第6話 決闘をすることになりました!
踊り場にはソウスケとキョウヘイが待っていた。
前を見ると酒場にいる50人ほどのギルドメンバーは俺たちを見上げている。
感心、不審、不快、疑心、その視線はさまざまなものがあった。
俺はそんな目線に耐えきれず目を逸らす。
恐怖で手が震えた。
勘弁してくれ、さっさと部屋に帰りたい。本気でそう思った。
すると、キョウヘイが前に出る。
「こんな時間に集まってくれてありがとう。皆に知らせたい事があるんだ」
キョウヘイの言葉にギルド内が少しざわめいた。
そんな様子をただ黙って見つめていると今度はユウヤが前に一歩踏み出す。
「今まで我らギルドであるレギス・チェラムにはギルドマスターが不在だった。だが本日帰還した!! ここにいるこの男、双葉イツキが我らがギルドマスターだ!!」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
ギルド内が一気に騒ぎ始めた。
いや、いきなり集められて知らん腑抜けた男が自分たちのボスって言われたらそりゃそうなるわ。
「どういう意味だよユウヤ!」
わけがわからずユウヤを問いつめる。
こんなの動揺せずにいられるか!!
「そのままの意味だ。このギルドを立ち上げる時マスターはお前の名を登録しておいた。」
表情一つ変えず返された。
いや、なに当たり前のように言ってんだ!?
「納得いかねぇ」
金髪の逆立つ短髪の厳つい大男が不満を顔に出しながら俺達の前に出て来た。
約200センチほどの大きな背丈に筋骨隆々の体つきをした威風堂々な男だった。
すまん、ビビりすぎて膝が笑っちまってるよ。
「ラクスか。理由を聞いてもいいか ?」
ユウヤは臆することなくラクスという男に問いかけた。
「俺がこのギルドにいる理由はあんたらの圧倒的な強さに惹かれたからだ! こんな遊び人の雑魚の下につくのはごめんだね」
(雑魚って……あいつ失礼過ぎんか?)
(でも、まぁ事実だよね。遊び人?)
(………)
「ここにいる奴も同じことを思っているはずだ!」
「そ、そうだ !」
ラクス一言から火がついたのか俺がマスターだという事について非難や罵倒がとんできた。
「こんな奴マスターと認めないぞ !」
「雑魚野郎が!」
「遊び人のくせに!」
「穀潰しが!」
「働け! ニート野郎!」
「静かにしろ」
ユウヤの圧を込めた一言でギルドは静まりかえる。
「お前達はマスターの実力を知らない、なら遊び人だからと言って弱いと判断するのは間違っていると思わないか?」
ラクス含め非難していた者が黙る。
「なら、証明すればいいんだろ?」
「ソウスケさん……」
「ラクス、お前がさ、イツキと戦いなよ。そうすればわかるよこいつの強さが」
ソウスケの瞳は一切揺らぐ事なくラクスを捉えていた。
「……ああ、分かった。こいつが俺に勝ったらこいつをマスターとして従うよ。しかし、負けたらこのギルドを出て行って貰う!」
えぇ……なんか決闘みたいなのを申し込まれたんだが。
こんなのボコられて終わるに決まってるじゃん。
俺だけがこのギルドから出ていけば解決するんだし、大人しく出て行った方がいいな。
そう思っているとユウヤが
「もしイツキが負けたら、俺達3人は責任を持ってこのギルドを去ろう。そのあとはラクス、お前にギルドを預ける」
は? はぁ!?
「………ユウヤさん本気で言ってるんだな?」
流石のユウヤの言葉にラクスも動揺しているのか声が若干震えていた。
「ああ、この男にはそれほどの価値がある」
「副ギルドマスターと言えど言った事にはちゃんと責任を取って貰うぜ。これはそういう話だ」
「分かっている」
ユウヤの発した言葉は後悔なんて微塵もなくて、揺るぎない意志が籠っていた。
「はいはい、集会終わり!解散!」
ソウスケの一言でギルドメンバーは大人しく解散し、激動の集会は幕を閉じた。
決闘の日は明日の昼1時に決まった。
解散した後、俺はユウヤ、ソウスケ、キョウヘイの3人を部屋に呼び出した。
「お前ら自分達が何をしたか分かってるのか!?」
思わず声が荒くなる。
「何怒ってんだよーカルシウム不足か ?」
ソウスケがケラケラ笑いながら言った。
ユウヤもキョウヘイも事の重大さを分かっていない。
「いいか!? 何をとち狂ったか知らないがお前らが長い間苦労して築き上げてきたこのギルドを手放すことになるんだぞ!」
しかも、何もしてこなかった俺のせいで。
「確かにラクス・クルスニクはギルド屈指の実力者だ。しかし、お前がラクスに勝てば問題ない」
表情一つ変えずにユウヤは言った。
「っ!! だからさぁ!」
あんな大男に勝てる訳ないだろうが!
そう叫びたかったが
「自分の事には無頓着で怠けてばかりだけど、誰かの為になら懸命になり、本来持っている力を発揮する。君はそう言う奴だ」
微笑みながら言うキョウヘイの言葉に止められた。
「………別にそんな事ないし。」
そっぽを向きながら言った。
そもそも俺たちのブレーキ役であるお前が止めなきゃならないだろうが。
「別にさ、負ける事があっても僕らにとってギルドは居場所の一つなんだし、また作ればいい。それに、僕ら4人揃えば何でも出来るし、何処へだっていけるさ」
へへと笑うソウスケの言葉に言葉を失う。
こいつは……いつも間抜けな癖にこういう時になると途端にカッコいい事を平然と言いやがる。
「俺達のこれまで築き上げてきた名誉、栄光、形あるもの、全てお前に託す」
「……後悔しても知らないぞ」
「お前はそれに値する男だ」
分からない。俺には分からない。
「なんでテメーらがそこまで言える」
テメーらが全てを託そうとしている男はどうしようもなく情けなくって、呆れるほどちっぽけで、笑えるくらい弱い奴なのに。
3人は驚いた様子で顔を見合わせて、笑った。
「だって友達だろ?」
ソウスケの放った言葉はシンプルなものだった。
頑張れよーと手を振りながらソウスケは出て行った。
「俺は君の強さを知っている。それ以上の理由はいらないだろ?」
キョウヘイもそう言い残し、ソウスケの後を追った。
「たとえ、お前が弱くても、情けなくても、小っぽけな人間でも俺達は双葉イツキを信じている」
ユウヤは微笑みながら自身の拳をトンと俺の胸に当て、部屋から出て行った。
はぁ、とため息をつきながら壁にもたれて座り込む。
顔は俯きぼーと床を見ながら3人の言葉を思い出す
「もうテメー達が知っている双葉イツキは居ないんだよ」
一人いない部屋で呟いた。
誰かに聞いて欲しかったわけじゃない。ただ、言葉にして自分の思いを吐き出しかっただけなんだ。
俺はあいつらに託されてしまった。だから……覚悟を決めなければ。
顔を上げて、立ち上がり、天井をみがながら
「バエルー」
バエルの名を呼んだ。
( ……んー?)
「ちょっと付き合ってくれないか?」
バエルは俺の前に姿を表して
「しょうがないなぁ〜。今回だけだよ?」
だらしない顔で言った。
俺とバエルはベッドの上で互いに正面に向かってあぐらをかきながら話し合う。
「で、まずは何をするのさ」
「まずは俺自身のステータス確認だな。自分を知る事、それが大事だ」
敵を知る前にまずは自分のことを知らないと話にならないからな。
「ふぅ〜ん」
「ステータスを開示するぞ。ステータス! オープン!」
「え、それ言う意味あるの?」
「ない!! ただ、一回は言ってみたかっただけさ。」
しょうがないね、男の子なんだもの。
俺はベッドに置いたギルドカードに手を当てて自分のステータスを開示した。
1〜10で構築され、筋力、耐久、俊敏、知性、技量、魔力と5の項目が数値で表示された。
ふむふむ、どうやら1〜4までは不得意分野、5が平均値、6〜8までが得意分野、9が才能が待つものが辿り着ける境地、10は至高の極地らしい。それ以上は規格外だそうだ。
どれどれ〜? 我がステータスは如何様なものなのか。
双葉イツキ 遊び人
筋力1 耐久1 俊敏2 知性3 技量2 魔力3
固有スキル
逃げる
本気出す
お互いに沈黙する。
「………………ま、まぁ遊び人らしくていいんじゃない?」
バエルのフォローがとても辛かった。
なんだこのクソみたいなステータスは……
ていうかクソスキルばかりじゃねぇか!?
なんだ? 逃げると本気出すって! 舐めてんのか?
普通はさ、遊び人なんだからギャンブルキャストとか、運が絡んだ固有スキルとかあるんじゃないのか!? これじゃだたの無職じゃないかぁぁぁぁ!!
き、切り替えよう……これ以上自身も弱さを嘆いていたって意味はない。
大丈夫、俺は気にしてない、気にしてない!
「……相手のステータスを見よう。相手の事を知る事が大切だ」
「えっ、あ、はい」
バエルは気を遣ってかこれ以上何も言ってこなかった。
通常ギルドメンバーは他のメンバーのステータスは見ることはできないがギルドマスターだけは特権で見ることができる。ギルドマスターだけが見る事が出来る。使えるものは使わなきゃね。
ラクス・クルスニク
筋力7 耐久7 俊敏8 知性4 技量6 魔力7
「やばいじゃん……」
終わった……そう思ったが、俺はある事を思い出した
「バエルが戦ってくれればいいじゃん!」
そうだ、そうだよ! 俺には最強の悪魔のバエルさんがいるじゃないか!!
ふ、勝ったなこれは
「いや、無理だよ」
「はい?」
「マスターがへっぽこ過ぎて私の基礎能力が落ちてるんだよねー身体能力も子供並みだし。悪魔としての能力も使えなくはないけどマスター干からびちゃうよ?このステータスでいうなら最低でも魔力9は必要だねー」
さて、荷造りでも始めるか……
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