第59話 第一王女とのお茶会
国王とエレナ、そしてユウヤ達が竜王について何やら話していたが全く頭に入ってこなかった。
竜王だけではなく、騎士王という新たな魔王軍幹部にも襲われた話もした。
なんかみんなの反応がすごかったような気がするが、あまり覚えていない。
気が付いたら、話合いは終わっていた。
「今日は有益な情報を得れた。礼を言おう。ここでゆっくりして行ってくれ。」
何かあったら城の者にいうようにとイリエ王は言った。
「ありがとうございます。では失礼します」
イリエ王のご厚意に対しユウヤが俺たちを代表して頭を下げ礼を言った。
俺たちも頭を下げ、玉座の間を後にする。
帰りたい、早くギルドに帰りたい……ひとまず何か言われる前にこの城だけでもさっさとでてしまいたい。
よし、出口直行だな。
「すいません。イツキさんは私と一緒に来てもらえませんか?」
城から出ようとした瞬間、よりにもよって第一王女エレナ・フォン・キャメロット様に呼び止められてしまった。
「……え? ぼ、僕ですか?」
「はい。ついて来てください。ユウヤさん、ソウスケさん、キョウヘイさんすいません。あなた方のマスターを少しお借りしますね」
どうしよう。体の震えが止まらないんですけど。
み、みんな、助けてっ
助けを求めるように3人の顔を見る。
「あ、大丈夫ですよ。煮るなり焼くなりしてやってください」
キョウヘイが清々しい笑顔で言いやがった。
おい!! キョウヘイ!! テメェあとで覚えてやがれ!!
「では、行きましょうか」
エレナに手を握られ、強制的に連れていかれる。
あかん、これはもう逃げられないやつや……ああオワタ。
「イツキ……生きて帰ってこいよ。」
ソウスケはそう言いながら敬礼をした。
まるで死地に向かう兵士を見送るかのように。
ソウスケに続いてキョウヘイ、ユウヤも敬礼をする。
こ、こいつらっ。
3人の姿はどんどんと小さくなっていった。
「…………」
手は握られたまま、無言で歩き続ける。
なんだろう。かわいい女の子に手を握られて連れて行かれているのに冷や汗が止まらない。
ドキドキはしているが、違う意味でドキドキしてる。
(あーこれはあれだね。よくて宮刑、悪くて打ち首だね……)
(えっ!? よくて去勢!? もうだめじゃん!! おしまいじゃん!)
(第一王女に対する数々の無礼を見たら当然なんだよなぁ)
(…………)
(タメ語、偽物扱い。偉そうに頭を撫でたり叩く。3アウトってところか)
(おい!! それって実質もう終わりじゃねぇか)
(え、逆にセーフだと思ったの?)
(……いえ)
(ですよね?)
「これで私が第一王女って信じてくれました?」
エレナはふふんと胸を張って言った。
これはもう確実に信じただろうと言わんばかりのドヤ顔だ。
「あ、あ、そう、そうですねっエレナ様……えへへ」
手をすりすりしながら低姿勢でごまをすりしていく。
なんたって第一王女だからね。媚びていかないとこの先、生き残れないから……
「……信じて頂いたけたならいいんですけど」
そう言っているエレナはどこかしら不服そうな様子だ。
し、しまった。媚びが足りなかったのか!?
「あの、エレナ様……いや、第一王女エレナ・フォンキャメロット様、ぼ、僕達はど、どこに向かっているのでしょうか?」
ふひひとこれ以上エレナ様の機嫌を損なわせないように慎重に丁寧に聞く。
「……私の部屋です」
へ、部屋!? な、なな何をされるんだ!?
(あーこれは拷問コースですわ)
(ご、拷問コース……三角木馬、鞭、蝋燭……)
(いや、マスターそれただのSMプレイ……)
ひぃぃぃぃぃぃ!!
や、やばい……緊張しすぎては、吐きそうだ。
恐怖で体を震わせているとピタとエレナは立ち止まった。
くいっと手を引っ張られる。
「あ、あのエレナ様? ど、どうしましたかね?」
俺、何かやっちゃいました?
「……その話し方なんか嫌です。なんだが距離を置かれているみたいで……だからいつも通りエレナでいいです」
その顔は悲しそうで寂しそうに見えた。
「……わ、分かったから、そんな泣きそうな顔しないでくれよ……」
どう返せばいいか思い浮かばず、オロオロしているとエレナははっとした表情で
「べ、別にそんな顔しませんっ」
そっぽを向いた。
なんだ? ツンデレか? こいつ。
「えーしてるよ〜?捨てられた子犬みたいな顔してる〜」
「もうっ! 頭をくしゃくしゃしないで下さい! 髪が乱れちゃいますっ」
「うるせぇ!! お前はレギス・チェラムの一員なんだから俺の方が偉いんだ!! 俺はお前のマスターだぞ!!」
「な、なんなんですか!? もう!! こんなことなら言わなきゃよかったっ」
言葉では嫌がってはいるが、エレナの表情が明るく、ほっとしたような安心したような顔をしていた。
「ここです」
エレナは立ち止まり、扉に手をかける。
「大丈夫? 見られたら困るものとか置いてない? 良かったら掃除する時間あげようか?」
「だ、大丈夫ですっ」
扉を開けて中へ入るといかにもお姫様っぽい部屋が広がっていた。
うわーなんか。いい匂いがする。女の子な部屋なんて初めて入るんだけど……
「適当にかけてください」
「えっ、あ、はい!」
ロボットみたいにカチコチの動きでちょこんと椅子に座る。
自分でいうのもなんだけど、借りてきた猫みたいだ。
「どうしましたか? そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ? そこのお菓子食べていいですから楽にして下さい」
エレナは慌てふためく俺を見てクスっと笑う。
「だ、だって。女の子の部屋に入ったの初めてだから、緊張しちゃって……」
周りをキョロキョロと見回しながら呟く。
(なんか今のマスター都会に来た田舎っ子みたいだね)
(う、たしかに。否定は出来ないな……)
あまり人の部屋を見るものではないかと丸テーブルに置かれているお菓子に目をやる。
テーブルの上にはプチケーキやマカロン、クッキーと言った洋菓子が並んでいた。
ふむ、ここはクッキーをいただくか。少し焦げていて、形も不恰好だが、手作り感があっていい。
あ、これ美味しい……一度食べたら止まらん。なんだ、見た目の割にいけるじゃん。
「私だって、部屋に呼んだのはあなたが初めてですよ。私は緊張いうよりわくわくしてますけど……よし、出来た」
出来たって何が? 疑問に思っているとティーセットを持ったエレナがこちらに来た。
「私、次の予定までまだ時間があるんです。だからアフターヌーティー付き合って下さい」
……あふたーぬーてぃーってなんだ?
「面白かった!」
「少し笑ってしまった」
「続きが気になる、読みたい!」
「クソニートのイツキは今後どうなるのっ……!」
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