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第63話 勇者のピンチ



私、勇者リリスは今朝ドワーフと鬼神族の皆さんにみんなを紹介するためにドワーフの村を訪れていた。


ドワーフの村から王都近くに転移する予定だったけれど、リンちゃんが勇者の村に寄ってみたらと言ってくれた。


以前、賢王によって破壊されてしまい最近完全に元に戻った勇者の村の事を気にしていた私にみんな気を使ってくれたのだろう。


私はリンちゃんの気遣いに甘えさせてもらって故郷帰りさせてもらいママや村の人達の様子を見に行った。


その後、リンちゃんのテレポートで砦まで転移しようかと話したが、勇者の村から砦までの距離を4人分転移

するのはリンちゃんの負担が多すぎるのでは?という結論に至った。


緊急事態を知らせてくれる伝書鳩は来ていないので砦の方が大丈夫であろうという事でネルトに向かい、馬車で王都まで帰る事にした。


その途中で日が暮れ始めたため、この村で一泊することになった。


無償で泊めていただくのは忍びないのでこうして村のお手伝いをしている。



「リリスおねーちゃん上手だね!」


「そ、そうかな? えへへ」


子供達に褒められ少し嬉しくなってしまった。

洗濯ものなどの家事は小さい時からママのお手伝いをしていたから少し自信がある。


こうやって踏み洗いをするのは久しぶりかもしれない。

チャプチャプと踏むたびに泡が出来、空高く待っていく。それが楽しくてついつい気分も高くなってしまう。


しょうがないよね。勇者パーティのみんなもいないし、少し子供っぽくても恥ずかしくないもん♪



「ちゃっぷ、ちゃっぷ、ちゃっぷ、ちゃっぷ♪」

 

そんなことを言いながら子供のようにテンポよく洗い物をふみふみしていたら



「リリス?」


声をかけられた。

あれ? この声……



「い、イツキさん?」


目の前には嬉しそうにこちらを見ている双葉イツキさんが立っていた。


え? な、なんでイツキさんが? というかさっきまでのはしゃいでいた姿を見られたんじゃ……


そう思った途端急に顔が熱くなった。

は、恥ずかしいっ。子供っぽいところ見られちゃった。



「お兄ちゃんも洗濯に来てくれたの?」


なんと言ったら分からず、戸惑っていたら一緒に洗濯していた女の子がイツキさんに話しかけた。


「お、おうとも」


「じゃあたらいをそこにあるまだ洗えてないやつをして!」


「が、がってん承知!」



ビシッと敬礼し、兵隊のようにわっせわっせと私の隣にある銀のたらいへ向かう。


「えっと……こ、これってどうすれば」


「まずは靴を脱いで、タライの中に入ってください」


「は、はいっ」


あわわとどうすればいいのか困っているイツキさんに呼びかけるといそいそと靴を脱ぎ始めた。


「そんなに急がなくても大丈夫ですよっ」


そんな光景を見て思わずくすくすと笑ってしまった。

イツキさんはよ、よし! と気合を入れながら素足でたらいの中の洗濯物を踏む。



「ひしゃ!? なんか変な感覚だなっ」


あははと楽しそうに足をバシャバシャさせる。

その姿は子供っぽいけどそんなイツキさんの姿を見てなんだか嬉しくなった。


「そうそう! お兄ちゃんいい感じだね!」


「そ、そうか? よーし本気出しちゃおうかな!」


イツキさんは女の子に乗せられてうおおおおおお!! と全力で足踏みする。


『すぐ調子に乗る』


ふと以前のリンちゃんの言葉を思い出した。


あはは……確かにそうかも。


「って冷たい!!」


イツキさんの足踏みが強すぎてこちらにも泡水が飛んできた。


「にいちゃんやりすぎだよ!! こっちまで飛んできてるじゃん!」


「あ、あ、すいません……」


イツキさんは一回り小さい男の子に怒られ、ペコペコと頭を下げていた。

他の子供達はあははと笑い、怒っている男の子もどこか楽しげだ。

子供達とはさっき会ったばかりなのに物凄く馴染んでる。



「みんな、洗うのはこれくらいにして、洗濯物を干しましょうか」



私がそう提案すると子供達とイツキさんははーいと手をあげて返事した。


「イツキさんはどうしてここに?」


シーツを干している中隣にいるイツキさんに聞いてみた。



「ああ、国王に呼び出されて、王都に行ったんだよ。その帰りでここで泊まらせてもらう事になったんだ。なんか無償で泊まらせてくれるらしいんだけどそれじゃ申し訳ないということで家事の手伝いを……」



イツキさんはそう言いながらばさっ!! とシーツを広げ、物干し竿にかける。

私達と同じ理由でびっくりした。ま、まさかこの村で鉢合わせるなんて。

確か、イツキさんのギルドって5大ギルドの1つだったけ? そうなれば王都に訪れる機会もたくさんあるよねと一人で納得していると



「リリスこそ、どうしてこんなところに?」


「えっ」



思わず言葉が詰まった。


この村に居るのは私だけではなく、剣聖のルイちゃん、賢者のリンちゃん、聖女のユメちゃんの勇者パーティのみんなも居る。


私が勇者だってことはイツキさんには話していない。


いや、冷静に考えて見たらパーティのみんなもこの村にいるんだから、みんなが協力してくれない限りイツキさんに私の正体がバレちゃうんじゃ……



ど、どうしようと焦燥感が高まる。



「え、えっと。私たちもその、王都に用事があって、でも日が暮れてきたので、この村で休ませてもらうことに」



突っ込まれないかな? 大丈夫かな?



「ああ、俺達と同じようなものか」


……よかった! なんとかなった!!



「あれ? 私達ってことはリリスだけじゃないのか?」


ぎゃー!! 駄目だった!!



「あーえっと。その」


「リリス、洗濯ご苦労様、手伝いにきっ!?」



目の前にはお手伝いがひと段落してこちらに来てくれたのであろうリンちゃんが明らかに表情を固まらせこちらを見つめていた。






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