて他人のために懸命になれる。とても頼りになってカッコイイところもあるんだよ」



そう言った私を見てリンちゃんははっとした顔をして何かに気づいたように



「リリス……やっぱり貴方って……いえ、なんでもないわ」



何かを言いかけてやめてしまった。


? 何が言いたかったんだろう?



「あああああああ!! た、助けてぇリリスー!! ソウスケに裏切らればばばば!!」



いつの間にか裏切ったソウスケさんと子供達にコテンパンにされているイツキさんが必死の形相でこちらを見つめてきた。


「……やっぱり分からないわ。あの姿があまりにも情けなさすぎる……」


「え、あれも愛嬌だと思うけど……」



「あ、愛嬌!? お、落ち着いて!? 泣きながら子供に追いかけ回されているのよ!? そんな情けない姿を愛嬌で済ませるの!?」


「まぁ、そこはイツキさんだし別に……」



えぇ……と今までに見たことのないほど困惑したような顔をされてしまった。



「リリス〜!!」



「はーい! ごめんリンちゃん、私ちょっと行ってくるね」



イツキさんに呼ばれ、しょうがないなぁと言いながら椅子から立ち上がる。



「な、なんでそんな嬉しそうなの……」



呆然とするリンちゃんを背に何故か軽くなっている足取りでイツキさんも元に向かった。









「面白かった!」


「少し笑ってしまった」


「続きが気になる、読みたい!」


「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです!


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